特徴

2011
Issue 40 (Summer 2011)
Yap On the Move
By Tim Rock & Yoko Higashide

Yap On the Move
Sharks, mantas and more in western Micronesia
Story & photos by Tim Rock & Yoko Higashide

私はいま、ミクロネシアのヤップ島にいる。ここは太平洋の西、もっとも遠く人里離れた場所にあるリーフのひとつだ。ヤップ島はサメ科の仲間でプランクトンを食べるあの優雅なマンタ・レイが多数生息していることで知られる場所。今からバーティゴ・リーフでのスキューバダイブに出かけるところだが、実は私のお目当てはマンタではなく、その親戚でもあり、同じくそこに多くが暮らしているグレイ・リーフ・シャーク(オグロメジロザメ)だ。



水中を下っていくと、真っ青な海の中からさっそく一群が現れた。青い深淵の中に50頭ほどが群れている。それ以外にも、クルーズ中のブラックチップ・シャーク(ツマグロ)や不思議そうにこちらを眺めるホワイトチップ・シャーク(ネムリブカ)などもいて、まさにシャークだらけ。まだまだ他の連中も現れそうだ。

ヤップ島の海と陸には見どころがたくさんある。美しい景色を持つ小さな島で、近隣の他の島よりも標高の高い丘が多く、現在でも島民は一部で大きな円形の石を貨幣として使っている。また、女性はいまでも草や葉で作られたスカートを身につけ、男性は“thu’us”と呼ばれるふんどし状の腰巻きで村々を移動する。リーフもまた自然のままに残された数少ないもののひとつで、渓谷のように険しい深海のリーフチャンネルにマンタ・レイの家族やシャークの群れが多数暮らしている。

この10年ほどの間に、ヤップ・ダイバーズ(www.mantaray.com)のビル・アッカーなどのパイオニアたちがレベルの高いダイビング事業をスタートさせたことで、この素晴らしい場所が世界に知られるようになった。ミクロネシアの西端に位置するこのヤップは、現在も文字通り辺ぴな場所そのものだ。日本からだと、まずグアムまで飛んでから、週に2便しかないフライトに乗ってようやく到着する。



開発がゆるやかで人口も少ないため、コーラルリーフへのダメージは現在でもほとんど見られない。こうしてヤップ島は太平洋でも有数の美しく豊かなコーラルを誇る場所になっているのである。

マンタに出会える場所という顔以外にも、リーフ・シャーク・ウォッチングを楽しめたり、歴史に名高いオキーフス・アイランド近くでは多数生息するカラフルなマンダリン・フィッシュが交尾を行う様子も見ることができたり、急斜面のハードコーラル・サイトを見たりと、見ごたえのある新たなアトラクションもいろいろある。さらにこうした場所にはブラックバー・バラクーダの大きな群れや、ハンマーヘッド・シャーク(シュモクザメ)の群れなども集まってくる。

またヤップ島は海での食物連鎖を垣間見る場所としても最適だ。リーフエリアの海中にはグレイ・リーフ・シャーク、シルキー・シャーク、シルバーチップ(ツマジロ)、ホワイトチップ、レオパード・シャーク(トラフザメ)、ブラックチップが生息している。場合によってはホエール・シャーク(ジンベイザメ)、オーシャニック・ホワイトチップ(ヨゴレザメ)、タイガー・シャーク(イタチザメ)といっためったに見られない種類が現れることもある。

青い水中をクルーズするグレイ・リーフ・シャークを見るには、バーティゴ・リーフが一番おすすめだ。このリーフではシャークが獲物を食べる様子を目撃できることもあり、ダイブボートがリーフに近づく音を聞いて勘違いしたシャークたちがすっ飛んでくることもある。また大きなグレイ・リーフ・シャークや、時に現れるブラックチップなどは、水が円柱状になった場所で不気味な動き方をしながら移動することがある。どこからともなく、突然深い青の中から10頭以上のシャークが姿を見せ、薄いウォールに沿ってダイバーたちのダイブに付き合ったり、最後までそこにとどまったりするのである。



グレイ・リーフはヤップ・コーナーと呼ばれる新たなサイトでもよく見られる。ミル・チャンネルの入口部分のはるか北端にあるこの場所には、グレイ・リーフやイーグル・レイ、マンタ、ジャックの群れなど、多くの種類が姿を見せる。カレントが動く際には、ブラックバー・バラクーダやシャープノーズ・バラクーダが現れることも。満潮時なら、ダイバーはそのまま太平洋のグランド・キャニオン、左右に100フィートのウォールが立ちはだかるエリアまで漂っていくことが可能だ。そこのチャンネルへ入る途中に身づくろいのできるスポットがあり、シャークたちが列を作るようにして並び、恐れを知らない小さなベラが寄生虫などをキレイに食べてくれる。一方マンタ・リッジと呼ばれる場所では、ボックスのようになっている深い谷の浅い部分に、60匹ほどのグレイ・リーフ・シャークの子どもが集まり、グルグルと回る様子が見られるが、彼らはたいてい興味深そうにダイバーたちの方へ近づいてきてくれる。

大型のシャークの方は、このマンタ・リッジ近くの深い谷のウォールに沿うようにしながら、同じようにサークル状に回っていく。朝の太陽が海の中へ入ってくる時間帯には、レイがその日を浴びるために集い、その下からはシャークが威嚇しながらも興味深げに彼らを眺める光景と出会える。

