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特徴

2011
Issue 39
Yama Girl Revival
By Ginger Vaughn

山ガール・リバイバル
ジンジャー・ヴォン

“日本百名山”の完登を志してから、もうすぐ10年が経とうとしている。実はこれまで91の山頂に立ったところで、記録は止まってしまっていた。けれど、登山路に増え続ける山ガールたちに背中をおされた私は、残りの9座を目指して再び登り始めることにしたのだ。

百名山とは? なぜはじめ、なぜやめ、なぜまた登るのか?

百名山登山をはじめた2002年夏の写真を見返してみると、いろんな思い出がよみがえってくる。田舎町の風景や親切な地元の人々、それから、その頃の自分のこと。

きちんとした計画があるわけじゃないけれど、やる気と好奇心だけはいっぱいのひとりのハイカー。百名山へのチャレンジは、日本をより深く知るための、自分自身への挑戦だったのだ。



それから2年前のこと、JETプログラムの仕事のために横浜に越してきた私を、同僚がハイキングに連れていってくれた。電車で2〜3時間のところで、トレイルにはたくさんの登山客がいて、特に装備ばっちりの元気な中高年ハイカーの多さには驚いた。それからすれ違うときに飛び交う「こんにちはー」と「がんばって!」のあいさつにも。

森の静寂と美しい景色、それから満足気な筋肉痛とが、私をすっかり山登りの世界にひきこんでしまった。もっとあの素晴らしい景色が見たくなり、新しいトレイルを求めてもっと高い山に登りたくなった。数ヶ月後には、防水の登山靴やフリースとシェルのレイヤー、バックパックに軽量の調理ストーブ、そしてコンパクトなテントを手に入れていた。ひと通りのギアをそろえ終わった私は、準備万端とばかりに、本物の山々を目指し北アルプスがそびえる中部地方へと向かったのだ。

その頃、1964年に登山家の深田久弥が出版した山岳随筆『日本百名山』の存在を知った。 山の標高とは関係なく、独自の基準によって選ばれた100の名峰リストである。まずひとつ目の基準は、山の品格。誰が見てもその美しさに感嘆する山であること。ふたつ目に、山の歴史。昔からそこに住む人間と深い関わりを持った山であること。最後に、山の個性。他にはない、その山だけの独自な魅力があること。



“日本百名山”の存在を知った時には、偶然にも百名山のうち17の山に登頂済みで、そのほとんどは長野県のアルプスの山々だった。そして横浜での仕事の契約が切れた時に、私はある計画を思いついた。1年間がかりの山登り大計画だ。貯金は使い果たすことになるけれど、かわりに百名山完登のごほうびがもらえる。北海道を自転車で周って、残りはヒッチハイクで移動すれば、1日あたり1,500円の予算で十分やっていけるはずだ。天候を考えても、3日に1山のペースで登れれば楽勝だ。なんて素晴らしいプランだろう! こうして2002年の秋、すでに達成済みの17の山をリストから外し、バックパックに生活の全部を詰め込んで、百名山アドベンチャーに出発した。背中にはバックパック、手にはカメラ、頭は刈ったばかりの丸坊主のいでたちで。

1年で100山。いたってシンプルな計画だ。北から南へ、四季を追って。冬の間はひと休みして、春を待つことにしよう。目指す百名山は、日本全土にこんな風に散らばっている。

   北海道:9山
   本州:83山
   四国:2山
   九州:6山

北海道での最初の1ヶ月は、重い荷物を背負いながら自転車で向かう、登山口までの悪路に悩まされた。それから自転車を拾うために同じ登山路を戻るのも面倒で、ヒッチハイクの移動のほうがずっと調子がいいと考え直していた。それにそろそろ話し相手もほしかったのだ。



2002年夏の時点で、まだ28山しか登れていなかった。移動ばかりの生活に疲れ、残り少ない予算もストレスになってきた私は、しばしの休憩をとることにした。スキーリゾートにコモり、お小遣いを貯めながらスノーボードを楽しんだ4ヶ月は良い気分転換になった。
雪が融け、あっという間に冬は過ぎ去り春がやってくると、百名山計画は再始動した。

1年かけて52山を登ったもののペースは落ち気味で、予定どおりとはいかなかった。けれど、山村での素敵な人々との出会いはどれも特別で、それだけでもこの挑戦を続けようと思えた。ただし、もっと実りあるチャレンジにするためにも、もう少しゆっくり時間をかけていくことにした。そうしてあっという間にもう10年が経とうとしている。残りの9つの山頂には、今年の春と夏で立つつもりだ。全国の山ガールのみなさん。どこかの山で会った時は、応援よろしく!


