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特徴

2012
Issue 43 (Spring 2012)
大島で月を走る
By 北村ポーリン  
月の上で走ったらどんな気分?東京にある活火山トレイルで疑似体験!
 
 
よく晴れた日、相模湾のビーチからはるか彼方にその島は見える。もやのかかった日にはぼんやり見えるだけだが、その島までは船でたったの1時間40分。東京から南に120kmのところに位置する火山島、大島の景色はどこを取っても素晴らしく、経験豊かなトレイルランナーでさえ感激してしまうトレイルでいっぱいだ。
 
ここがどんな場所なのか、まずは島の中心にそびえ立つ黒々とした巨大な火山を仰ぎ見てほしい。三原山(標高764m)と呼ばれる大島最大のこの山は、まるで神のごとく島のすべてを見下ろしている。
 
今は静かに眠っているこの穏やかな山は、およそ35年の周期で眠りから覚め、恐ろしい唸り声を上げ真っ赤な溶岩をまき散らす怪物に変身する。直近の1986年の噴火の際には、島民全員が島外に避難するほど大規模なものだった。世界でも最も活発な火山の一つに数えられる大島は、その独特の地形と島中を走るユニークなトレイルを創造し、破壊してきたのである。
 
それではどこから探検を始めようか?もちろんハイキングやトレイルランを山の麓から始めることも出来るが、島を訪れるたいていの人は、山頂近くにある二本の登山道入り口(三原山頂口と三原山温泉口)までバスまたはタクシーを利用する。ここから山頂まで足で登ることになる。
 
山頂は、基本的に海に向かって放射線状に伸びる複数のトレイルの中心部分にあたる。行ってみたい素晴らしいトレイルはたくさんあるが、ここではお鉢めぐりコース、表砂漠コース、テキサスハイキングコース、そして海岸遊歩道の4本のトレイルを紹介しよう。黒い火砕岩から緑の鮮やかな森まで変化に富んだ風景が楽しめて特に印象深いコースばかりである。
 
噴火口トレイル
お鉢めぐりコース(6km2 – 3時間)
 
 
大島で最も人気の高いトレイルの一つがお鉢めぐりコースだ。長くはないが、三原山頂をぐるりと回る素晴らしいコースである。一番簡単な行き方は、三原山頂口から。登山口まではバスかタクシーで向かう。登山口には火山の眺めが最高なじんまりとした茶店(御神火茶屋)や、バスでやって来る観光客のための土産物屋をはじめ、トイレとベンチの置かれた休憩所や、交番まである。
 
展望所からは、殺風景な荒野を横切る一本の道路が見える。ルートは簡単、坂を下って溶岩地帯の間を長く真っすぐに伸びる道をただひたすら進むのだ。山の麓から道はくねくねと曲がりながら山頂を目指す。距離は長くないが傾斜が急なので、ゆっくり歩いて時々後ろを振り返り、眼下に見える素晴らしい景色を確認するのを忘れずに。
 
頂上に着くと、ギザギザに尖った溶岩の塊の真ん中に鳥居が見えるはずだ。神聖な三原神社の入り口である。神社に向かって階段を降りて周囲を見渡すと、前回の噴火の際に溶けた溶岩が山から流れ出し、目に見えるものすべてを破壊したのが分かる。言い伝えによると、溶岩がこの神社に達した時、その手前で二手に分かれたためこの神社は無傷で残ったと言われている。言うまでもなく、この三原神社は大島に暮らす人々の信仰の対象となっている。
 
メイントレイルから外れ、山の中心に向かう脇道に立ち寄って、恐ろしい噴火口から蒸気が立ち上る穴を覗いてみるのも忘れずに。お鉢めぐりコースはよく整備されていて歩きやすく、火山の頂上からの360度の眺望は息を呑むばかりである。
 
黒砂漠
表砂漠コース(7 km 3 – 5時間)
 
 
三原山の麓の南側のエリアは表砂漠と呼ばれる。このコースにたどり着く方法で筆者がお勧めするのは、三原山頂から大声で歓声を上げながら駆け下りることである。
 
踏み固められた土のトレイルと違い、このトレイルはもろいザラ目状の火砕岩なので、身体のバランスを取りながら足を付いた時に砂利の上で滑らせるのが降り方の秘訣。
表砂漠では、その名の通り見渡す限り不毛な砂漠のような風景が広がり、これを見て心に浮かぶの「解放感」という言葉である。
 
山麓を時計と反対回りに歩くか走ってみれば、左手には堂々とした三原山が、右手には水平線に伊豆諸島の浮かぶ海が見え、同時に栄華を誇った1930年代の名残のローラースライドの古いコンクリート製の基礎の横を通り過ぎる。
 
当時の大島は人々や車がひっきりなしに行き交うような場所で、名な芸術家や作家、羽振りの良い漁師やお洒落な若い女性、それに多くの観光客がこの島を目指して集まった。
火山以外にこの島で人気が高かったのは、三原山を一気に滑り降りるローラースライドだった。当時スリルを求める者にとってはたまらないものだったはずだが、鉄不足に陥った戦時中に撤去されてしまい、今日私たちが見ることが出来るのはコンクリート製の基礎だけで、あとは想像を膨らませるしかない。
 
