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特徴

2009
Issue 27
Common Ground, A World Apart
By Jeff Jensen

真のスポーツは3つだけだ。登山、レースカー、そして闘牛」  アーネスト・ヘミングウェイ

こう言ってのけたヘミングウェイには、なにか心あたりがあったんだろう。難しいルートを登るクライマーは、闘牛士やスピードレーサーと同じく、限界を超え る挑戦をする点では趣きを同じにする。

ヘミングウェイなら、地球の真反対に住み、いつも巨大な岩に挑戦しているワールドクラスの冒険家平 山ユージとレオ・ホウルディングと話があったんじゃ
ないかと思う。

インタビューをするこの日、彼らはユージの 住んでいるところから目と鼻の先の埼玉でボル ダリングをしている。このビッグな二人に会う ことから、とてもわくわくして約束の時間より早 くついてしまった。

 かれこれ20年クライミングをしているユージが現れ た。彼は大変困難なルートに挑戦するクライマーとし て活躍していて、しかし国内よりも外国でその名は知ら れている。

彼のスポンサーにはBeal, The North Face、日産とい うビッグな会社がついているのにパーソナリティーは驚 くほど気さくで、僕の緊張をほぐしてくれる。

ユージは1998年のワールドカップでアジア人初のシリーズ 総合優勝を、2000年には2度目の総合優勝を果たした。昨年に は彼のパートナーであるアメリカ人のハンス・フローリンとヨセ ミテ国定公園、エルキャピタンのノーズで最速アセンドの 記録を破った。アセンドは31個のピッチで、900メート ルの高さをたった2時間37分5秒でなしとげたのだ。

彼の名字(平山)の英語訳がその名のフラット・ マウンテン(15a)は、彼が住居を構える埼玉に あるのだが、そのルートを唯一征服したもの はユージだ。そのほかにも彼は、本番一発勝 負で挑むオンサイトとして、前人未到の14b ルートに、スペインのバトゾーラのホワイ ト・ゾンビイでやりとげたのだ。まっ たくもってすごい。

まもなくレオがやってきた。彼は10歳からイギリス で天才クライマーとされ、世界中でアウトドアアドベ ンチャーをする毎日を送っている。

アルゼンチンのパ タゴニアにあるカサロト・ピラーという名称で知られ るフィズロイのノース・ピラーをフリーで初登頂した 驚がくの人物だ。

彼はまたスラック・ラインやベース・ジャンプ(ス ペイン、ナランヨ・デ・ブルネスからはじめてジャン プをした人)でもあり、エベレストの危険なゲーム、 ヒマラヤン・ルーレットの勝者でもある。そしてなん と彼自身のテレビ番組(ヴァージンテレビの「テイク ミー・ツー・ザ・エッジ」という番組で日本でも数話 放送予定)まである。彼のスポンサーはBerghaus、 DMM、Five Ten、Adidas Eyewear、Linde/Werdelin などだ。

彼らはクライミングの世界にいるのでお互い名前 は知っていた。数年前にはヨセミテで実際に会ってい るが、一緒にクライムをしたことはなかった。ユージ は僕らを御岳の多摩川沿いにある代表的なボルダリ ング「忍者返し」(V6)に案内してくれた。


レオはセイリング中に足にひどい怪我をしたため 歩くのが困難のようだった。まるで重いチョーク袋の ように足を引きずるので、野次馬がさわぐほどだった。

ユージは軽い動きで、ハンド・トラバースをしてク ライムしてみせる。彼はビッグ・ウォールとボルダリン グは違うものだという。日本でのビッグ・ウォールトレー ニングとは、室内練習場でプラスチックのホールドで 練習するということ。だから彼は10dあたりから始め、 14代に到るまでグレードをひとつずつ上げながら登っ ていく。登りきると、今度はそのルートを戻っていくというトレーニングを約30ルートほど続けて行う。

そして今度は30ルートを繰り返しやる。普通これは 2~3時間かかる。僕のこぶしはそれを想像しただけ で痛くなる。 二人とも岩のそばでリラックスできるのか、日本の ボルダリングのグレードシステム、岩の種類、各地の 違いなど、クライミングについて話をはじめた。

お互 いに会う前から、それぞれの成し遂げた偉業に尊敬 の念をもっていたようだ。レオはユージの忍耐強さと 意思の固さをもっともすばらしいと思う。ユージはレ オが人生やクライミングをリラックスして楽しんでいる ところをすごいと思うようだ。

彼らは外国のある山を登ったときに経験した、23 ピッチの後にあるフレークグラブについて話をしてい た。古典的な1000メートルの山にあるクルックスピッ チで、大変難しいシークエンスの後にある、フレーク ホールドのことだ。しかもフレークは壊れてしまって、 そこからのムーブはとても困難になったらしい。

この会話を聞いていて僕がもっともすごいと思っ たのは、二人がどんなすばらしい偉業を成したかや、 それぞれのスタイルの違いなどではなく、この二人の 会話の内容だ。一人は日本人、もう一人はイギリス人。 だけど、カリフォルニア州のヨセミテ国定公園の何千 フィートの高さにある場所の、岩の細かい材質につ いての会話をしているのだ。遠くはなれているはずの 二人に、共通の話題があるのだ。

その日は近くのすし屋で、彼らの苦労話や自慢話 に花がさいた。僕はといえば、この二人がすごい人 たちであることをしばし忘れ、山を愛す友人としてそ の夜をたっぷりと楽しんだ。