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特徴

2016
Issue 59 (Spring 2016)
“やんばる”の無垢の自然
By 三好利恵

 

山のふもとでわたしが地元の餅や黒糖をまぶした甘いピーナッツを食べているとき、59 歳のキミコ・ヤスダさんがお茶をいれながら いろいろな話をしてくれた。素人目には森 に囲まれた野菜畑だが、キミコさんにとっては肥沃で耕作地だという。

「わたしは両親から野菜をどう調理するか、また薬草がどう効くかを教えられました。これは代々受け継がれていくの です」とキミコさんは説明した。デーサンダームイとは別の場所でキミコさんは生まれた。周辺のカルスト台地の岩の山道を裸足で歩いて学校 に行ったという。‘60年代はのどかで、彼女は友達と丘やどうくつ洞窟を探検したり、海で陽が沈むまで遊んだという。今の やんばるの子供たちは外であまり遊ばなくなった。子供たちは沖縄の太陽の下ではなく、家の中でスマホのスクリーンばかり見ていると嘆なげいた。

観光客は有名な「ちゅらうみ水族館」には訪れるが、自然道やスノーケリングは体験せずにリゾートホテルに戻ってしまう。だから自然はほとんど手付かずの状態になっている。

那覇空港から一時間の“やんばる”地域は、漁業の盛んもとぶなきじんなごいえじまな本部港、農作の今帰仁、そして西には名護市、伊江島などで構成されている。この地域は平坦で、のんびりと自転車に乗って海岸沿いのハイビスカスの木 々を抜けたり、いまどまり今泊などの古い集落のあぜ道や抜けたり、ときには放牧している水牛と出会うハプニングもあって、楽しい。

“やんばる”の文化は中国大陸の影響を強く受けていりゅうきゅうグスクて、家屋などには古代琉 球の風情を感じる。御城と呼ばれていた14世紀頃、沖縄の北部を統治していた北山王統は今帰仁を中心地としていた。風化した城の壁と城は、なきじんぐすく今帰仁城として世界遺産にも登録されている。

日本の本州のような狭い墓苑とは違い、沖縄は伝統のかめこうはかある亀甲墓と呼ばれる大きな埋葬室に死者を埋葬する。こうらその名のとおり、見た目は亀の甲羅のようだ。このような墓は中国の福建省から台湾を通って沖縄に伝来したようだ。また屋根や玄関でよく見られるシーサーは沖縄の空想上の獅し子しで、その家を災いから守ってくれるという言い伝えがあり。これも中国から渡ってきたという。

沖縄には海しかない? 無垢の自然がある北部の海岸は、観光として整備された南のビーチリゾートより美しい。暖かい黒潮による影響で、沖縄には200種類以上のサン ゴや熱帯魚、エイや海亀が透き通った海に泳いでいる。1 月から3月の冬のあいだにはザトウクジラがアリューシャン海域よりやってきて、ここで繁殖をはじめる。岩礁でのカヤック・フィッシングもできて、幸運ならばサバやハタ、キュウリウオやヒメジを釣ることができる。バーベキューのとき は、塩と泡盛を飲んでみよう。それは沖縄伝統の蒸留酒 で、米が主原料。でも、カヤックでフィッシングをするときに は腕をカヤックから外にはできるだけ出さないようにしよう。 まれにサメが深い海から飛びだしてくることがあるのだ。

伊江島は本部港からフェリ ーで30分のところにある。23km平米の広さのこの島は農耕が盛んで、サトウキビやタバコの農園がある。伊江牛の牧場もここにあり、人口は5,000人ほど。グスク山は標高172m、急な階段を10分ほど登ると眺望の開けた景色が楽しめる。伊江島でのサイクリングはさわやかな気分にひたれるから、いい選択かもしれない。

この静かな島にある朽ちかけた建物と、サトウキビの燃えた臭いには不幸な歴史がある。伊江島は第二次世界大戦(太平洋戦争)で日本軍が最初に降伏した場所であった。1945年、この島の農民たちは日本政府からのわずかな支援だけで日本軍とともに激しく抵抗した。しかしアメリカ軍の圧倒的な兵力によって陥落した。その後には“沖縄のガンジー”と呼ばれる阿波根昌鴻氏による平和的抵抗があった。今日の伊江島はアメリカ軍が基地として北部の一部を使用し、補償金を受けとっている。伊江島を散策すると、古い滑走路などの過去の遺産がまだ残っていた。そのひとつ、ニャティヤ洞窟は戦時中に1,000人もの住民を救ったという。

“やんばる”はアウトドア天国、とくに旅行会社に押し付けられたような観光からは抜け出したいような人にはぴったりの場所だ。お薦めの遊び方は自転車を借りること。海沿いの古民家や琉球王朝の遺産を自分のペースで散策することができる。 ✤

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