トレイルを歩いていると、その広大さに圧倒されて、やがてここが本当に日本なのか、あるいは月にいるのではないかと思ってしまうほどだ。空と山と景色、素晴らしい景色である。
 
頂上から海へ
テキサストレイル(7km3 – 5時間)
 
おそらく日本人がテキサス州はどんなところかと想像した時、この荒れ果てた土地が思い浮かんだのではないだろうか。名前の由来になったと思われる広大な牧場のような土地の頂上付近は黒い溶岩に覆われ草木一本さえ生えていない。だがこのトレイルの素晴らしいところは、三原山頂から海へ向かって下るにつれ、景色が大きく変わることである。
 
下り始めは黒々とした溶岩の海が永久に(少なくとも次の噴火の時までは)続くかと思われるような異様な風景が目につくのだが、やがてたくましい植物と背の低い茂みがそこかしこに見え始め、下るにつれて木の数も増えてくる。そして気づけば美しい緑濃い森の中を走っており、前の方から海の音が聞こえてくるのだ。
 
トレイルのゴールは大島公園。1万本以上のツバキの木が植えられ、1月から3月にかけて鮮やかな赤やピンクの花を咲かせる。一つのトレイルを下るだけで、ここまで多様な生態系を体験できるコースは世界中を探してもなかなかない。島の頂上から海まで一気に下るまでの劇的な変化は感動的である。
 
海岸遊歩道
海岸自然遊歩道(4 km 1 -2.5時間)
 
島の北東部にある海岸自然遊歩道は、ハイキングやトレイルランに打ってつけのトレイルである。なだらかな起伏のある曲がりくねった土の遊歩道は、崖の上から海を見下ろし、クロマツ並木の間や美しいツバキのトンネルの下を抜けていく。道は森の中を出たり入ったりして、時おり視界が開けて下の方に砕ける波が見える、
 
 
大島データ
 
大島は「大きな島」という意味だが、実際には横9km、縦15kmの小さな島で、伊豆七島と呼ばれる島群の中では面積としても人口の面でも最大の島である。伊豆七島は公式には東京都に所属するが、一度でもここを尾訪れた者は、ネオンの眩しい大都会とは全くの別世界だということに気付く。
 
大島は、初春に美しく咲く真っ赤なツバキの花と、夏期のダイビングスポットとして有名である。しかしここの中心は紛れもなく三原山で、この活火山は島の真ん中に鎮座している。2010年9月に、大島は正式にユネスコのジオパークに指定された。
 
総面積:               91 km2
広さ:                   東西9 km、南北15 km
周囲:                   52 km.
人口:                   8,483人 (2011年4月1日現在)
最高点:                三原山 764 m
 
 
情報
 
行き方
大島への最も速くて便利な行き方は、高速ジェット船だ。もう少し時間が掛かるが安いのは、東京を夜に出発し大島に朝到着する夜行の客船である。本当に早く行きたいのならば羽田から飛行機も出ている。
 
 
高速ジェット船
所要時間:             1時間45分
出発地: 竹芝桟橋(浜松町)、久里浜・熱海・伊東(神奈川県)、館山(千葉県)
 
大型客船
所要時間:             4 – 6時間
出発地:                  竹芝桟橋、横浜、下田
時刻表と料金については東海汽船HPを参照のこと Web: www.tokaikisen.co.jp/english/  
Tel: 03-5472-9999
 
飛行機
所要時間:              40                    
出発地:                  羽田空港
ANA 国内線予約 Tel: 0570-029-222  Web:  www.anawings.co.jp
 
現地の交通手段
 
 
バス
大島バス
Tel: 04992-2-1822  Web: http://oshima-bus.com
 
タクシー
大島交通  Tel: 04992-4-1392
長岡交通  Tel: 04992-2-2691
 
レンタカー
伊豆大島レンタカー  Tel: 04992-2-2691
トヨタレンタリース  Tel: 04992-2-1611
海洋レンタカー    Tel: 04922-2-2740
日本レンタカー    Tel: 04992-2-3039
 
レンタサイクル
ランブルレンタサイクル  Tel: 04992-2-3398
朝海貸し自転車      Tel: 03992-2-8407
 
宿泊施設
 
朝海館
東京都大島町岡田字助田58-1
Tel: 04992-2-8407  Web: www.asamikan.com
 
伊豆大島温泉ホテル
東京都大島町泉津字木積場3-5 
Tel: 04992-2-1673  Web: www.oshima-onsen.co.jp/index.html
 
温泉
季節により利用時間が異なるため、営業時間をウェブサイトでチェックのこと
 
御神火温泉
広々とした温泉施設で、25mプールとサウナも併設.
東京都大島町元町字仲の原1-8
 
元町浜の湯
露天風呂から夕陽が楽しめる。水着着用のこと。
東京都大島町元町字トンチ畑882
 
ウェブサイト
 
大島観光協会
 
大島町オフィシャルサイト
 
大島ナビ
 
伊豆大島ジオパーク
 
東京島

www.tokyo-islands.com