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特徴

2010
Issue 32
ベストラインへ空からアクセス
By Neil Hartmann

(ヘリボーディング依存症)
 
僕の名前はニール・ハートマン。自称「ヘリコプター依存症患者」だ。

実は僕、中毒にでもかかったかのように、ヘリコプターに乗るのが好きなんだ。なかでも最高なのは冬にヘリコプターでスノーボードへ行くこと。事実を認めることが依存から立ち直る一歩というけれど、僕の場合にも当てはまるのかどうかさだかではない。なぜなら、とてもひどい依存症で、ヘリボーディングをするためにニュージーランドまで行ったこともあるほどなんだから。

この中毒はお金がかかる。アラスカに行ったときは$6,000ドルも使ってしまった。これからも虫が騒いだら、ためらうことなく同じことを繰り返すだろうと思う。夢にもヘリコプターは出てくるし、普通の人と同じようにハイクアップするのを拒んだり、スキー場のバーでは満面の笑顔を浮かべながらクレジットカード会社に電話して、自分の利用枠金額を確認したり。いつもヘリに乗ることを考えてしまう禁断症状まで発症している始末だ。

依存症に苦しむ人をからかう気はないけど、ヘリボード依存者の更正施設があるなら入りたいくらいだよ。でも冬はスノーボードで忙しいから出席できないけど。

ヘリストーリー
垂直飛行の最も古い記述は4世紀(400BC)、中国にあったらしい。その後1480年代、レオナルド・ダビンチが人類最初のヘリコプターをスケッチした。彼はそれを「エア・スクリュー」と呼んだ。ありがたいことに1861年、考古学者ギュスターヴ・ボントン・ダメクール男爵が「ヘリコプター」という言葉を発明。それで無ければ、僕は今頃エア・スクリュー依存症と呼ばれているところだった。エア・スクリューは全く違った意味も持っている。詳しくはウィキペディアにゆずるので、マイル・ハイ・クラブの項目を見てみてね。

オーストラリア人のマウンテンガイドでカナダに移民したハンス・グモサーにも感謝しなくてはならない。1965年にヘリ・スキービジネスを始めたのは彼だとされている。この50年でヘリ・スキーのオペレーションは世界中に広まった。お金持ちの趣味といわれるけれど、他の趣味同様にだれでも始めることができるものだ。そして一回はじめてしまうと、お金があろうと無かろうと夢中になってしまうに違いない。

ジャパン・ヘリ
日本では様々な航空法があること、手続きが複雑なことなどから、ヘリスキー産業は大きな成長をみせていないが、それでもいくつかのスキーリゾートで体験することができる。ヘリスキーについて何も知らなければ、基本的に2種類のオペレーションがあることだけはチェックしておこう。

ひとつは先に述べたグモサーによって開発されたカナダモデルで、ヘリコプターは移送手段として使われ、一日に5−10回ほどゲストを頂上まで運ぶ。北海道のアルファ・リゾート・トマムではこのオペレーションを取り入れて成功している。もしお金があり、友達とディープパウダーのマウンテンを独り占めしたいなら、このシステムがぴったりだ。

もうひとつのモデルはヨーロッパスタイルで、ヘリコプターをタクシーのように使い、好きな場所で降ろしてもらい、また同じ場所に迎えにきてもらうというもの。春にスノーボードトリップで白馬エリアへ行ったとき、栂池高原でこのシステムのヘリコプター会社があるのを知った。

長野の北西に位置する栂池高原は、近隣の八方尾根や白馬47をはじめとした規模の大きいリゾートに注目を奪われ、白馬でもっとも知られていないリゾートといっていいだろう。つまり、人が少なく、快適なパウダーランができるということだ。また栂池高原には初心者から上級者まで、それぞれのレベルに対応する多くのスロープがある。ロングライド好きには6キロ以上のコースさえ用意されている。

ヘリに乗る
4月の最初の週に栂池へ行ったときに、ヘリオペレーションがあることを聞いた。僕はそれを知るや否やもう普通のコースに行く気をうしなってしまった。またヘリ依存症状がもどってきたのだ。乗りたい、乗りたい、ただヘリに乗りたい、と。

栂池ヘリサービスは3月の中旬から、スキーシーズンが終わるまで飛んでいる。料金は一回約9,000円で飛行時間は約10分だ。通常だと2本のゴンドラを乗り継ぎ、2時間ハイクしなければならない。休憩を何度かして、ミックスナッツのような健康なスナックを食べたりもするだろうし、汗もかいたりとハイクはなにかと面倒くさいのだ。自分の足で登ればそれ相当の達成感があって気持ちいいかもしれない。でも、僕はなんといわれようとヘリに乗る!

