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特徴

2016
Issue 58 (Winter 2016)
ラジャ・アンパット:環境保護におけるインドネシアの成功
By ティム・ロック

「ラジャ・アンパットはダイバーが今もっとも注目している ダイビングスポットだといえるが、それには理由がある。こ こでのダイビングは魅惑的なのだ」。ラジャ・アンパットは すばらしい眺望とともに、湾に守られたリーフを擁する。イ ンド ネ シ ア の ウ ェ スト パ プ ア の い ち 地 方 で し か な か っ た こ の場所は、今世界屈指のダイビングスポットとして地図に 載っている。広大な島国の東に位置する環礁で、ミソー ル島、サラワティ島、バタンタ島、そしてウィアゲオ島から なる。

静 か な 湾 や 、 荘 厳 な 石 灰 石 の 島 々 、そし て ジ ャ ン グ ル に囲まれた小島が点在するラジャ・アンパットの醍醐味は 海洋生物の多様性だ。コーラル・トライアングルと呼ばれ るこの貴重な場所を、今、世界中の環境保護グループが 協力し保護する活動がはじまっている。 では、ここのなにがすごいのかを見てみよう。自然の美 しさはもちろんだが(ラジャの石灰石の島はパラオをもっと 強力にした感じだ)、このエリアには1,400種類以上の魚 類が 生 息している。そのうち1 0 0 種 類は最 近 発 見されたば か り で 、 4 種 類 は イ ンド ネ シ ア の 新 種 、 軟 体 動 物 も 7 0 0 種 類が生息している。

こ の 数 字 だ け で も ダ イ バ ー に は 魅 力 的 だ 。 ダ ン ピ ア 海 峡ではどこへ行ってもタカサゴの大群が泳ぎまわり、ボミー が育っている。魚の群れは大きくて元気だし、ウミガメやマ ンタ、サメもよく見られる。

流れの強いサーディンリーフは南ワイゲオの人気スポッ トで、クロカジキが横切るのを見たこともある。マンスアー ル島の水深が深いところならば、イルカやクジラを見ること もできる。 ちょっと変わった小さな海の住人が住んでいるエリアで は水が少々汚いが、ダイバーたちはカモフラージュした生 物にびっくりさせられる。パッセージというポイントではカレン トを利 用したドリフトダイビングを楽しめるし、マングローブ の 木 に ソ フト サ ン ゴ が は り つ い た ブ ル ー ウ ォ ー タ ー・ マ ン グ ローブも必見だ。キラーケーブでは、鍾乳石(しょうにゅう せ き )が 垂 れ さ が る 石 灰 石 の 洞 窟 に 入 る こ と が で き る 。 こ のように次から次へと驚かせてくれるダイビングが待ち受け ているのだ。


ラジャ・アンパット北部へ行けば、のどかなワヤグの島々 の巨大なカルスト(※)や、ひと気のないエメラルドグリーン の湾やビーチも最高だ。ワヤグへ行く途中、赤道で潜って からこの海山を楽しむのもおすすめだ。 このあたりのポイントはとにかく魚が多い。そして、サー モンピンクのチューブコーラルの大群は、カレントで見え隠 れする黄色のポリプがとてもきれいだ。カルストをハイキン グ す れ ば 絶 景 が 待 っ て い るし 、 未 開 の 地 の 自 然 に か こ ま れてビーチでゆっくりするのもこの旅の醍醐味となる。 ラジャの玄関口であるソロンへは、ガルーダインドネシア 航空が毎日就航している。ソロン自体もおもしろい町で、 Pasar Jimbutan Puriの朝市では、さまざまな果物や朝採れ の鮮魚、編み上げのバッグやウェストパプアの民芸品など も売っている。


ダイビングボートはソロンの港から出る。ほとんどのボー トがインドネシアの伝統的なフィニシと呼ばれるボートをダ イビング用に改造したものを利用しており、一週間から二 週間、快適なダイビングトリップを楽しめる装備がなされて いる。最近は高速ボートで2~3時間の場所にある島ベー スのリゾートも増えている。 南北に広がるダイビングスポットがある広大な保護地区 は有料となっていて、ダイバーたちには機材に付けること ができるプラスチック製のバッジが渡される。ダイバーの多 くはここへ何度も通うので、カジノのコインサイズのカラフ ルなバッジのコレクターとなる。 集まったお金は、警備、給与、維持費など、ラジャ・ア ンパットにある5つの海洋保護区の運営費へとあてられる ほか、コミュニティの維持と開発プログラムにも使われる。


