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特徴

2015
Issue 56 (Summer 2015)
北スラウェシを冒険
By 三好利恵

数え切れないほどの島々で構成された国インドネシアを一言であらわすのは不可能です。それはこの国にはさまざまな民族の人々が暮らしているからです。

バリ島は観光客に人気が高く、訪れた人々にも評判が高いけれど、このパラダイスを越えてほかの島に向かおうとする人は少ないのが現実です。17,508の島で構成されているインドネシアの島のひとつにスラベシがあります。フィリッピンの下、ボルネオとマルク島に挟まれたところにその島はあります。スラベシは英文字の“K”の形をしたユニークな形状で、3つの地域で構成されています。ここには熱帯雨林から高山地帯と渓谷、また手つかずの海岸や広大な岩礁もあって、世界中のダイバーを魅了しています。

 島の形状を地図で眺めるとユーモラスな印象を受けてしまいますが、スラベシは面積の大きさでは世界第11位。そして北と南では文化がまったく異なるという特徴があります。

 北スラベシだけでも3つの民族が存在します。それらはミナハサン、ゴロンタロ、ボラング・モンゴンドウです。ほかにもさまざまな民族がインドネシアには存在していて、それぞれが独自の言語を持っています。

北の中心地

 北部スラベシの中心地はマナド、島では2番目に大きな都市で、約50万人の人々が暮らしています。マナドを象徴するものは火山とマナド湾の紺碧(こんぺき)色の海です。ダイバーにとってこの都市はブナケン国立公園の玄関口として、また昔から交易都市としてオランダの影響を受けながら栄えてきました。その影響はいまでも建築物や人々の言語また民族性にも深く根ざしているのがわかります。

 この町の道路は馬車や通気のためにドアや窓のないミニバンなどが走りまわっています。公共の乗り物はすべてスカイブルーに塗装されています。早朝の市場では新鮮な魚や果物が売られていますが、変わった食材では犬、ネズミ、コウモリなども売られていました。あなたは食べてみたいですか?「マナド出身の者は四つ足ならばなんでも食べてしまいます。例外はテーブルくらいでしょうか。さらに足のないものも食べてしまうんですよ。例外は飛行機かな」。ウィロという名のガイドがそんなジョークを言ってました。肉、野菜そして果物だけでなく魚介類も含めてほとんどすべての種類がここにはあります。

 マナドのすこし南にはキリストの巨大な銅像が建っています。その大きさは世界第4位、アジアでは第2位を誇ります。イスラム教徒が多いインドネシアにおいてこのマナドは62%の人々がクリスチャンです。プロテスタントの教会やカソリックの聖堂が通りのいたるところで見ることができます。

 そのキリストの大きな銅像は2007年にこの国の大富豪のひとりであるチプトラ氏によって建てられました。これはシトラランドという開発計画のひとつで、ミニチュアのウォーターパークや原寸サイズの天使、動物の石工彫刻なども作られました。

島での休日

 マナドにはすばらしいダイビングスポットがあります。ブナケン・ナショナルパークの近くには、マナドツア、ブナケン、シラデンなどの島があり、マナドの港からはフェリーかマリーナプラザハーバーから1時間ほどに位置しています。 マナドツアは火山島で標高764m。マナドに最初に住みだした種族はミナハサといい、彼らはマナドツアからマナドやってきました。マナドツアとは訳するとオールドマナドという意味になります。でも彼らは16世紀に水が枯渇(こかつ)し、スラベシに移動せざるをえなくなりました。現在では1,000人弱の住民がこのマナドツアに住んでいます。さてダイビングに飽きたら2時間のトレイルハイキングもいいですよ。またマウンテンバイクにもいいコースがたくさんあります。

 現在、マナドツアにはホテルがありませんが、警察とマナドツア村の役所に届け出ればキャンプができます。ブーメランのような形のブナケンとシラデンという小島がマナドツアの群島としてあります。ここはダイビングにもスノーケリングにもすばらしい場所です。ここはインドネシアで最初に創設されたマリンパーク、ブナケン・ナショナルパークでもあり、宿泊施設は安価なバッカパッカーロッジから高級なスパリゾートまで揃っています。

 さて、ブナケンに私たちを乗せたボートが到着したのは正午でした。干潮なので船は沖に停泊し、モペットに乗り換えました。ハシケでは学校帰りの子供たちが珍しそうに私のカメラに近づいてきました。英語をこの島では教えていません。彼らが使う言語はふたつ、インドネシアのバハサ語と彼ら独自の言葉です。

 でも子供たちはTVのおかげで日本語をすこし知っていました。「ニンジャ!」、「カラテ!」、「アニメ!」などです。彼らは家に戻って手伝いをするまえに海にもぐって遊んだりサッカーを楽しんでいます。それから私たちはブナケンの有名な岩礁の壁に行き、スノーケリングを楽しみました。青空の下、海面に映る山並みが美しく、海中とはまた違った美しさがそこにはありました。

 さて海の中は発育のいいサンゴがみごとな発色で壁につづき、深みへと消えていく様子を見ることができました。周りにはブダイやエンジェルフィシュ、小ハゼの群れが餌を求めて回遊していました。経験豊富なダイバーならばボートをチャーターしてバラクーダ、エイ、ライオンフィッシュ、ペンユという海亀、鮫などを見にいくことができます。イルカも早朝ならば外洋で見物することができます。