栂池高原のゴンドラは国内で最も長く、途中に白樺駅がある。ここからヘリが出ている。ヘリに乗る日、僕らは駅に朝の7時ちょうどに到着した。汗水たらして働いたお金で料金をしぶしぶ払い、指定コース以外での遭難や事故には一切責任をもたないという書類などを記入した。

安全にベースまで滑ると、栂池ヘリコプターのかっこいいワッペンがもらえるんだ。これはアフタースキーにパブで一杯やっているとき、友達にチラチラ見せて自慢できるから、依存症を紛らわせてくれとてもいい。

栂池ヘリオペレーションにはマウンテンガイドがついていないものの、頂上にいるパトロールのスタッフが、コースや安全なスキーの心がけなどについて説明してくれる。その朝は数家族を含む35−40人がヘリを待っていた。大きなズームレンズをつけたカメラをもっていたからか、ラッキーにも僕らは一番目のフライトに乗せてもらえることになった。

ライドダウン
ヘリコプターが早朝の空に飛び立つとともに、僕の胸は高鳴り、シャッターを押しまくった。栂池の頂上、そしてその先の南アルプスの景色は息をのむ素晴らしさだ。数分後にヘリは天狗原という着陸エリアに到着。荷物を持つと、パイロットがエンジン音をたててかっこよく旋回して、またヘリを待つ人のいる谷へ飛んでいった。. 

パトロールの人が誘導するまで、僕らはツーリストのように周りの景色を見ていた。その後5分ほどパトロールの人から注意点を聞いた。ゲレンデ内のコースではないが、パトロールが50メートル幅に目印として旗を立ててくれていて、そのコースを行けばベースまでの14キロという距離を安全に滑ることができるのだ。

中級のスキーヤーやスノーボーダーなら問題なく滑れるスロープだ。この辺りは春にざらめ雪が降ることが多い。僕らが行ったときは前夜の雨が雪に変わっていて、まっさらなパウダーが積もっていた。ガイドブックがあればバックカントリーやパウダーボウルで楽しむこともできるという。

2時間ほどハイクすると栂池の頂上につく、そこからは谷を喜びの奇声をあげながら大きなターンで滑り、はるか下の谷までおりて行く。

この日僕らはちょっと楽をしてハイクしないで滑ることにした。ガイドさんに30分ほどで頂上にいける道をを案内してもらった。

スプリングパウダーをご機嫌で滑りおりているとき、スノーボードパークを見かけた。そしてゆっくり滑って二時間ほどで、ゴンドラの駅へついた。その後は、ハイな気持ちをビールで心ゆくまで満喫した。

しかし禁断症状がもう出てきたようだ。僕は何回も財布の中身を見てもう一回飛ぶべきかを悩んだ。栂池ヘリコプターでもらったワッペンを、アイスクリームを買う列の人にちらちら見せてみた。ぜんぜん気がついてもらえなかったので、僕のこの切羽詰った状況など分かってもらえなかったはずだ。気を紛らわすためになにかしなくちゃいけない。そうだ温泉が効く。

あの、僕、温泉中毒でもあるんだけど、もういったっけ?

ESSENTIALS

Getting There
電車: 栂池高原には東京から中央線と大糸線を乗り継いでいくことができる。約4時間。大阪方面からは松本まで新幹線で行き、白馬大池まで急行列車などを利用して行く。駅からスキー場まではバスが出ている。約20分ほど。

車: 東京方面からは中央自動車道を松本ICまで行く。そこから国道148で北西に大町を経由して進み白馬へ向かう。白馬に着いたら栂池高原の看板の案内を見て進む。大阪方面からも中央自動車道を経て同ルートで行く。

Accommodation
栂池高原のベースにはスロープに面したホテルが最低10はあるし、B&B、ロッジ、ペンションや旅館も多くある。予約をしなかった場合は、JR白馬駅前の白馬宿泊情報センターに立ち寄るといい。営業時間: 午前7時から午後 6 時 Web:  HYPERLINK “http://www.hakuba1.com” www.hakuba1.com