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特徴

2016
Issue 60 (Summer 2016)
大都会近郊にある、魅力あふれるダイビングスポット
By ボニーウェイコット

日本でスキューバダイビングといえば、沖縄や日本の南方に位置する県が頭に浮かぶのではないだろうか。このエリアの透き通った暖かい海と美しいビーチは、当然夏のホットスポットである。しかしながら、東京近辺も、水中探索にはおなじくらい美しいといえる。

じっさい、都心から目と鼻の先、神奈川と静岡の県庁所在地のすぐ南でも、最高のダイビングが楽しめる。熱帯魚および冷水魚、南北からの海流、岩場、しっかり保存されたサンゴ、さらには沈船探検まで、バラエティ豊かな海中はすべてのレベルのダイバーたちを満足させてくれるだろう。

熱海のすばらしさ

火山のカルデラ上にあり、文字通り「熱い海」を意味する熱海は、8世紀以来、その温泉で名をはせてきた。1950年、市は政府から国際観光文化都市としての宣言を受け、さらに東海道新幹線の停車駅のひとつともなり、その人気は急上昇。とりわけ夏には、何千もの観光客が熱海を訪れる

熱海のダイビングスポットのほとんどは、湾の西端、陸からボートで5~10分の場所にある。上級ダイバーに適した岩の露頭や大型の沈船で有名だが、海は穏やかでアクセスもしやすく、軟体サンゴ、海綿、マクロライフや魚の大群まで、さまざまな海の生物を楽しむことができる。暗い隅にはウツボが潜み、より注意深く見れば、カラフルなウミウシやよくカモフラージュしたオニダルマオコゼを発見できるかもしれない。

錆びを求めて

熱海のもっとも人気のあるダイビングスポットのひとつは「沈船」、それぞれ25~30mからなる2つのセクションに難破して海底に沈んでいる船のスポットだ。その水深と船が海面に起こす緩やかな潮流のため、上級認定を受けたダイバーのみアクセス可能となっている。

ボートからダイブをはじめ、なにも見えないなか、長いロープを伝っていき、21mほど潜ったところでようやく沈船が視界に入る。船の最上部自体がすでに不思議なダイビング体験となる。ハナダイ、カーディナルフィッシュ、クロミスの群れが動きまわり、一方でオニダルマオコゼやウツボが暗がりで身を潜めている。

沈船の側面にはオレンジのハナダイやクマノミの小さな群れを見ることができる。上から見るのも印象的だが、目の前で見れば船はより魅惑的だ。さらに深く水深28mほどまで潜ると、ぎっしり繁殖した軟体サンゴが難破船を覆うように芸術的な迷路を形成し、危険を察知した魚たちが逃げ込むのにうってつけの聖域となっている。

いっぽうで、扇状サンゴも水中に向かってその枝を優美に伸ばしている。スズメダイやキンギョハナダイが一帯をパトロールし、魚の群れがさらに深くへと泳ぐ。

ダイビングは船体と前部分からはじまり、簡単に進める。自分のいるセクションの背面に到達するまで側面を辿り、船の残りの部分を過ぎて泳ぎきれば、最終的にはスタート地点に戻ることができる。エアー消費量の少ないダイバーであれば、一回のダイブで両方のセクションを見ることができるはずだ。

ビタガ根の美しさ

沈船の次はビタガ根だ。ここは、海綿動物、軟体サンゴ、そしてそこらじゅうに広がったイソギンチャクが存在する広場で、タカベや桜鯛などの魚の天国となっている。ここは多様な海洋生物がひしめきあい、サンゴも豊富だ。巨大な岩が深い部分から張りだし、軟体サンゴをはじめ、多様な魚たちでいっぱいだ。さまざまな種類のキンギョハナダイも多く、奇妙なマハタなどがおり、中サイズのヒラメがカラフルな景色のなかで静かに休んでいるだろう。

浅いエリアは、鮮やかな赤や黄色のウミウシなど小さな生物の宝庫だ。ウマヅラハギが青い水中に漂っているいっぽうで、多様な海綿動物やサンゴが岩の上部や側面をまるで大きな花壇のように彩っており、健康に育っているのがわかる。

岩の構造物の上を泳げば、ウニや小さな貝がそこらじゅうに見え、さらに数匹のオニダルマオコゼが現れて私がゆっくりと泳ぎ抜けるのを横目で眺めている。坂になった岩の斜面に沿って潜っていくと、深さのあるところには、より多くの海綿や八放サンゴ、魚の群れがおり、奇妙なウミユリにも思わず笑みがこぼれる。

宮川湾

神奈川県の南東に位置する三浦半島は東京湾と相模湾のあいだに突き出ている。このエリアは船の発着を見守る洋式の灯台で有名だ。マグロ漁で有名な活気のある三崎港は、漁船から降ろされたばかりの新鮮な魚を食べるには絶好の場所だ。

