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特徴

2011
Issue 40 (Summer 2011)
國母選手、JEARSを支援
By ティム・エックスリー

國母選手、JEARSを支援
ティム・エックスリー



地震当日、國母和宏選手は米バーモント州ストラットンで行われていたUSオープン・男子ハーフパイプに出場中だった。本来であれば大会だけに集中している時だったが、突然飛び込んできた日本からのニュースに、22歳のアスリートの心は祖国と東北の人々への想いでいっぱいになった。

「言葉を失いました。ニュースを見ながら、子供の頃以来初めて座り込んで泣きました。今すぐに日本の人々を助けたいという気持ちが溢れてきました。でも多くの人たちと同じように、どうしたら良いのか分からなかったんです」とカズはいう。

 「その時は競技の結果よりも、無事に終わらせ日本から向かっていた妻に早く会えることばかりを願っていました」

辛い心境の中、カズはUSオープンの2連覇となる優勝を見事に勝ち取った。ウィニングランでは両手を高く掲げ、パイプのボトムをまっすぐに滑り下り、日本に向けて静かな祈りのメッセージを送った。

 「この勝利と最後の一本は日本へ捧げました。優勝は最高に嬉しかったけれど、その瞬間に被災者の人たちに起こっていることに比べたら小さなことだと思いました。自分の日本への支援の意思表示とともに、イベントを見てくれている人すべてにそれを伝えたかったんです」

カルフォルニアに戻ったカズと妻の智恵さんは、被災した動物たちを救済する支援を行うことに決めた。動物たちを助けることが、東北地方の被災者の生活の支えに繋がる重要な鍵だと考えたからだ。日本地震動物救済会(JEARS)のサイトを見つけたふたりは、団体の活動目的と、政府や公共機関に属さない活動体制に興味を持ったと言う。



「JEARSの“まずは行動。事務処理はその次”という考え方に賛同したんです」とカズは語る。

5月初旬、新潟にあるJEARSの活動拠点を訪れたカズは、そこから福島県相馬市に向かい現場チームと合流した。

相馬市の港と海岸線は今回の津波で最も深刻な被害にあった地域のひとつだ。震災から2カ月経っていたが、どこの避難所も家を失った人たちでいっぱいだった。ペットと一緒に避難している人も多く、避難所の外や車の中の段ボールで寝ている動物たちもたくさんいる状況だった。

カズはJEARSのスタッフと一緒に避難所を訪ね、数時間かけて食料を届けながら病気のペットたちがいないかを調べて回った。

その後、相馬市から南相馬市に向かい、海沿いの地域に残された動物たちを捜して車を走らせた。津波で流された車や船があちこちに残され、がれきの山と化してしまった町を進んでいた時、突然1匹の犬が飛び出してきた。すっかり汚れきった孤独な小さな犬だった。

慌てて車を止め、グローブとリード、犬のおやつを持って外に飛び出した。確保する作業はただでさえ技術がいる。この異常事態の中、大きなストレスを感じている被災動物たちなのだから余計に難しい。興奮した犬に咬まれても平気なように、グローブと厚手の服は必需品だし、近寄って行く動作にも注意を払わなければならない。

経験豊富なボランティアスタッフがリードを持ち、犬が怯えないように体を低くしてゆっくりと近づいていく。どうやらこの犬は“自分を助けに来た人間”として認識してくれたようで、すぐにリードを付けることに成功した。自分から大人しく檻に入り、寝床とご飯が待つ保護施設へと連れていかれることになった。

あっという間に日が落ち、今日の救援活動は終了。集合と同じように、解散場所も建物の中ではなく道端だ。JEARSのスタッフたちがカズに感謝の意を告げ、この日は解散となった。

保護施設では、動物たちへの餌やり、ケージの掃除、支援物資の仕分けとまだまだ仕事が山積みだ。今日もまた、熱心なスタッフたちとカズのようなボランティアたちが協力し地道な努力を続けている。動物たちの救済と家族の絆のために。



「いつも一緒に」

東日本大震災の直後から、被災者に向けてたくさんの善意と支援の手が差し伸べられ、多くのNGO団体やボランティアたちが支援活動のために東北へ向かった。

ほとんどの団体が人間を対象にした支援を行う中、家族の一員であるペットたちの支援を行う小さな団体があった。たった1匹の犬や猫が唯一の家族だという人も沢山いるのだ。

ノーキル(引き取った動物を殺処分しない)の考えを軸にした3つの動物愛護団体が、長期的な支援を目指し迅速な活動を始めた。震災の翌日には津波被害を受けた地域からの動物救済や食料支援物資の運搬、そして家を失った飼い主たちの支援を目的とした日本地震動物救済会(JEARS)が設立された。

数日後には、ニセコにあるブラック・ダイヤモンド・ロッジの協力を得て車と運転手の手配が付いた。バンだけでなく、ロッジスタッフのトビー・ウェイミラーが運転手としてやってきてくれたのだ。さらに外国人のボランティアが作成したホームページやフェイスブックを見た世界中の人々から沢山の義援金が寄せられた。

救済チームの精力的な活動によって、これまでに何百匹もの動物たちが保護された。さらに2台の車が寄付され、福島県磐梯山近くの猪苗代町と仙台市にそれぞれ仮設保護施設が建てられた。現場チームが、寄付された食べ物を届けながら動物たちの保護活動に尽力している。

チームの地道な日々の活動や保護活動や保護施設の管理に関わったたくさんのボランティアの力なしでは、なにひとつ成し得なかったことだろう。

JEARSメンバーの紹介:

JEARSは、以下の動物愛護NPO3団体による協力のもとに設立された。 http://jears.org
(敬称略)
Japan Cat Network:
代表者:デイビッド:ワイベンガ、スーザン・ロバーツ www.japancatnet.com

ハート徳島
代表者:スーザン・マ―サー、東條仁志 www.heart-tokushima.com

アニマルフレンズ新潟:
代表者:イザベラ・ガラオン青木 http://www.afniigata.org