特徴
アイスクライマーは年齢、レベルを問わず、南長野の八つの尾根のスィートスポットに夢中。
神話によると、富士山はかつて8,000メートルの山と背比べをして負け、腹いせにこの山を蹴飛ばした。そしてできた八つの小さな山が、八ヶ岳連峰なのだそうだ。
地質学者は巨大な火山が噴火後、八つの山になったと違う説を唱えるが、どちらも似たような話だ。今日もこの巨大な山の名残の尾根は、山梨県境から長野県にまたがり横たわっている。
八ヶ岳最高峰は赤岳(2,899メートル)で、その他の山も2,500メートルを下らない。中央道の南側から向かうと元の山の形が想像できる。赤岳なら、ごつごつした赤褐色の岩肌と頂上の尾根以外をおおい尽くす茂った森を見ることができ、その光景から漂う異様な雰囲気を感じることもできる。
しかしひとたび冬になると、山は氷で覆われてしまうためまったく違った景色に変わる。
本州にある“アイスランド”
スキーヤーやスノーボーダーが北長野で雪を楽しんでいる頃、八ヶ岳連峰の南側は快晴の日が多く、およそ70%が晴れだという。
雪をもたらす低気圧が通ると県の南側は気温がいつも低く、快晴で強風が吹いている。スキーには適さない天候なのだが、山の小川や滝を凍らせ、アイスクライマーに氷の遊び場を作ってくれる。
八ヶ岳のアイスクライミングシーズン(天然のアイス)は11月の終わり頃から始まり、4月中旬までと長い。例年クリスマス時期に初雪が降るのだが、この頃が初心者にとって一番いいアイスクライミングシーズンといえるだろう。
初心者はローアングルの凍った小川でウォームアップして、もっとチャレンジングな滝へと移動するといい。
もし究極のクライミングがしたいなら最適な場所がある。赤岳鉱泉山小屋の前に“アイスキャンディー”と呼ばれる人口的に作られたアイスウォールがあるのだ。横岳のすぐ下、標高2,215メートルに位置し、背景に大同心と小同心岩があり、冬のロッククライマーにも人気のスポットとなっている。
また小屋はジョウゴ沢, 裏同心ルンゼ方面へのハイク、そして赤岳登山の出発点となっている。
美濃戸口までバスでいくか、車を駐車すれば、2時間30分、またはもっと先の赤岳山荘から出発すれば1時間30分ほどで到着する。
週末はトレイルを慣らす必要はない、だがもし雪があまりなければトレイルは凍っているのでアイゼンをつけたほうがいい。最初は車などの進入できない泥道から入り、曲がりくねったトレイルを進んでいくと、上流から湧き出る温泉のため赤い温水の流れる小川にでる。
トレイルは何度か川を交差し、橋があるところもある。そして岩山、凍ったルンゼがある渓谷へたどり着く。ここからさらに行く先を注意深く見ると、低高差40メートルの緑色をした大同心大滝がそそりたっている。
そうして森を抜けると、人口アイスウォールが現れるのだ。
“アイスキャンディー”を試食
ここでは日本人ガイドがよくお客を連れて、クライミングのレッスンをしている光景をみる。入門者向けのシンプルなスロープだけでなく、オーバーハングなどの上級者向けのクライムもロープがあるので安全だ。凍え死にそうになりながらビレイをする必要などない。小屋でティーブレイクしたっていいのだ。
アイスクライムは若者向けのスポーツだと思うかもしれないが、実際は幅の広い年齢層の人が楽しんでいる。ダブルアックス、アイゼンの他に最新のギアを身につけた50〜60歳代の日本人女性だっている。
このアイスキャンディーは登録料500円で1日利用できるが、ほとんどのガイドやそのお客は泊りがけで訪れている。そのため山小屋の近くで可能なキャンプサイトは混雑する場合があり、そのときは小屋を予約した人が優先される。小屋は居心地いいし、食事もおいしく、日本人クライマーと友達になったりもできるのも魅力になっている。
もうひとつの小屋のボーナスは、各メーカーの最新クライミングギアがそろっているために、それらを試用できること、クライムの注意点、アイスールート、雪崩情報、氷の状態、天候などアイスクライミングに役立つ情報を得られることにある。毎年恒例のアジアン・アイスクライミング・カップもここで行われ、最近はあまり見ないオーバーハングのアクロバットトリックも見ることができる。
ウィークエンド・ウォーリアーズ
もしこの冬、比較的楽なマウンテンアドベンチャーをしたいなら、アイスクライミングと八ヶ岳の最高峰の赤岳登頂を組み合わせてみるのはどうだろう。東京からなら1泊2日の予定で実行が可能だ。
都心からは簡単にアクセスでき、一年中やっている山小屋多くある八ヶ岳連峰だが、甘くみてはいけない。冬には過酷な冷たい強風が吹く。計画をしっかり立て、忘れ物のないようにしよう。
それでも毎年凍傷にかかった人がいるという報告がある。もし時間と経験がないなら、ガイドを雇うことを考えてみるのがいい。ガイドがいれば準備すべてをしてくれるので、凍った水の柱を楽しむことだけに集中できるし、ハンドホールドやフットホールドがいつでも準備されている。
ESSENTIALS
赤岳鉱泉山小屋
1泊2食、1人9千円で宿泊できる。週末や祭日は予約をしたほうがいい。一年を通してあいているが、冬は温かい風呂がない。キャンプは1泊500円でできる。小屋の外に暖房されたトイレがある。ラーメンやうどんといった簡単な食事ができるし、アルコールやソフトドリンクを買うこともできる。Tel. 090-4824-9986
アクセス
電車: 東京から週末を利用して訪れる場合、始発のスーパーあずさに新宿駅から乗り、茅野まで行くことをおすすめする。茅野駅から美濃戸口までバスが定期的に出ている。現地を訪れる際には帰りのバスの時間を忘れずに調べておこう。最終バスに乗り遅れたら残された手段はタクシーを探すのみ。バス停の周辺でも見当たらないときは、近くの小屋で頼むとタクシーを呼んでくれる。
車:中央道で小淵沢でおり、美濃戸口の看板を見て進む。
参考図書
もし、アイスクライミングについて読みたいなら、廣川健太郎著『氷の世界へチャレンジ!アイスクライミング』をすすめる。本にはルートの地形、等級、シーズン別のデータなど日本語が読めなくても役に立つ情報がいっぱい掲載されている。登山ショップなどで購入できる。
“Challenge Ice Climbing” by Kentaro HIrakawa
氷の世界へチャレンジ!アイスクライミング... 廣川健太郎
(ISBN4-8083-0818-5 C0075) Price: ¥2,000.