ラジャ・アンパットは環境保護に成功したエリアとして知 られており、その中心的存在なのが、バトビティム島南部 のミソールエコリゾートだ。明確なヴィジョンとともにこの施 設を立ちあげたのは、自然保護活動家でエコオタクな根っ からのダイバーたちだ。スタートしてまだ10年そこそこだが、 彼らの環境保護活動は広く知れわたっている。 アンドリュー・マイナーズがこのプロジェクトに着想した のは2005年初頭。ダイブクルーズのベテランで、ラジャ・ アンパットのスポットについても詳しい。アンドリューと彼の ク ル ー に わ たし が 初 め て 出 会 っ た の は 、彼 ら が 最 初 の 建 物を建設中のことだった。Damai1というクルーズボートで ラジャ・アンパットを訪れたのだが、その船に彼らも乗って いたのだ。 建設にはリサイクル資材しか使わないという話を聞いて 驚 い た の を 覚 え て い る 。リ ゾ ート 建 設 に 際 し 、 彼 ら は 木 を 一本も切り倒さなかったばかりか、木材はすべて地元の村 で調達し、持ち運びできる製材機を使って材木は現地で 加工したという。


それから9年、海辺の部屋とプライベートバンガロー、そ してヴィラに合計32人が寝泊まりできるリゾートと、彼らが 提 供 す る 環 境 保 護 教 育 の プ ロ グ ラ ム は 世 界 各 国 の ダ イ バーに人気で、リゾート成功の一因となっている。 こ の エ リ ア は 極 端 に 人 口 が 少 な い こ と も 、ラ ジ ャ の 海 が ひときわ豊かな理由のひとつである。人里離れた場所に あり、インフラも整っていないため観光地として成長してい ない。


イ ンド 洋 と 太 平 洋 に 挟 ま れ て い る こ と も 海 洋 生 物 の 多 様性に影響を与えている。ふたつの海のあいだでサンゴ や魚類の幼生の交換が頻繁(ひんぱん)におこなわれ、そ れ は 同 時 に こ の エ リ ア を 世 界 で も っ と も 重 要 な 海 洋 保 護 区にしている。 最近では、4,600万ヘクタールという広大なエリアがサメ とマンタの保護区に指定された。観光客に魚市場で死ん でいる魚たちを見てもらうよりも、生きたままのほうが、これ ら の 生 物 が も つ 経 済 効 果 は 格 段 に 高 い た め 、 政 府 が こ の保護区の建設に同意したのだった ラ ジ ャ・ ア ン パ ット の 象 徴 的 な ス ポ ット が 南 に ふ た つ あ る。


まず、海洋生物の宝庫であるブーウィンドウズ。水中 には自然に切りだされた窓ができていて、ダイバーは小さ な岩の島を泳いでいく。流れがあると、ユメウメイロの大 群やバットフィッシュ、バンプヘッドパロットフィッシュなどが やってくるのでさらに見どころ満載となる。 ソフトコーラルやバレルスポンジも豊富だし、バレルスポ ン ジ の あ い だ に は ヘ ア リ ー ス ク ワ ット ロ ブ ス タ ー も 隠 れ て い る。私はここで、海藻の間にハナオコゼを見たこともある。 ふたつ目はマジックマウンテンという海山で、頂上は海 面から約7m。この頂上はリーフマンタや遠海魚がやってく るクリーニングステーションとしてよく知られており、メガネ モ チ ノ ウ オ や リ ー フ シ ャ ー ク 、バ ラ ク ー ダ の 大 群 な どと 出 会 えるかもしれない。 ラジャ・アンパットは今後まちがいなく観光地として成長 するだろう。多様な海洋生物を楽しむダイバーはもちろん、 その 環 境を守るインドネシア 人 、そしてそのほかインド太 平洋やアジアの地域にとってのモデルプロジェクトとして、 フ ォ ー キ ン グ ス( ラ ジ ャ・ ア ン パ ット )は 持 続 可 能 な 環 境 を 維持しつづけてほしいと思う。✤


その他の情報

位置:インドネシアのパプア(前イリアンジャヤ)の北西端に位置する。 行き方:ジャカルタ、マナド、バリ(デンパサール)から国内線でソロン、ラジャ・ アンパットへ。島へはガルーダやほかの国内線が毎日ソロン経由で飛んでい る。ソロンからラジャ・アンパットへはボートの予約を。現在は高速船も利用 できるようになり、所要時間は一時間ほど。通常のボートだと2~3時間だ。 ダイバーのほとんどはソロンからダイブクルーズボートで出発する。

時期:お薦めの時期は乾季(9月から6月初旬)で、この時期は風と雨がもっ とも少ない。風がある雨季は南部はむずかしいが、北ラジャ・アンパットの島々 とダンピア海峡は一年を通してダイブ可能。

宿泊:ダイブリゾートやエコリゾートが数多くあるが、ダイバーの多くはダイブ クルーズでポイントを周る。 許可証:ここでのダイビングには許可証が必要で、購入日から一年有効だ。


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