 夕方に近づき町に戻るときがやってきた。フェリーに乗り、ケラパというココナッツジュースを楽しんでいると夕陽で私たちは金色に染まりだした。大きな波に逆らって船がゆっくり進むと「船は大丈夫、夕焼けを楽しんで!」と楽天的な地元の人が声をかけてきました。スラベシののんびりとした時間を過ごして、私は日々の忙しさをすっかり忘れて自分を取り戻すことができました。

ジャングルライフ 

 サムラツランギ空港に到着したらいちばんにお薦めなのがマナドのマスコットとして知られているメガネザルです。これは世界でもっとも小さく、スラベシにしか生息していません。体長約2.5cmで、大きく見開いた目が特徴。この猿は眼球を動かすことができない代わりに頭を180度も回転させることができます。マナドから東に1時間ほど走るとビツング市があり、そこにはタシコキ自然保護センターがあります。55ヘクタールのこのセンターはインドネシアの動植物を違法な森林破壊、狩猟、闇取引から守ってきました。この組織はさまざまな動物の保護もおこなっています。たとえばオラウータン、マレーグマ、テナガザル、オウム、バビルサ、野ブタ、スワレシマカク猿、スローロリス、サイチョウなどです。このセンターは彼らを健康になるまで保護し、願わくば自然環境に戻してやりたいと考えています。

 このセンターに寄付をする人はボランティアとしてウイスマタングカシ・ロッジに滞在することができます。レスキューセンターはスラベシの最南端にあり、その先にはレンべ海峡を挟んでレンべ島を望むことができます。その場所では西海岸の黒い火山性の砂や希少な海洋生物を見ることもできます。その海の環境はマックダイビング(沈殿物のある泥底での潜水)で世界中に知られています。この海域には難破した船も沈んでいます。なかには第二次世界大戦の日本軍の船も含まれていて、ダイバーは沈船ダイビングを楽しむこともできます。カラバト山は北スラベシの最高峰で高さは1,995m、日の出や日の入りを見るために朝と夕に訪れる人がたうさんいます。登りは6時間、下りは4時間ほどかかりますが、雨の日は滑りやすいので登山者は注意が必要です。海の近くにはルサ動物園があり、メガネザルだけでなく、スラベシ熊、クスクスや鹿、蛇、ワニなどが飼われています。でも檻の中にいる絶滅危惧種などを見るのは複雑な気持ちになり、彼らを自然な環境に戻してあげたいと思いました。だからタシコキ野生動物保護センターやタンゴコバツアングス自然保護区の支援は大きなサポートとなるのです。

高地から流れる急流

 ミナハサ高地の海抜700m。ここはロコン山とマハウ山に挟まれたところで、マナドに比べて涼しく雨量も多い環境です。ビツグ市から車で曲がりくねった道を1時間ほどでここに到着します。マナドの明るく乾いた気候はここにはありません。火山からの温泉が土壌に湧きでています。ここには大きな湖が3つあり、そのひとつがトンダノ湖です。ここではボート遊びや漁師が獲った魚を売る光景を見ることができるし、それを海辺の食堂で楽しむこともできます。マハウ湖は標高3,333mのところにある火山湖。リノウ湖は硫黄の水が溜まった火山湖で時間によって色が赤、緑、青とその成分と吹きだすガスで変化します。ペダルボートやカヤックを借りることもできます。この高地の山々、ジャングル、渓谷はハイキングトレイルとしてすばらしい環境があります。多湿な気候が雨を降らして壮大な滝を形成しています。エンパング山のティノール滝や双子滝のカイでは滝つぼで訪れた人は水遊びを楽しめます。ロコン山は火口まで2時間のハイク、家族連れで行くといいでしょう。マタハチキタやマナド・サファリツアーを利用するのもいいでしょう。彼らは毎日ウォーキングツアーを催して滝へと案内してくれます。ここは通年で川の水量が多いので、ラフティングに最適。ミナハサではミナンガ川を2時間にわたり下ることができます。出発はティンブカ村からタングクネイまで、3〜4グレードの急流ではアドレナリンが噴出し、緩やかな流れでは、カワセミやトカゲなどの生息するすばらしい自然を愛(め)でることができます。

 ラノヤポ川は北スラベシでもっとも長い川で、ラフティングツアーは3時間コースから2日間みっちりというコースもあります。ラフティング会社はワラニーアドベンチャー&WWや、マナド・ラフティングなどがお勧めです。ほかにもありますがインドネシア・ホワイトウォーター・フェデレーションに加盟している団体か確認したほうがいいでしょう。

 今回のこの魅力的な島に滞在し、すばらしい人々や大自然と出会い、心を癒(いや)すことができましたが、この島の魅力はまだまだ尽きず、私が経験したことはまだほんのわずかでした。そのためスラベシに戻らなければと決断したときは寂しさを感じました。

アクセス:

 マナドのサムラツランギ国際空港へはジャカルタから一日8本の便が出ています。ジャカルタ以外にもバリ、スラバヤ、シンガポール、クアラルンプールからのフライトも利用できます。www.garuda-indonesia.com

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