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特徴

2012
Issue 44 (Summer 2012)
Explore the World of Geocaching
By Rob M. Dupuis

  「もう!なんで見つからないんだろ?ここで合ってるはずなのに!」

「だよね!」

1m圏内にあるってなってる」

「俺のもそうだよ。グーグルマップはどう?」

「そっちでもぴったりここになってるんだよ。もしかしてアレ、マグられちゃったんじゃないの?」

 

探し求める“アレ”は、ペットボトルの蓋サイズの小さなもの。というより、むしろペットボトルの蓋そのものの場合も多い。“アレ”は今、街灯の光が当らない街の隅っこでさび茶色に変色しているかもしれない。近くの公園にある岩の下に巧妙にカモフラージュされているのかもしれない。今までに何度も真横を通り過ぎて、“アレ”の存在を知らぬまま、無意識に触れた事さえあるかもしれない。

 

秘密の世界のものである小さな宝物は、“マグル” (『ハリーポッター』に出てくる、いわゆる普通の人間を指す言葉)たちにとっては謎めいた未知の物体だ。映画みたいに魔法はかかっていないけど、負けないくらいのワクワクと冒険溢れている。

 

とはいえ、中にはあるのは小さなプラスチックの袋の中に、うまいことぎゅっと折りたたまれたログブックと呼ばれる紙だけ。このログブックにはなんの極秘情報も書かれていないし、魔法使いのまじないもかかっていない。ただ名前を書く為だけのものだ。

でも、実際そこに自分の名前を書き込む時の気持ちは、最高の気分だ。本当に見つけたんだという達成感に興奮の波が押し寄せる。こんなに色々言ったところで、自分で体験しなければ伝わらないかもしれない。。

靴紐をしめて携帯電話を持ったら、あっという間に素晴らしきジオキャッシングのはじまりはじまり。ちなみに靴は、ハイキングシューズがいいかもしれない。たとえ都会の真ん中に住んでいたとしても、念のため!

 

「マグられた?違うと思うな。“野菜サラダ”さんのログに、ほんの何日か前に見つけたって書いてあったから」

「ヒントは見た?」

「ヒントは無かったと思うよ」

「んー。もう一回ログ見てみるか。誰かがヒントを付け加えてるかも」

「そうだね。もう一回フォトギャラリー見てみよう」

 

アドベンチャー好きの“ジオキャッシャー”たちが、世界中に隠された“ジオキャッシュ”と呼ばれる宝箱に見立てた小さな容器を探し出す。このユニークな現代版宝探しゲーム、ジオキャッシングの発祥は12年前。アメリカ北西部に住む3人の男たちの、豊富な科学技術の知識と創造力から誕生した。デーブ・ウルマー、マイク・ティーグ、ジェレミー・アイリッシュに感謝!)

 

20005月のとある日、オレゴン州のビーバークリークに住むGPSマニアのウルマーに、ふと面白いアイデアが舞い降りた。ウルマーは早速いくつかアイテムを入れたバケツを用意して、オレゴンの森の中に隠した。それからオンラインGPSユーザーグループのページに隠し場所の座標を投稿し、GPSを使った宝探しの挑戦状を送ったのだ(まだ携帯電話が電話としてしか使われていなかった頃の話)。ウルマーは唯一のルールとして「宝物を取ったら、代わりになにか入れていくこと」をあげた。12年経った今でもこのルールは変わらない。

 

5月末になって、同じくGPS大好き人間のティーグが、ウルマーの隠したバケツの第一発見者となった。ティーグは、他にこのバケツを見つけた人たちと宝物を発見した時の体験と感動を共有するために、メーリングリストを作った。それから数カ月もしない内に、シアトルのウェブデザイナーのアイリッシュがこの遊びを世界中に広めることになる。

 

アイリッシュは、ティーグのサイトを見つけてすぐにGPSレシーバーを購入すると、あっという間にジオキャッシングにハマってしまった。2000年の9月、ティーグと共に今では一日およそ500万人がアクセスするGeocaching.comを立ち上げた。

 

「おっ、この写真見て。“キャッシュ近く”ってタイトルがついてる」

「オッケー、じゃあこの写真の撮影場所に立ってみたら?」

「それ良いかも」

「なんか見える?」

 

