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特徴

2012
Issue 42 (Winter 2012)
人力世界横断トラベラー、今冬は日本に滞在
By Sarah Outen

Japan Traveler: Sarah Outen

人力世界横断トラベラー、今冬は日本に滞在。

3度の結婚の申し込みに40回のパンク(と10本の新品タイヤ)、毒蛇やヒグマたちとの遭遇と4度の過酷な海峡横断。そんな述べ12カ国にわたる7,800㎞の旅も、故郷まではまだ半分以上の道のりが残っている。

どんな大冒険だって、最初の小さな一歩から始まるもの。私の場合は一歩ならぬ一掻きから始まった。2011年4月1日、ロンドンにあるタワーブリッジの川 面にカヤックを浮かべ、即座に乗り込んだ私はテムズ川を下り始めた。フランスのカレーを目指して渡って行くのはイギリス海峡。私とパートナーは潮流に悩ま されて6時間毎に休憩を取り、タワーブリッジからビーチまで60時間をかけて110海里を進んだ。天候も崩れてきたため、フランスに辿り着くまでのんびり 休む余裕もなくなり、夜の10時から夜通し眠気と闘いながら荒れる海を漕ぎ続けた。

ようやくフランスに辿り着くと今度はカヤックを自転車に乗り換えて、そこからはひとりで東へ旅立った。ヨーロッパの馴染みのある風景を通り過ぎると、そこには新鮮なアジアの風景との出会いが待っていた。カザフスタンの広々とした平原地帯に、中国北部の灼熱のゴビ砂漠。北京からは左にハンドルを向けると、寒々とした森林地帯を抜けてロシア国境のある北へと走った。

6か月も自転車を漕ぎ続けて海との再会を果たした。再びカヤックに乗り込むと、久しぶりの感覚に私の体も心も少し混乱気味だった。それからはカヤックと自転車とを何度か乗り換えながら、ロシア本土から荒々しくも美しいサハリンを経由して一路日本を目指し、北海道へと海を渡った。

本格的な冬が訪れる前になんとか本州入りしなければというプレッシャーから、青森県の大間に辿り着くまで肉体的にも精神的にもひたすら自分を追いこんだ。そんな状態だったから、本州の地を踏んだ瞬間の感動は大きかった。これで少しはリラックスして、利根川河口にある千葉県の銚子、それから東京を目指せると思うとほっとした。そこで私の今シーズンの人力世界横断の旅はひと段落。再びパドルを始める来年の春まで、しばしの休息が待っている。

どうしてこの旅を続けるのか?
単純に、アドベンチャーが大好きだから。過酷な環境の中で自分自身の限界に挑戦し、大自然の中を旅することが。2009年には、カヤックでインド洋横断をしたけれど、オーストラリアを出発してモーリシャスに到着するまでは4カ月という時間がかかった。私はすっかり海の生き物になって、天候の変化やリズムに波長を合わせていた。自然に包まれている感覚は本当に素晴らしかった。人力のスピードで人生を歩むという体験はすごくユニークで、私にとっては、ただただ最高の感覚だ。

その横断中には、この次はもっと大きな冒険に出よう、そう決めていた。もう一度青い海に出て、そして今度は地球の緑色の部分も行くのだと。私の旅の中での大切な要素のひとつに、この経験を世界とシェアすることがある。特に子供たちと分かち合いたいのだ。私のホームページでは教育用の情報に力を入れていて、教材を誰でも見られるようになっているし、衛星電話を使って学校と中継を繋いだりすることもできる。これから日本語版ページも作成する予定だ!

