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特徴

2011
Issue 40 (Summer 2011)
MontBell Makes a Difference
By By Ross

TOHOKU

MontBell Makes a Difference
By Bill Ross

アウトドア製品のブランド、モンベルは、3月11日のあの地震と津波によって壊滅的な被害を受けた数多くの企業の中のひとつだ。

 「私たちは仙台に3つの店舗を持っていましたが、そのうち仙台港近くにあった店舗は、津波で完全に破壊されてしまいました」と言うのは創業者でCEOである辰野勇氏。



 「私どもの従業員は、ありがたいことに全員無事に避難できました。でも泉地区にあった店舗もやはり地震の被害を受け、無事だったのは仙台市の中心部、青葉通りにあるフラッグシップ・ストアだけでした」

そんな状況にもかかわらず、自社の店舗を再建するより先にモンベルが優先させたことがあった。それは16年前の阪神淡路大震災の際と同じこと、すぐに従業員たちを動員して、被害に遭った人々のもとへ救援物資を届けることだった。

「最初は仙台のフラッグシップ・ストアを救援のための本部にしようと考えていました。ところが実際にはそれでは広さが足りないことが分かったのです」と辰野氏は語る。さらには原子力発電所の問題も加わり、正確な情報はほとんど入ってこないなか、山形の天童市に移動して作業を行うことにしたのだという。仙台からは40分から50分程度の距離にある上、辰野氏によれば、部分的とはいえ蔵王連峰がシールドの役目を果たしてくれると考えたからだった。

阪神淡路大震災が起こった1995年、モンベルは現在よりもずっと小規模な企業だった。それでも彼らは寝袋2000個とテント500張、その他たくさんの物資や人手(従業員とボランティアを含め)を提供した。そして今回は、当時とは比較にならないほどの規模で救援活動を続けている。

市内にベースキャンプとなる場所を確保し、使用されていない大型のエレクトロニクス工場を借り受けることもできた。

「私たちはそれから、全国の75店舗でお客様が寄付してくださる支援物資の受け入れを開始しました」と辰野氏。

 「国は一般の人たちから直接の物資提供を受けようとしませんでしたが、私たちのところは違います。毛布でもインスタント・ラーメンでも、私たちの店ではどんなものでも受け入れました」

登山の経験や知識を活用した辰野氏は、被害が甚大だった宮城県石巻市の内陸にある登米市に“アタック・キャンプ”を設営した。彼によれば、登米を経由して、初めの1ヶ月で300トン以上の救援物資がこのエリア全域の人々に届けられていったという。

 「また私たちは3,500万円を超える義援金を集め、そこから灯油、下着類、衛生用品やおむつなどを購入しました。そしてそれだけではなく、赤ちゃんからお年寄りまですべての人に、ひとり10,000円という現金をお渡しすることもできたのです。私たちからのメッセージを添えて」



モンベルは今後さらに長い期間を見据えた活動にも取り組んでいる。「先週も私はその地域を訪れていたのですが、その際、登米に2,200坪の土地を購入しようと決意したんです」と辰野氏は言う。

 「地元の木材を使って、地元の大工さんたちの手によって、そこにグループホームを建てようと思っているんです。太陽光発電とバイオマスのウッドチップによる暖房システムを取り入れ、地域のコミュニティからのサポートも受けられたら、と考えているところです」

辰野氏や従業員たちは、国から提供される仮設住宅にひとりで暮らしている人々が、どれほど大きな孤独感を抱えているかをすぐ近くにいて実感するという。だからこそ、グループホームには親を亡くした子どもたちや片親のもとで生活する子供たち、そして一人暮らしをする人たちを中心に入居してもらいたいということだ。

 「子どもたちと一緒に生活することは、お年寄りや一人暮らしをする人々にとってとてもいい刺激になるはずですし、子供たちにとっても、年配の方々が惜しみない愛情を注いでくれることが大きな支えとなっていくはずです。お互いがいい影響を与え合い、いい関係を築いていけると思うんです」



加えて辰野氏は、今回の災害で住む場所を失くしてしまった人たちの住宅として役目を終えた後は、その同じ建物を次はモンベルの山村塾(ネイチャー・スクール)として利用することも考えているという。

「といっても、これはまだまだ第一歩だと思っているんですよ」と辰野氏。

「現在はまだひとつのホームとして建設しているだけですが、将来的には次に200から300ほどのホームが集まるコミュニティーを作れたらと考えているんです。もちろんそこは原子力エネルギーに頼ることのない、太陽光その他の自然エネルギーを動力源にした場所にする予定です。すでに登米市長が支援を約束してくださっていますし、地元はもちろんのこと、海外の組織などにも支援をお願いすべく、現在もいろいろと準備を進めているところなんですよ」