特徴

2015
Issue 56 (Summer 2015)
Bali Below
By Tim Rock, Yoko Higashide and Elaine Kwok

 バリがもつ魅惑のオーラはビーチやパワフルな波を超えて広がる。その神秘は海の中でも垣間見ることができる。

 

私は、バリの海に沈む第二次世界大戦のアメリカの沈没船を見ていた。エンジンルームは今や珊瑚で覆われている。バリ海峡で日本軍に襲われたこの船は、キャプテンが命からがらバリの人気のない東海岸に着いたものだ。すっかりボロボロになった船に追い打ちをかけるようにアグン山が噴火、そのものすごい力で海中深く沈んでしまったのだ。船首は海面のすこし下に見えるが、船体のほとんどは水深30mの深さに沈んでいる。

 

この朝、私は船を隠れ家に眠る巨大なコブブダイが朝日とともに姿をあらわすのを驚きとともに眺めていた。ビーバーより大きな前歯は、大きな珊瑚をも噛み砕く。のろのろとあらわれて海底のクリーニングステーションへと泳いでいく姿は、えもいわれぬ光景だった。

 

インドネシアはスキューバのメッカだ。豊かなコーラルリーフは世界有数で、コーラルトライアングルと呼ばれているエリアの一部である。ダイバーに人気なのは、ラジャ・アンパットや西パプアのチェンデラワシ湾、コモドやレンベなどで、見たこともないような色とりどりの海の生物を目撃することができる。

 

バリのダイビングスポットは有名ではあるが、東にせめぎあう競合のため影が薄いのは否めない。私がバリでダイビングをはじめたのは1980年代で、当時のダイビングスポットは混雑とは無縁だった。トランベンのリバティ号で一日ダイブして、ひとりののダイバーを見かけないこともよくあった。じっさいトランベンは、川のそばで牛が草を食べているだけの不毛な場所でしかなく、ホテルもなければ、ダイビングショップも店もなかった。いまにも壊れそうな丘の上に点在するがなければ、日陰さえないようなところだ。

時は流れ、海岸からのエントリーも可能なこの美しく歴史ある沈没船と、付近の深いドロップオフや、奇妙な生物でいっぱいのブラックサンドのスロープは、今や世界中のダイバーや写真家をバリの東海岸へとよびよせている。

すっかり人気ではあるが、トランベンをはじめとしたダイビングスポットは、いまでも美しく魅力的な場所なのでご心配なく。珍しい海の生物を見るのにバリの東海岸まで行く必要もない。つねに新たなスポットが発見され、道路や施設はどこも整備されており、このエキゾチックな場所にはすべてが詰めこまれているのだ。

珍しいモラモラマンボウを見たければ、バリチャンネルをわたって、ペニダ島かレンボンガンへ行くといい。潜るたびにウミガメと遭遇するのが夢ならば、バリとロンボクの間にあるギリ島へ。第二次世界大戦の日本とアメリカの沈没船にはトランベンとBanyuning Bayがある。海に沈んだ寺院とサンゴに覆われた神々を見るならペムテランを訪れてみてほしい。バリ北部や東のスロープへ行けば、ミミックオクトパスやゴーストパイプフィッシュがいる泥底のマックもある。ムンジャンガン島ではウォールダイブ、ペムテラン湾とパダンバイでもマックダイブができるし、西のヌサペニアに行けばドリフトダイブもできる。ごらんのとおり、選び放題である。

バリといえば、心地よい田舎の街なみに、熱帯の植物が生い茂るなかにある段々畑、そして碧い海が目に浮かぶ。巨大なインドネシア諸島のなかの小さなバリ島は、インド洋南部のバリ海とフローレス海に囲まれており、このふたつの海が豊かな海洋生物を育み、世界でもほかにはない多様な生物をを擁するダイビングスポットをつくりあげている。

バリは観光地としてだれをも楽しませてくれる。インドネシアには政治的に不安定な場所もあるが、バリはあの唯一の悲しいできごとのイメージを消す努力をつづけており、国外からのトラブルからこのパラダイスを守っている。

ダイバーの多くは、ダイビングサファリツアーでさまざまなスポットを訪れている。東海岸のパダンバイは眺めのよい忙しい小さな漁村で、ようやく最近観光客へと港が開かれたばかりだ。スポットへのアクセスもよく、白砂の海底は透明度がよい日には最高のダイビングを約束してくれる。

パダンバイの近くにあるブルーラグーンリーフは、初級ダイビングやナイトダイブ、長時間の撮影にも利用される。水深たった3mでホーンサンゴを見ることができて、そこから大きなボミー珊瑚やソフトコーラル、ゆらめくイソギンチャクが広がるエリアへとつながる。よく育ったプレートコーラルの繊細な先端は美しい紫やブルーで彩られている。

 

トランベンはバダン海峡の北東の海岸にある。カラフルなアウトリガーカヌーの先に、岩でごつごつしたビーチがあらわれる。リバティ号は第二次世界大戦の沈没船で、バリでもっとも人気のスポットとして知られる。

船のまわりの海流が栄養分を運び、珊瑚や息をのむような赤サンゴを育ててくれる。巨大なソフトコーラルと大きなバレルスポンジもここですくすくと育っている。ビッグアイジャックはここの住人で、ダイバーを怖がらないので、群れの中に入って一緒に泳いでみてほしい。ここにはほかにも、emperatorやバットフィッシュ、コロダイやブダイも多く生息している。

トランベンで数日をすごしたら、早起きして3時間ほど北西にドライブしてペムテランへ向かおう。大きなナポレオンフィッシュにちなんで名づけられたナポレオンリーフがある。深く浅く、朝でも夜でも潜れるスポットだ。

メンジャンガン島マリンパークのドロップオフは最高だ。まずはバットフィッシュが歓迎してくれる。壮大な珊瑚に、深いクレバスや割れ目。リーフにはところどころ小さな洞窟まである。フサカサゴや眠たそうな大きな目をした魚が休んでいるのをみつけられるだろう。

 

ここまで来ると、そろそろゆったりしたギリ島へ行きたくなってきたはずだ。ギリは白い砂浜、夜通し行われるレイブとおなじくらい、ダイビングも有名だ。ウミガメの産卵プログラムもあるこの島は、アオウミガメやタイマイとの遭遇を約束してくれる。

ギリエアーはカエルアンコウやタツノオトシゴなどのマクロライフ好きには最高のスポットだ。ギリ島には車もなく、どこまでも“アイランド”を感じさせてくれる島である。

ヌサペニダの沖には、オオコウモリでしられるバトゥルンブン(マンタポイントとして知られている)には、黒とグレーのオニイトマキエイが住んでおり、クリーニングステーションにやってくる。交尾や、エサを求めて近くの海流へあつまってくるのだが、最大50匹ほどを見たダイバーも多い。

 

6月から10月は巨大なマンボウも交尾のためにやってきて、ハタタテダイでいっぱいのクリーニングステーションへ行く。彼らの住処は深くてみつけにくいが、よいガイドと潜れば体重4トン、全長4.5mの魚を見るのは感動的の体験となるだろう。

 

バリにはほかにもたくさんのスポットがあり、好奇心旺盛なダイバーにはほんとうにおすすめ。インドパシフィックの多様な海洋生物を楽しんだ後に、火山の影でひと休みできる場所は世界にもあまりないだろう。 ✤

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