ところで、山ガールって?

春が来て、登山道を華やかに彩るのは、草花に生き物、それから山ガールたちだ。大丈夫、そんなに目を凝らして探さなくても、すぐに見つかるはず。心の内にいる山ディーバがしめす方向を見るだけで良い。そう、登山道は山ガールたちのファッション・ショー会場なのだ。

明るいピンクや、派手でファンキーな水玉やストライプ柄が今年の流行りだ。山登り用のスカートも、カラフルなタイツやレッグウォーマーでおしゃれ度をアップするのにはかかせないアイテム。このブームに乗って、若い女性たちがアウトドアにはまりつつあることは間違いない(もちろん事前にはデパートでたくさん買い物をして)。たとえ実用的じゃないとしたって、実に楽しくて良いじゃない!



ジンジャーおすすめの山ガールアイテム:

1)    ハイキング用ミニスカート
2)    派手なタイツ(ストライプがお気に入り!)
3)    カラフルなカラビナ(いろいろぶらさげるのに便利!)
4)    軽量のアルパカ帽子(8年前に買った私のは今も現役)
5)    くしゅっとなる、アーガイル柄のレッグウォーマー
6)    カラフルなレインウェア
7)    かわいいバンダナ(ネックウォーマーにもフェイスタオルにも変身)


道具はそろった! でもどこに行こう?

山登りには興味津々だけど、どの山を登ったらいいのか分からない、という人も多いはず。そんな山ガールたちにおすすめの山を、レベル別に3つずつ選んでみました。

 きれいな景色を楽しみながら、自慢のファッションを見せつけちゃおう! ただし最低限の持ち物だけは、ちゃんとバックパックにつめるのを忘れずに。ウォーターボトル、重ね着できる防寒着、雨具(上下)、正確な防水マップ、ヘッドライト、防水登山靴、スナック、手袋、サングラス、それからカメラ。



初心者向け:


登山をするのは初めて、という人にぴったり。

1)    阿蘇山(熊本県)
2)    筑波山(茨城県)
3)    開聞岳(鹿児島県)

筑波山は標高が低く、日帰りハイクにちょうど良い。体を動かしついでに、お寺や文化財などが建ち並ぶ土浦市の古い町並みも楽しめる。一年を通して登りやすいが、冬にはかなり寒くなる。特に山頂付近では防寒ギアが必須。

中級者向け:

もう少し距離は歩きたいけれど、そんなにキツイのはちょっと、という人にぴったり。
1)    岩木山(青森県)
2)    恵那山(岐阜県・長野県)
3)    早池峰山(岩手県)

岩木山を登るつもりなら、ぜひ前日入りして弘前城と城址公園を訪れてほしい。宿泊は弘前駅から徒歩15分の弘前グランドホテルがおすすめだ。登山後には、登山口にある百沢温泉郷で疲れを癒そう。世界一おいしいとも言われる青森りんごも食べておきたい。

上級者向け:

泊りがけの登山の準備ができた人に。
1)    幌尻岳(北海道)
2)    槍ヶ岳(長野県)
3)    宮之浦岳(屋久島、鹿児島県)

幌尻岳への登山は、服を濡らしたくないという人にはおすすめできない、ハードなコースだ。川を渡る箇所もいくつかあるので、防水靴とウールソックスの着替えは欠かせない。雨や川の水量によってはびしょ濡れになることもあるので、濡れないように密閉バックに入れるなど、防水対策はしっかりしよう。山小屋はたったひとつだけなので、事前に予約を入れておくか、テントと暖かい寝袋が必要だ。