僕がジオキャッシングを知ったのは今年の1月のことだった。僕の友達で同僚のタッド・ベイル(ジオキャッシングのハンドルネームはTadVa)が、ネットサーフィン中に偶然サイトを見つけたのだ。本当のところを言えば僕は、最初疑ってかかっていた。僕たちは名古屋に住んでいるし、都会で宝探しなんてどうもしっくりこなかったのだ。

 

けれど、ふたりの息子カイ(9歳)とレイン(7歳)と一緒にやってみたら面白いかも、と思いなおした。天気の良い週末の午後に、家の中でWiiで遊ぶよりずっと楽しいはずだと思ったのだ。

一週間後、早速ブラックベリーにCacheSenseをダウンロードしてみた(この時はどんなものか分からなかったので、まずは30日間無料体験版に登録した)。Geocaching.comで無料のメンバー登録をしてみると、自宅のアパートから1キロも離れていない公園にキャッシュが隠されているという情報をゲットした。

 

次の週末、友達のあつしファミリーが遊びに来たので、みんなで一緒に初挑戦してみることにした。壮大な冒険のはじまりのように、僕らは大盛り上がりで家を出た。

1時間後。土だらけの手と膝に折れた心で帰宅した僕らが持ち帰ったのは、腰のこりとジオキャッシングへの疑惑だけ。探しものが一体どんなものかを知らないまま見つけ出すことがこんなに難しいものだとは。諦めそうになったけれど、せめて1個くらいは見つけてみたかった。一度乗りかかった船から降りるわけにはいかない。それに、無料体験期間がまだ3週間も残っている。

 

次の土曜日、Cachesense(僕の最近一番しあわせな時間つぶし)でサーチしてみると、名古屋城周辺だけで12個のジオキャッシュが隠されているという。すぐに息子たちに自転車のヘルメットを付けるように指示を出した。さあ、宝探しに出発するぞ!

 

「ちょっと待って、しゃがんでみて!あのベンチのボルトのとこ見てよ」

「1、   2……こっちは5個あるよ。そっちは?」

「4個しかない!」

「あったー!もう開けちゃっていい!? TFTC (Thanks For The Cache=「キャッシュを置いてくれてありがとう」という意味の、キャッシュオーナーに対するお礼の言葉)

「やったな!」

 

僕ら親子が最初に見つけたキャッシュは、名古屋城に隣接した名城公園フラワープラザに隠されていた(ジオキャッシュは、眺めの良い場所や歴史トリビアのあるような場所に隠されていることが多い)。サイトの「花を楽しむ拠点」という情報を頼りに、目を皿のようにして探し続けて、GPSの示した場所から3m離れた木のベンチの前まで僕らは辿り着いた。

 

ベンチにはふたりのお年寄り“マグル”が座っていたのだが、すぐに僕らのおかしな様子に気が付いて、何をしているのかと尋ねてきた。「宝探しをしているんです」とカイが丁寧に伝えると、ふたりは肩をすくめてもう話しかけてこなくなった。面白いもので、ベンチの下を必死に探したり花畑を凝視したり、どんなに変な行動をとっていても“軽い好奇心に続く無関心”これが大抵の名古屋マグルの反応だ。

 

ベンチの下に手を滑らせると僕の手が僅かになにかに触れた。もしかしてこれは!「カイ、レイン!」一番大きな囁き声でふたりを呼びながら、心臓がばくばく脈打ち始めた。もう一度ベンチの下に手を伸ばして、小さなペットボトルのキャップを引っ張ってみた。弱い磁石が取りつけられたキャップは簡単に外れて、ようやく見つけたこの初お宝を3人でじっくり眺めた。

ジオキャッシュは確かに存在したのだ。この小さな宝物は、誰かに偶然見つけられることもなく2年間もここで眠っていたのだ(偶然発見されることもごくたまにあるそうだ)。思わず息子たちの顔を覗きこむと、ふたりの輝く瞳に自分の満面の笑みが映っていた。

 

馬鹿みたいに聞こえるかもしれないが、僕らは今完全にハマっている。ひとつ見つけるとまたすぐに他の宝物を探したくなってしまう。65個見つけた今も、そのわくわくは変わらないどころかどんどん強くなっていく(その証拠に、www.cachestats.comによると、世界中のジオキャッシャーが見つけたキャッシュは65,000個以上だそう)。息子たちと、僕らもジオキャッシュを隠してみようかと考え中だ。ひとり1個ずつジオコインも用意した。