自転車で日本横断

本州を急いで目指して、北海道はたった6日で通り過ぎてしまった。そのための疲れもあり、少々ぼやけた印象になってしまった。それでも十和田八幡平国立公園は素晴らしかったし、十和田湖と田沢湖で泳いだのも素敵な経験だった。ロシアの寒い日々の後の湖は、まるで南国みたいに温かく感じた。

東北の海岸線を南東に下って行った先。そこで出会った光景に息をのんだ。ニュースで見ていたとはいえ、実際にこの目で見た石巻の惨状と復興の取り組みの光景に胸が締め付けられた。穏やかで優しげな海を見つめながら、多くの命を奪い、風景を一変させてしまった自然の驚異的な力に驚くしかなかった。来月には、ボランティア活動をするために東北に戻る予定だ。小さな力だけれど、石巻の学校で子供たちの役に立つような何かが出来たらいいと願っている。

日本の舗装された道路と自然のキャンプ場の多さは、自転車の旅を快適にしてくれた。美しい風景や湖、そして親切な人々との出会いは忘れられないものになった。秋の穏やかな天候と紅葉の美しさは自転車トリップにはもってこいだった。ただ、自転車で旅をする人たちをあまり見かけなかったことには驚いた。

そして旅は続く・・・

太平洋横断という、この旅の中でも最も過酷な挑戦が待っている。5か月での横断が目標だけれど、7か月は海で過ごすことになると覚悟している。また海に出るのが今から楽しみだし、冬の間にしっかりとその準備を整えるつもりだ。太平洋をわたりきって西海岸に着いたら、冬の間にアメリカとカナダを自転車で縦断して、そして我が家に向かって北大西洋を渡るのだ。2013年の9月までに地球一周の旅を終えて家に帰られるといい、そう考えている。

プロフィール:サラ・オーテン
国籍:イギリス人。一番小さなカウンティ、ラトランド出身
年齢:26歳
学歴:オックスフォード大学、生物科学専攻
著書:“A Dip in the Ocean: Rowing Solo Across the Indian’’ Summersdale (2011年)
過去の冒険歴:オーストラリアからモーリシャスまでインド洋の単独横断(124日間、4,000海里)
スポンサー:メインスポンサーはアクセンチュア(サラのホームページに、冒険を支える全スポンサーが掲載)


旅の思い出:

最も興奮した瞬間は?: サハランのビーチでヒグマに遭遇したこと。風が強かったせいで、私たちが数メートル先を漕いでいくのに気付かなかったみたい。強くて美しい熊にあんなに近くで出会えたなんてとても特別な体験だった。

お気に入りのエピソードは?:ガオ・ユア・グアンっていう22歳の中国の男の子が、北京までの4,000キロの自転車の旅に一緒に行きたいと思い付きで言いだしたの。ガオは10キロ以上自転車をこいだことがなかったし、そもそも自転車さえ持っていなかったのよ! でも35日間かけて、一緒に北京まで辿り着くことができた。1日200キロを走ってね。ひとりのシャイな男の子が、立派なアスリートに生まれ変わったの。すごく素敵な思い出だし、良い刺激をもらった。

最も長い自転車の旅は?:266キロ。サハランの夜を、風雨を受けながら舗装されていない泥道を走ったの。とても美しい島だったけれど、固い路面がなかったのは本当に大変だった。

最も怖かった瞬間は?:カザフスタンで、牛の群れが食料とギアをムシャムシャしに私のテントにやってきたことがあってね。しかも牛たちに驚いた蛇がニョロニョロって私の自転車のフレームに巻き付いちゃった。牛が私の朝食のスイカとテントを食べるのを阻止するべきか、蛇を追い払うべきか、もう訳が分からなかったわ!

嫌な思い出は?:中国の大気汚染はなかなかのものだったし、砂漠の道路も走るのも大変だった。車の排気ガスやら砂埃やらにまみれて走るのはそう良いものじゃないわよね。トラックの交通量と言ったらそれはすごくて、ガオと私は石炭を運ぶ車がずらーっと並んだ40キロの渋滞を横目に走ったりすることも珍しくなかった。

サラを追いかけよう!
テクノロジーのおかげで、サラはブログを通して世界中から大冒険の様子を伝えることができるようになった。そう、外洋のど真ん中からでも! サラは今年の冬を群馬県のみなかみで過ごしているが、来春には銚子から再び海に出る。その模様はwww.sarahouten.com、ツイッター(@SarahOuten)、もしくはOJのファンページwww.facebook.com/japantravelerから!