コロニアの町の方向へ行けばクレッセント・リーフがある。ここも特別なシャークを目撃できるところだ。バラクーダが多く生息し、カトルフィッシュ(イカ)も頻繁に登場。運が良ければ青い海の中から姿を現すハンマーヘッド・シャークの群れに出会うこともある。通常はもっと深い場所にいる彼らは、時折その近くにあるギャバック・チャンネルの入口付近に寄ってくることがあるためで、安全な深度内のダイブでもその姿を目撃するチャンスがある。これもヤップならではの珍しい体験になるはずだ。



そしてさらにヤップ・キャバーンズではバンプヘッド・パロットフィッシュの群れ、ライオンフィッシュ・ウォール、東側の島にあるハードコーラルの美しいリーフではビッグアイやライオンフィッシュ(ミノカサゴ)もいる。他にも探せば様々な発見が待ち構えている。南側へ行けば人懐こいスピナー・ドルフィンもいるはずだし、その近く、グッフヌーズ・ミニウォールも時間を忘れるほど楽しい場所となるはずだ。

リーフを巡っているうちに1週間ほどはすぐに過ぎてしまうが、それでも訪れるべきスポットはたくさん残ってしまう。もしリーフでの出会いが少ない場合は、マンタ・レイをメインにして動けばいい。

よくたとえられることだが、ヤップのチャンネルでマンタを見かけたら、そこにはきっと、ドリフトダイブを1度か2度はするべき価値があるほどに多くの生物がいる。イーグル・レイやシャークやカメが加わっていれば、可能性はそれこそ無限大だ。

ヤップには大きく分けて2タイプのダイビング方法がある。
アウターリーフには太平洋のみならず世界有数の豊かで多彩なハードコーラルが群生している。東側の沿岸には大きなコーラルガーデンがあり、小さくて珍しい海の生物がたくさん集う。西側は険しい傾斜のある洞窟になっていて、バラクーダ、バンプヘッド・パロットフィッシュ、グレイ・リーフ・シャークの群れなど、大型で遠洋性の生物が多く暮らす。

もうひとつはチャンネルでのダイビングだ。ヤップのインナー・チャンネルの数々はマンタ・レイの生息地として有名な場所。もっとも視界が良くなるのは満潮時のダイブだ。干潮時には近くにあるマングローブから栄養分がチャンネルの中へと流れてくるため、視界は落ちる。だが、それでも身づくろいスポットへ行けばマンタはほとんどの時間帯に姿を見せている。とはいえやはり、彼らがクリアな青い水の中にドラマチックに現れ、こちらのすぐ近くまで近寄って来てくれるあの体験をぜひとも味わってみてほしい。



もともとマンタはこうしたチャンネルに住んでいるわけではなく、身づくろいや食事や交尾のためにやって来る。マンタの様子をフルに目撃したいのなら、11月から4月の終わりごろまで続く交尾の時期がベストだ。島の周囲にはたくさんのチャンネルがあるが、もっとも有名な場所はミル・チャンネルだ。それこそ列になってマンタが姿を見せ、交尾の儀式の一部である“アクアバティック”のような動きをする光景は壮観である。

アドベンチャー好きなダイバーなら、ヤップに飽きることはない。エンドレスに海の秘密を見せてくれる場所だからだ。ベストサイトと呼ばれる場所、それに新しい場所も含めて、西太平洋に暮らすあらゆる海の生物を最高のコンディションで見ることができる場所、それがヤップという魔法の島なのである。

トラベル・インフォ

ヤップ州はミクロネシア連邦の4つの州の中で一番西に位置する。ヤップ州にはいくつもの島と環礁があり、太平洋の外洋に向けて数百マイルにわたって延びている。島はグアムの南西500マイル、パラオ共和国から北東に300マイル、フィリピンからは東へ800マイルの位置にある。

コンチネンタル航空(www.continental.com)が週に2便(火曜日と土曜日)、グアムからヤップへ就航しており、パラオからも週に1便(日曜日)就航している。グアムからの所要時間はおよそ1時間5分、パラオからはおよそ45分のフライト。

ヤップに入国するビジターは有効期限内のパスポート、復路のエアチケットが必要で、滞在期間は30日間まで。イミグレーションの規則は国によって異なるので、旅行前にホテルやツアーオペレーターに確認しよう。

Beyond the Blue

ヤップ島ではマングローブの中や巨大なインナー・ラグーンを進む最高に素晴らしいカヤック・ライドなども楽しめる。インナー・コーラルリーフでのスノーケリングも楽しい。

また島中を通るいくつものハイ・トレイルを通って、オフロード・バイクを楽しむ方法もある。空港近くの小ぶりなフレッシュウォーターのピットでライドを終えれば、そのままそこに入ってリフレッシュも可能だ。さらにヤップにはハイキング・トレイルも多く、その途中ではトカゲやヤップ・モナークを含めて数多くの生物に出会うことができる。

Manta Fest

2011年8月27日から9月11日までは、第5回マンタ・フェスト・フォト・フェスティバルが開催される。水中写真に興味があれば、ぜひこの機会にフェスティバルを訪れ、世界のトップ水中カメラマンの技をチェックしてみてほしい。ちなみに私ティム・ロックも出品する。最高のダイビング以上に楽しい時間を過ごせるはずだ。このフェスティバルはホテルやダイブショップなども協力、島全体が盛り上がる大型イベントだ。www.mantafest.com