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特徴

2010
34 号
レインフォーレストのサウンド
By Craig Yamashita

「スティングとその友人が、ブラジルのスターと、ペイ・バイ・ビューのレインフォレスト・チャリティー・コンサートで歌うって?」

レインフォレスト・ワールド・ミュージック・フェスティバルについて聞いた時の僕の反応がこれ。ぜんぜん違っていたので良かった。ちょっと調べてみると、サイチョウの地サラワクで行われる3日間の音楽祭だった。行きたいかと聞かれたとき、僕の答えは「30分あれば、準備できるよ」だった。

ボルネオは最近まで近代化されていなかった。多くの先住民が何世紀にもわたって熱帯雨林と調和しながら生活し、かわりに食料、住居、衣類、独特の楽器を作る材料という恩恵を森から得ていた。そのひとつであるサペという大きな弦楽器が、ミュージシャンで民族音楽の学生であるカナダ人のランディ・レインーレウシの目に留まった。

1998年にレインフォレスト・ワールド・ミュージック・フェスティバルは初開催を迎えたとき、ランディの精力的な貢献は高い評価を受けた。ランディはいまでもクリエィティブ・ディレクターとして世界各地からミュージシャンを招いている。ボルネオの民族音楽を多くの人々に紹介し、人類の永遠のミュージカル・スピリットを祝うという、スタート当初と同じ目的で運営されるようサポートしている。

The Sarawak Cultural Village
サラワク・カルチュラル・ビレッジ


RWMFは、僕らがよく知っている都会のポップ・ミュージック・フェスティバルと異なり、
アーティストではなく音楽そのものに注目する。しかし本当の主役はコンサート会場、素晴らしいサラワク・カルチュラル・ビレッジだ。コンサートの日以外の362日は熱帯雨林の奥深くにたたずみ、小さな池の周りに忠実に再現された部族の住居を展示している。フェスティバル中は、これらの住居でコンサートやクラフト・ワークショップが行われる。文化独特の食べ物や飲み物も美しい会場で味わえ、心まで癒してくれる。

クチンに到着すると、街中が高揚した雰囲気に包まれていた。フェスティバルはどんなものなのか予想もつかなかったが、ジャングルの中を45分ドライブする間中、心の中でビートが鳴り始まり、期待は高まっていった。午後一番の日差しに照らされて、眩い緑豊かな丘を通り過ぎる。駐車された車、ゴムぞうりを履いて歩いている人などを道端に見かけだすと、もう会場が近いことがわかる。

エントランスで、他のフェスティバル参加者と一緒になる。予想どおり地元の人々が多くいたが、他は服装などからバックパッカー、音楽民族学者、地元のビジネスマン、クアランプールのインターナショナル・スクールの子供達、特別研究休暇を家族で過ごしている教師などと見受けられた。中に入ると、息を呑む17エーカーの広い土地が広がっていた。僕らは午後は会場を歩いたり、ワークショップに参加したり、サワラク民族の歴史と、住居を鑑賞したりして過ごすことにした。

日が沈むころ、最初のバンドがチューニングしはじめた。メイン・ステージ・エリアまでぶらぶらと歩きながら、幸福感に浸っていた。ステージでは鎮静状態がアドレナリンに取って代わられ興奮度が高まってきた。昼間は木々と一体化していたメイン・ステージは、下方からライトがドラマチックに照らされて、実際よりも大きく見えた。群集から10メートルの高さにいるアーティストは、星のバックライトに照らされたキャノピーの上で演奏しているように見えた。なんて素敵なシアターなんだ。


World Music
ワールド・ミュージック


このユニークな会場で情熱的に歌うアーティストは、丁寧に料理され、美しく盛り付けられたエキゾチックな料理のようだ。音楽が注目されるのは普通だが、周りのセッティングが音楽を引き立て、その衝撃的なバイブが無感動的な人にまでダンスさせてしまうのだ。

過去に、トゥバァののど笛、アフローカリビアン・リズム、イギリスの”スキッフル“、アンデス・ソング、ケルト・アンサンブル、ガムラン、マオリ・ダンス、アフリカン・ドラミングなどが演奏されたという。すべてのアーティストはめったに聞く機会がない音楽を知ってもらうため、日中はワークショップを行ってくれる。直接アーティストと音楽という共通の言葉で会話するというのが、僕にとってはイベント最大の目玉だった。

水の音、かえるや鳥の泣き声というレインフォレストに生息する動物のコーラスで最高に盛り上げてくれたが、この素晴らしい体験で、僕は音楽とは人間が深く共有すべきものだと確信した。
     
この3日間のフェスティバルで、サラワク、韓国、ポーランド、インドネシア、フィンランド、タンザニア、ニュージーランド、チリ、米国、モロッコ、ハンガリーの音楽を楽しんだ。若者からお年寄りまでとてもマナーのいい観客は、ひとつとなってミュージシャンに感謝の意を表した。特にフィナーレですべてのパフォーマーがステージに集まり、真の意味の「ワールド・ミュージック」を演奏してくれたときには、誰もが感極まっていた。