特徴

2009
Issue 26
My Myoko
By William Ross

‘It’s the snow, stupid” Just ask the Baron
「雪が違うんだ、わかんないやつだな」男爵はわかっている。

「どうして妙高なんかに暮らしているの」と聞かれるとき(たいがい地元のスキーフリーク)、僕はいつもある男爵のことを思い浮かべる。

ホ テルオークラの創立者の息子である、大倉喜八郎はその当時、他の裕福な家庭の子息がそうであったようにヨーロッパに留学した。すこしやんちゃだった彼は、 勉強よりオックスフォードのボートクルーの名舵取りや、イギリスで行われた初のオートレースで2位になるなどで名を上げた。

発覚したレースの記事が気に入らなかった彼の父親は、すぐに喜八郎に帰国を命じた。そうして帰国後、男爵となった彼はヨーロッパで知ったアルペンリゾート を国内につくろうと決意した。

その結果が、今日も妙高の東側に位置している世界で最も古いスキーリゾートのひとつである赤倉観光ホテルだ。いまでもその赤い屋根の建物は、1937年に 男爵が建設したころのように、スロープでひときわ眩しい光彩を放っている。

その当時ならどこでも選ぶことができたのに、彼はわざわざ妙高 高原を選んだ。妙高が高いカルデラ山にかこまれた溶岩の山であるから、男爵はこの地を選んだのだ。毎年13メートルはあるだろうという積雪量に注目したの も自然のことだろう。

僕は年間積雪量が1メートルちょっとで、その雪が春まで残るミネソタ州からやってきた。 妙高はミネソタより温暖であるのに、10センチ単位で雪が降り、あっという間に3メートルの高さまで積もるから驚きだ。

大きな雪のかたまりが、一日中休むことなく降り続け、屋根や僕の住む家の近くの観音さまの頭や首を白く染める。大雪のときは雷のような地 響が鳴り、初めて聞いたときはびっくりしたが、今では感動する自然現象となっている。

シ-ズンが深まれば深まるほどにスキー客は増える。僕の家はゴンドラの前で人や車の多い通りにあるが、降り続く 雪でできた分厚い雪の壁のおかげで、朝のスキーバスの騒音や北風の音はさえぎられ、静けさは保たれている。雪との付き合いは想像するほど悪くない。この周 辺の住宅は傾斜のきついメタル製の屋根でできており、雪が積もらないようになっている。それに、26馬力、タービン、ディーゼル除雪スノースロワーがジョ イスティックのゲーム感覚で雪を吹き飛ばしてくれる。

というわけで、雪の処理は大丈夫。そして僕がここに住むもう一つの理由は赤倉観光ホ テルの裏手にある。妙高のバックカントリーだ。

山もたくさん、パウダーもたくさん、そして木もたくさんと、なんでも妙高は豊富なのだ。妙 高でバックカントリーへ行くということは、岳樺やブナの森の中を滑走するということだ(妙高山の北に隠れたようにある2,462メートルの火打ち山は、ほ とんど木がないので春スキーに人気がある)。

もともとこの地に来たのは、十数年東京で暮らした疲れから解放されるため。現在は妙高バック カントリースキースクールでテレマークスキーのガイドをしている。そして毎日を満足してすごしている。スキーは北海道が一番というけれど、この辺のガイド 達は、あんな軽い雪は話にならない。本格的スキーヤーなら妙高の雪のような手ごたえのあるパウダーを好む、と反撃する。未踏の70センチの深さの雪を上る のは結構きつい。しかしその後の喜びはなにものにもかえがたい。

ということで、この男爵はたいへん見る目のある人だった。おまけに彼のホテルの裏にはまだまだ自然が享受してくれるものがある、僕もまだ当分妙高にいるこ とになりそうである。

MY MYOKO: KAZUKO IKEDA

妙高高原 ★ MYOKO


おにぎりをバックパックに入れ、ヘルメットをかぶりスキーを担いでゲレンデへ向かう。それが、小学生だった私の冬休みの日常。お昼にはつめたくなったおに ぎりを頬張りながら、ゲレンデの食堂で豚汁をすする。ストーブの周りを囲み、冷たくなった手袋を乾かしながらスキー部の友達とよりそってお昼を過ごす。地 元のおばちゃんが作るにんにくのきいた豚汁(スキー汁とも言う)の味は今でも鮮明に記憶に残っている。

妙高山の麓に連なる杉の原、池の平、赤倉スキー場。それぞれに個性があり、ゲレンデ・温泉街の特徴も様々だ。杉の原のお気に入りはリズムの良いロングコース。スキーが大好きな叔父と一緒に、朝一番のゴンドラから、夕方止まるまで何本滑れるかとチャレンジした記憶がよみがえる。

ゴンドラの終点から乗り場までノンストップでの滑走はスキーの醍醐味だ。スノーパーク・モーグルコースなど様々なニーズに応えてくれるゲレンデが魅力だ。

ファミリーで初めてのスキー・スノボだったら池の平が最高のロケーションだろう。妙高山の裾野に大きく広がるゲレンデはキッズ、初心者の心強い味方だ。回 りの人や、雪の壁や、狭いコースなどを心配せずにスキーが上達できるのは心強い。

赤倉エリアで紹介したいのが公認大会などが開催されるゲレンデはもちろんだが、今回は「温泉ソムリエ」。ワインソムリエが葡萄の種類・生産地、その特徴 などを教えてくれ、料理に合わせた一本を勧めてくれるように、温泉ソムリエは効能・入浴方法・温泉分析書の読み方などを教えてくれる。スキーで冷えた身 体、使った筋肉をしっかり癒してくれるだろう。

スキー・スノーボードで空いたお腹を満足させてくれる夕食には鍋を囲みながら日本酒とゆきたい。良質な粘土質がベースとなる田んぼで収穫 されたお米とお水から作られたお酒。やわらかく喉後に流れるそれはたまらないじゃないか。

寒い冬には熱燗もいいが、一升瓶を手にトクトクとお酒をグラスに注ぎながら食事をすすめるのも悪くない。宿のご 主人から昔話を聞かせてもらいながら、田舎を感じるのはしあわせのひととき。きっと、心も身体も温まる夜となるだろう。そして目が覚めた翌朝に、キラキラ 光る新雪と雄大な妙高山の姿に出会えたら、心も洗われる。

赤倉観光ホテルのラウンジで、温めたアップルパイにバニラアイスクリームに紅茶 で休憩が私のお勧めだ。

お勧め食堂

池の平 中華料理 「栄華」 

実家に戻ったら、絶対に訪れる中華料理。お勧めは五目あんかけそば。

赤倉 うどん 「うどんの歩」

チーズたっぷりのアルプスうどん・真黒なイカスミうどんなど珍うどんが美味。

新赤倉 フレンチ 赤倉観光ホテル
 「メインダイニングソルビエ」

INFORMATION

温泉ソムリエのいる宿 「遠間旅館」
www.myoko-akakura.com/