宮川湾沖の広大な海は、多くの岩場や巨岩の露頭などがあり、さまざまな魅惑的な生物を育む場所となっている。品川駅からわずか75分、多様な岩石の形や軟体サンゴ、印象的なマクロライフを見ることができる。

伝説のマクロ

宮川湾の水中尖塔地形は、視界10〜15mにもおよび、遠洋生物はほとんどいないにもかかわらず、豪華な海洋生物にあふれ、さまざまな動きや色合いで満ちている。深い所にいくにつれ、軟体サンゴによって飾られた特徴的な岩石・尖塔・峰地形が見えてくる。ここの魅力のひとつは、大きく張りだした岩石だ。ウナギがシラヒゲエビといっしょに暗がりで休息していたり、ウミウシはあらゆる深さにいる。また、多様なイソギンチャクも観察できるだろう。

生き物がほとんどいないかのようにみえる場所もあるが、ここは海綿動物があちらこちらであがってくる。軟体サンゴで飾られた岩や一帯を流れる栄養豊かな海水を活用するウミユリなどが繁殖しており、写真家であればマクロレンズと軽いハンディカメラを構えたくなるだろう。ネンブツダイなどフォトジェニックな魚もいるいっぽうで、より深い場所で岩に近づけば、さらなる発見が待っている。小さなカニがあちこち歩きまわっており、ウミウシは、岩の表面にカラフルなイソギンチャクと共存している。  

しばらく岩石地形を探検した後、私は、ウナギが住処の裏に隠れながら私が通り過ぎるのを見上げているのを見つけた。宮川湾の最大水深は20mほどで、岩の壁が砂の海底に向かって降りています。  

さらにそこからつづくエリアは、八放サンゴ、ムチ状サンゴ、扇状のサンゴといった、すばらしいサンゴが育つ場所となっているうえに、豊かな海洋生物や、たっぷり成長したサンゴに覆われたトンネルを泳ぎ抜けることもできる。ウツボは水深のある場所にも生息しており、ダイバーを気にする様子もない。黒い側面をもつヨウジウオが小さな岩の裂け目で漂い、エビはウニとチームを組んで、ダイバーが泳いでいくのに目を光らせ、獲物を狙うミノカサゴが定期的に姿を現す。 

しかしながら最高のサプライズは、海洋生物の豊富な10〜20mほどの浅い地域に残されている。マクロライフファンはタツノオトシゴやウミウシ、イザリウオに惹かれるはずだ。赤軟体サンゴは、キンギョハナダイやほかの魚の群れを惹きつける斑点模様を持つが、なんといってもショーの主役は、まちがいなくハーレクイーンシュリンプだ。洞窟のような小さい開口部に守られながら、彼らの白と青の色はダイバーの懐中電灯の光を反射する。  

宮川湾では時折かなり強い潮の流れがあるが、これが深い海底部から豊かな栄養分を湾に運び、豊かな生物多様性を形成する。岩石地形は、スズメダイ、イシダイ、イエロークロミス、縞状オトヒメエビなど岩壁を鮮やかな色合いで飾る生物たちの生息地だ。少数ではあるが、ヒトデやウミウシなどもいる。青色の中に昇っていく印象的な岩石構造を見上げるのは、海面に上がるさいのすてきな最後の仕上げとなる。  

熱心な写真家なのか、沈船ファンなのか、はたまた単に海洋生物を観察してリラックスしたいだけなのかにかかわらず、熱海と宮川湾には、かならずなにかしら楽しみがある。のんびり日帰りダイビングが楽しめ、写真撮影のチャンスも多く、だれもが楽しめることを保証する。✤

そのほかの情報
交通:熱海までは東京の品川駅から東海道新幹線が出ている。約45分、普通車で3,500円だ。JR東海道線では約2時間、1,900円。
宮川湾へは品川から京急線で、三崎口駅へ行く。乗車時間は約75分、1,000円以下で行ける。

移動:レンタカーがお薦めだが、ダイビングショップでも送迎サービスがある。
時期:6月から9月がもっとも暖かく、気温は20℃から30℃だ。12月から2月は寒く、6℃から9℃だ。
水温:7月、8月で18〜27°C、9月で23〜26°C、10月で18〜24℃。夏は5mmフルスーツでだいじょうぶだが、10月以降はドライスーツが必要。

ダイビングツアー:

熱海:
Discovery Divers Tokyo (DDT)
www.discoverydiverstokyo.com
Facebook:Discovery Divers Tokyo (DDT)で検索。もしくはジム・ゴダード宛てにメールを。(discoverydiverstokyo@gmail.com)DDTはレクリエーション、リーダーシップ、テクニカルコースのほか、東京では月いちの集会や夏には伊豆エリアのダイビングも行っている。

宮川湾:
葉山にあるNana Diving(Web: www.nana-dive.net/fundiving.html)がお薦め。天気によって、逗子や葉山、宮川湾へのツアーがある。