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特徴

2017
Issue 63 (Spring 2017)
前進を続けるライダー、 ブルース・クック
By Rie Miyoshi

さかのぼること2014 年、フリースタイル・モ トクロスライダー、ブルース・クックは世界の アクションスポーツでもっとも過激なトリック を試みた。それはダートバイクでのダブルフロ ントフリップという技だった。彼にとっては最初のナイトロ・ サーカスのライブ。それはトラビス・パストラノが主宰(しゅ さい)する世界のトップのモトクロスライダーとアスリート たちによるアクションスポーツ・ツアー。数千人の観衆が 声援を送るなか、ブルースの人生が大きく変わってしまう とは彼自身も想像していなかった。ミッドフリップのセカ ンドローテーション中に彼は事故を起こして、第11 胸椎 (きょうつい)を骨折してしまったのだった。

事故後、彼の下半身は麻痺してしまった。しかし 2017 年、29 歳になった彼はふたたびナイトロ・サーカ スに復帰し、その障害を持った身体でダートバイクに乗り バックフリップを決め、世界レコードを達成した。 ナイトロ・サーカスの2 度目の日本公演のために初来 日したブルース・クックにアウトドアジャパンは独占インタ ビューを試みた。

三好利恵(以下RM):アクシデントで重傷を負ってしま うとだれもがアクションスポーツの世界から引退を考える と思うけど、ふたたびバイクに跨ったのはなぜですか? ブルース・クック(以下BC):ぼくはいままでいろんな 怪我をしてきたんです。でも、たとえば手首を骨折しても こう考えるんです。「バイクに乗れるようになるまでどのく らいかかるだろう?」。だから背骨が折れてもおなじことを 考えたんですよ。ふたたびバイクに乗れるにはどうやった ら早く治るかってことだけを考えてしまうんです。物理療 法とリハビリに耐える理由はぼくの心の中にそのゴールが あるからですね。

RM:その姿勢は自らの人生に影響をおよぼしていると思 いますか?

BC:そう思いますよ。ぼくはブリティッシュコロンビア州 (カナダ)のケロウナ出身です。そこにある農場で育ち、 そこで一生懸命働けば、それに見合ったものを得られる ということを学んだのです。だから諦めないという態度は ぼくにとって自然なことなんです。

RM:バイクに乗るようになったのはいつですか?

BC:ダートバイクは5歳のころから乗っています。それは 自然な成り行きでした。ぼくはアドレナリンの刺激を求め てダートバイクのトラックで長い時間を過ごしました。で もトリックやビッグジャンプの練習をそのトラックでするの は嫌だったので、自宅に専用のトラックをつくったんです。 お気に入りのトラックです。

RM:あなたの家族でバイクに乗る人はいますか?

BC:いえぼくだけです。両親が小さな50cc のバイクを、 お金に困っていた従兄弟たちから買ったんです。農場の 周囲にもダートバイクがありました。ぼくはそれに夢中に なったんですよ。

RM:事故からバイクに乗るまでにどれくらい時間がかか りましたか?

BC:3 ヶ月ほど治療に専念しました。その間、友達のビ リー・バン・ブウ(ナイトロ・サーカス製作者)とぼく は改良バイクの話はしなかったんです。でも彼はぼくがな にを考えているかわかっていて、しかもバイクに乗ること を切望していることも理解していました。それで彼はデザ インをはじめて、ぼくの身体にどうフィットし、どう両足を 支えるか考えたんです。怪我から9 ヶ月が経ってバイクに 戻ることができました。

RM:現在はどうやってバイクに乗っているのか少し説明 していただけますか?

BC:ビリーが組立工場を所有していているんです。そこ で彼がぼくのバイクをつくってくれたんです。今乗っている やつがそれで、最初に試したときもうまく機能しました。 両足をほんの少しだけプロテクトしてあって、このプロテ クションで最初のフリップを決めました。ツアーのために 上体をプロテクトできるようにカスタマイズしたんです。も しクラッシュしたときに両足が折れたかどうか、わからな いかもしれませんから。また小さなアブミ(足を置く馬具) が足を支えてくれて、両足のストラップとシートベルトが 付いています。でもこれは怖いんですよ。バイクから離れ られませんからね。それからロールケージとロールバー がバイクに装着されてあります。背後にロールバーがあっ てじゅうぶんな背丈があるから、ぼくの頭を保護するだけ じゃなく、たとえ上下が逆さまになっても安全なんです。 それからスタートとフィニッシュのときにだれかに支えても らう必要があるんです。そのあいだは自分自身でバランス を保たなければなりません。250 パウンドのバイクにくく りつけられるってことには神経がすり減らされますね。や りきる自信はありますけどね。

RM:あなたがバイクをフリップさせるときにあまり反動 を必要をしていないことに気づきました。ランプにヒット するための適した速度に達するだけのようにみえました。

BC:基本的なやり方はバイクのパワーに委(ゆだ)ねて ウィリーさせるんです。このショーのランプはほかのもの より急角度です。まずはゆっくりスタートしてフルスロット ルにするのはぎりぎりまで待つんです。ぼくは両足が使え ないので両腕に100% 頼るしかありません。だからでき うる限りの力で両腕を引いてローテーションを成功させる んです。

RM:練習にはじゅうぶんな時間がありますか?

BC:両親の家にまだトラックがあるからそこで練習しま す。でも帰れないことが多いから、バイクをフリップする のはショーのときだけです。

RM:新しいトリックやツイークス、また最近やっている ことは?

BC:片手でおこなうバリエーションがいくつか、でもバッ クフリップが中心です。家に帰ったときはスノーモービル で山をダウンヒルしてます。それからバイクのボトムケー ジの位置を少し上げようと思っています。地面に当たらな いようにです。とはいえぼくたちがつくりあげたこのバイク のデザインは画期的だと思っていますよ。とにかくナイト ロ・サーカスで忙しいですね。でも楽しいんです。

RM:ナイトロ・サーカスと関わりだしたのはどのような きっかけですか?

BC:ビリーの姉妹であるジョレーンが元祖ナイトロ・サー カスのショーのメンバーなんです。2008 年にバックフリッ プを学びたかったぼくは、彼女にトラビス・パストラノの ところに行ってもいいかって申し出たんですよ。最近はビ リーとジョレーンに会う機会が少なくなってしまいました。 旅がつづいてますし、プロジェクトも違うからです。ナイ トロはぼくのファミリーのようなもので、ぼくをサポートし てくれています。ぼくがバイクに乗ることを皆はためらって いましたが、ぼくの意思を理解して応援してくれてます。

RM:日本は初めてですか?

BC:アジアに来ることも初めてです。アジアについては いろんなことを聞いていましたから、大変楽しみにしてい ました。日本は清潔な国で、人々はフレンドリーですね。 東京の人口を聞いて驚きました。ぼくの故郷とその密度 を比較すると信じられないくらいです。

ブルースとナイトロ・サーカスのチームはオーストラリア からアメリカへと秋にかけて40 以上の開演を予定してい ます。ナイトロ・サーカスに興味のある方は下記のURL へアクセスしてください。 www.nitrocircus.com