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特徴

2016
Issue 61 (Autumn 2016)
インタビュー:トラビス・ライス 無鉄砲なオプティミストによる新次元の映画
By Gardner Robinson

「一度やるってトラビスが心に決めたら、止めることはだれにもできないね」 ̶『The Fourth Phase』で、彼の仲間の言葉。 トラビス・ライスの新作映画のプレミアが満席になった東京の劇場でおこなわれた。 この映画が描こうとしたテーマは太平洋の水循環だ。前作『The Art of Flight』から大きな飛躍を遂げた トラビス・ライスに今の心境や彼の撮影クルー、Brain Farmについてインタビューを試みた。

ガードナー・ロビンソン(以下G): 君のお父さんはジャクソン・ホールのスキーパトロールだったんだよね。スノー ボードとの出会いはいつ?

トラビス・ライス(以下 T ):スキーを母親が教えてくれたの が最初です。父親はそこのスキーパトロールで働いていました。スノーボーディングをはじめたのは12か13歳かな。今 もスキーヤーとしての意識は常に持ちつづけていますよ。つまりスキーヤーとして山から学びましたから。ぼくにとってはスキーもスノーボードも関係はないんですが、正直な気持ちとしてはスノーボーディングなんですね。このターンの美学に強く魅力を感じています。スキーよりもスノーボード を選ぶ根本的な原因はそこにあるといっていいです。このターンの繊細な美しさは、つまりアートなんです。つまりヒールサイドからトゥサイドへのトランジション(切り替え)こそがスノーボードの核心で、それがすばらしいんです。スキーでもターンに磨きをかけることは面白いけど、スノーボードに比べると優しいんです。

G:2003年に東京ドームの舞台で、あなたが観衆に向かっ てスプレーをアピールしていたことを思い出します。“こい つ楽しんでいるな”って思いました。

T:そうなんですか!あの東京ドーム・ビッグエアー・コンテス トは日本への最初の旅でした。たしかダブルバックかなに かで勝ったんですよね。あのイベントは楽しかった。まだ未 成年で19か20歳だったと思います。あの年令で日本を体 験するなんて驚きばかりだった。それから日本の山も滑っ て感激したんです。それから10年くらい北海道に何度も行きました。ほとんどのリゾートに行ったし、ロードサイドのバッ クカントリーもたくさんやった。まだたくさん開拓の余地は残 されているのを知っているけど、とにかく楽しかったな。もう 20回か、それくらい日本には来ています。

G:新作『The Fourth Phase』では日本が重要な舞台になっているけど、それはなぜ?

T:日本は当初からシュートしたいと思っていたんです。数 年前に作った『The Community Project』では日本のパートを設けたんです。当時しては、それまでに日本で作られた映像のなかでもより良いものと感じていました。でも今回、ふたたび日本にやってきてぼくたちは時間と努力を惜 かたよ しまずに、ここの文化や自然、そしてライディングを偏ることなく表現しようと思ったんです。あなたはもう長く日本に住んでいるから、その意味が理解できると思う。だから、た だ日本にやってきて、なんでもかんでも自分たちの都合に 合わせようとするのでなく、時間と努力を惜しまないで記録していく、というやり方で仕事を進めました。じつはもっと撮影したいという気持ちもあったんだけど、でも少しはなに かをテーブルに残しておくことも大切だと感じました。この映画は水について作りました。水と北アメリカの気 候にもたらす大気の循環がテーマなんです。でも面白いな と思ったのは、太平洋をはさんで反対側にある日本が大循 環の重要な役割を担っていたことに気づいたことなんです。ぼくたちは北太平洋旋回(北太平洋の海流の総称)を追 跡してみたいと思いました。この旋回の大きな海流のひとつ が黒潮です。この海流は暖かいエネルギーを持っていて、太平洋を西に向かって流れています。そして海底に当たって北に向きを変えて日本を通過し、北太平洋へと向かうんで すね。ぼくたちはこの大自然の海流サイクルを追跡しようと思い、その最初の行き先が日本だったというわけなんです。

G:製作クルーの人選は重要だったのではないですか?

T:そうですね。けっきょくは協調性を持ち、ミッションに楽 観 的な空 気を持ち込める人ということになりました。この 仕事はつねに準備がつきまとうし、期待していたことが突 然すべて変わってしまうこともしばしばだから、さまざまなコンデション、つまり不良な状況下でも対応できて、そしてやり遂げられる人が必要だったんです。

G:今回は北海道ではなく日本アルプスで多くの時間を費やしたけれど、その理わ由けは?

T:ぼくは山の調査を念密におこなったんです。今はコンピューターで容易に地勢などを知ることができますから。それで長野県に大きくてアグレッシブな山があるってことにすぐに気づきました。だから今回の撮影では長野に滞在することが多くなったんです。その山々での経験は新たな基準となりましたね。

ぼくたちは白馬山麓で多くの時間を費やしました。アクセスにも便利なリゾートもたくさんあったし、冒険もいろいろやりました。運転してエキゾチックなロードサイドのハイキングもしたし、垂直登坂でいくつかの峰を登頂するというすごいこ ともやりました。それでアラスカの経験を思い出しましたね。日本アルプスの山々のアグレッシブさには驚嘆しました。 ピークを見上げるとびっくりするくらいライダブルな感じで、まるでアラスカでした。でも大事故が起こる確率は70%くらいはあ りそうで、可能性がありそうなのはほんのわずかだったんです。

テラン・トラップ(雪崩の引き金)は無数にあって、いくつかは、ぼくがかつて滑ってきた危険なテラン・トラップのあ あんぶ る山のようでした。そんな巨大な山の鞍部がどう影響するか、危険なのは承知でも挑戦しなければならないですからね。雪の量は半端じゃないし、天気は目まぐるしく変化する。事故は覚悟のうえでやり遂げなければならないんです。

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