特徴

2015
Issue 57 (Autumn 2015)
魅惑の和歌山
By Bonnie Waycott

 

串本から大島まで。ボニー・ワイコットと行く関西ダイビングスポット。

和歌山県南部、海と山にはさまれた串本町では近隣の港でとれる新鮮な魚が居酒屋へと運ばれる。串本の歴史には船や沈没船が深くかかわっているのだが、とくに、1891年にトルコから外交のためにやってきたエルトゥールル号はよく知られている。祖国へ帰還のさい、エルトゥールル号は大きな台風に巻きこまれて、粉々になって海の底へ沈んでいった。

ときに危険も潜むエリアではあるが、本州屈指のダイビング、シュノーケリングスポットでもあるのだ。リーフやごつごつしたウォールには、色鮮やかな魚やマイクロライド、そしてスポンジ珊瑚やソフトコーラルなどが住んでおり、写真撮影にはもってこいのロケーションを提供してくれる。串本でのダイビングは美しく多様な生態系が待っている。

ブラックトンネル


(Credits: Tomoyuki Takagawa)

3640mというその深さのため、ブラックトンネルを訪れることができるのは、アドバンスドオープンウォーターの免許保持者にかぎられる。ダイブ時間はディセント(潜降)とアセンド(浮上)がほとんどで長くはないが、カラフルなウミウチワや鮮やかなスポンジなど、水中の風景は見事だ。

キンギョハナダイやナイフフィッシュにチョウチョウウオが近くを泳ぎ、目にも楽しいディセントの見どころは、やさしく揺らぐソフトコーラルに覆われたふたつの岩のあいだにあるアーチだ。深く青い海へと落ちていく岩はどちらも険しく切り立ち、さまざまな生命体に覆われているのがわかるだろう。

アーチをくぐるとそこは自然がつくった円形競技場への入り口となり、さまざまな生物が生息している。テンジクダイの群れは近くで泳いでといわんばかりに、入口付近で回遊している。水深が深いと水温もさがるが、ギザギザの岩の層がカニや甲殻(こうかく)類のかっこうの隠れ家となっているのをみれば、もっと滞在したくなるだろう。

浅瀬へ向けて浮上するとハードコーラルが密生し、魚も多く、成長が著しいのを見てとることができる。上昇しながらもう一度下を見て、太陽の光に照らしだされたアーチをながめてほしい。なによりも、輝く太陽がここの風景の演出を魅力的なものにしてくれている。上昇中にはタコやクエに出会うことも多い。

上の島


(Credits: Keiko Shimizu)

水に入れば上の島には見どころがいっぱいなのがわかるはずだ。このエリアの水中には印象的で多様な地形があり、たくさんの光と海洋生物、高い透明度が特徴である。最大水深は20m、信じられないほど多様な生命とともに、だれもが楽しめるスポットだ。

岩場までのディセントは約1419m、ソフトコーラルに見え隠れする小さな穴という穴には、エンペラーシュリンプや小さなカニなどの小動物が生息しているのがわかるだろう。ワイヤーコラルシュリンプがくねくねと泳ぎ、パイクブレニーやブラックバーブロミスは隠れ家からすばやく出入りを繰りかえす。

 

(Credits: Naofumi Ueda)

岩場には裸鰓類らさいるい)も見ることができるが、このあたりの裸鰓類はとくに極彩色だ。さまざまな色で装飾された彼らは、珊瑚やリーフフィッシュが生きる、手つかずの環境の大切な一部である。岩場にはさまざまな生物が生息しており、マクロ撮影にもってこいの奇妙な生物をたくさん見つけることができるだろう。このエリアは、多様性とマクロ生物の豊富さにおいてもっとも豊かで、穴や隙間(すきま)をすべてのぞいているうちに、何時間でも時間が経ってしまうだろう。

 


古座川
 
古座川は魅力的ではないかもしれないし、透明度の高い水に顔をつけるとその冷たさにびっくりするかもしれない。

大したことのなさそうな川にみえるのは事実だが、その水面下には見るべきものが多い。石や小石のカーペットに生える緑の植物は、次第に大きな石へつながり、小石の上にはサンショウウオが、興味津々であたりのようすを伺っているのが見えるだろう。
 

淡水ダイビングにはもっともおすすめのスポットである。


透明度が高いので写真撮影にも最適だし、水深は最大でも5メートルほどなので、長時間のダイビングを楽しむことができる。

見わたせば、この川を住処にしている巨大なサンショウウオといったさらなる出会いが待ち受けているし、そのほかさまざまな小さな生物が水の冷たさも忘れさせてくれるはずだ。

裂け目からは近づくとかくれてしまう小さなエビがこちらをうかがっているし、小魚の群れが小石の上を泳いでいる。日本の河川ではおなじみ、ピンクやブルーに彩られたおいかわも目を楽しませてくれるはずだ
 

(Credits: Naofumi Ueda)

殺風景なので、サンゴ礁にくらべると、一見なにもなさそうにみえるかもしれないし、魚の種類も少ないかもしれないが、ここの魚は落ち着いていて、ダイバーをあまり怖がらないのも特徴だ。

ゆたかな水中生物は、さまざまな水族館にいるような気分にしてくれるし、なによりギアやカメラがきれいなままで、洗う必要がないというオプションもおすすめの理由だ。 
 

紀伊大島ナギザキ

和歌山県最大の島である大島は串本から1.8kmにあり、ナギザキは島が有する数多くのダイビングスポットのひとつである。水面へ向けて形成された岩場が特徴だ。潜るにつれ、さまざまな生物や遠海魚がこの岩場をオアシスとしているのがわかる。

ソフトコーラルのあいだにはレッドファンやイエロースポンジが生息し、穴という穴に、小さなウミウシや保護色になったカサゴ、さまざまな小動物が生息している。

岩場には信じられないほど多様な海洋生物が生息している。魚の群れはもちろん、イソギンチャクのあいだには、ひじょうに珍しいイソギンチャクカクレエビもいる。

 

このスポットではさまざまな深さのダイビングが可能だ。深さは20m以上、海底に向けてゆるやかな斜面になっており、水深は30m以上にもなる。水深25mあたりから垂直のウォールをゆっくり上昇してみてほしい。手つかずのソフトコーラルとハードコーラルが生息するこのウォールには、魚や無脊椎(むせきつい)動物が見え隠れするのを楽しめるだろう。青い体に黄色のマークがついたウミウシや、裂け目からはウツボが半分隠れて不運な獲物を狙っている。

レッドクリングフィッシュを従えた巨大なウニを見つけることもできるだろう。ナギザキは岩場に隠れた小さな生命体の観察にとくにおすすめで、ダイバーを飽きさせることのないスポットだ。 ✤
 

(Credits: Naofumi Ueda)
お役立ち情報

アクセス:羽田空港から南紀白浜(なんきしらはま)空港、もしくは関西国際空港へJAL便が出ている。JRは、白浜から串本行きがある。

交通:レンタカーがおすすめ。古座、串本駅にはタクシーも多い。

時期:8月はもっとも暖かく、平均気温が27℃。1月は平均気温7℃。

水温:春~夏は1829℃、冬は1620℃。夏は5mmのフルスーツ、冬は7mmまたはドライスーツがおすすめ。

宿泊:串本のDIVE KOOZAは素泊まり2,000円。タオル、シャワー、ドライヤーなどのアメニティがついている。ブラックトンネルや上の島、古座川(こざがわ)へのダイビングの手配もしてくれる。

Web: http://dive-kooza.com/facilities.html

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