 

さあ、これであなたもジオキャッシングの世界に足を踏み入れたことになる。今度名古屋に来ることがあったら、庄内緑地公園を訪れてみてほしい。バーベキューをして、足こぎボートに乗って、景色を楽しんで、それから誰も観ていない時、こっそり素晴らしきジオキャッシングの世界を覗いてみたらどうだろう。

 

DupuisBoys”のキャッシュを見つけて、その中にカナダのジオコインが入っていたら、どうかカイとレインの為にご協力願いたい。ジオコインの目的地、カナダにある息子たちのおばあちゃんの家に、少しでも近いところまで運んではくれないだろうか。

 

お手軽になったジオキャッシング

GPSは、スマートフォンの進化のおかげで、ぐっと身近な存在になった。何万も出して手に入れる必要はもうない時代だ。GPS付きの携帯電話さえあれば、ボタンをいくつか押すだけで、数分後には準備万端なはず。アンドロイド、ブラックベリー、iPhoneはどれもジオキャッシング用アプリに対応していて、30日間の無料体験や日本語版もある。以下で上げるのはほんの数例だが、ご参考に。

 

アンドロイド:Geocaching.comはアンドロイドユーザー向けに現時点で9つのアプリを用意している。Geocaching.com を運営しているグランドスピーク社の公式アプリは¥800で、何千人ものグーグルプレイユーザーたちに人気だ。

Neongeoもグーグルプレイで人気が高いアプリ。宝探し中にいつでも安全にGeocaching.comにアクセス出来るジオキャッシングライブ機能搭載ながら値段は¥327とお手頃だ。

 

ブラックベリー:ブラックベリーユーザーの為の公式アプリは、トリンブル社のジオキャッシュナビゲーター。操作も簡単な実に良く出来たアプリで、¥1600で手に入る。予算的に厳しい方には、¥800のキャッシュセンスがお勧め。同じく操作が簡単で、機能も十分。

 

iPhone: グラウンドスピーク社のアプリがiTunesからゲットできる。iPhoneユーザーに一番人気のアプリで、僕の友達タッドも使っている。タッド曰く、「ここ最近で使った最も有意義な10ドル」だそう。

 

体験談から:

「この遊びの良い所は、このゲームをやっていなかったら絶対に行かないような場所に連れて行ってくれること。今までキャッシュが隠されていた所も、面白い地形だったり歴史だったり、両方だったり、必ず冒険のスリルがあるところだったよ。ある目的を持って出かけていって、宝探しへのわくわくと、見つけた時の興奮を楽しむ。なにが見つかるかは分からないし、限界がない。いつも新しいアドベンチャーが用意されていて、また違った場所に運んでくれる。それが醍醐味だね。それから、3歳の息子と一緒にやるのが最高なんだ。太陽の下で過ごす父と息子の大切な時間ってわけ。おまけに無料だしね」

-タッド・ベイル、ジオキャッシャー

 

ジオキャッシング用語:

宝探しのスリルと、発見した時の得意気な気持ちは、やってみた人にしか分からない。そんなジオキャッシャーの間でしか通じない頭字語や専門用語がたくさんある。Geocaching.comで説明されている用語の中から、ここでいくつか紹介しよう。

 

BYOP: Bring Your Own Pen

隠されたキャッシュは大抵すごく小さいサイズのものなので、ペンが入っていることは少ない。ログブックにサインする為のペンを持参するのをお忘れなく。

CITO: Cache In Trash Out

直訳すると「キャッシュを置いて、ゴミを持ち去る」。ジオキャッシングでは、キャッシュを置いた場所を来たときよりも美しくしていこう、というルールを掲げている。詳しくはwww.geocaching.com/citoを見てみよう。

DNF: Did not find

キャッシュが見つからなかった時に使う。僕が一番嫌いな用語だ。

Geocoin:ジオコイン

10円玉サイズくらいのコインで、プラスチックのヒッチハイカ―とでも言える。キャッシュからキャッシュへと移動されながら最終目的地を目指していく。

Muggle:マグル

ジオキャッシュを知らない人のこと。Geocaching.comの用語集で説明されているように、ジオマグルは大抵無害。

TFTC:Thanks for the cache

ジオキャッシュのエチケットとして、ログブックやオンラインのログに書かれることが多い。