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特徴

2009
Issue 30
自分の露天風呂をほろう
By Nik Silwerski

アウトドア派なら誰でも、温泉が大好きだと思う。お湯の種類も透明なものからから、乳白色、黒っぽい色や泥などさまざまだが、スノーボード、スキー、ハイキング、トレイルラン、登山、サイクリングなどのスポーツの後や、デスクワークの疲れを吹っ飛ばすには温泉が最高だ。

公共の温泉、ホテルや旅館の温泉は日本国内に数多くある。しかし本当の温泉とは、わざわざ源泉へ出かけていき、ショベルで自分の露天風呂を掘ることだという人もいる。

そして長野の湯俣温泉は野湯にうってつけの場所だ。アクセスは、七倉ダムの駐車場からタクシーで東京電力の高瀬ダムへ。高瀬ダムは国内最大級のロックフィルダムで黒部ダムについで日本2位の高さのダムだ。歩いてもいけるが、5キロもあるので、時間をよく計算しないと高瀬ダムについたごろは夕暮れになってしまう。

高瀬ダムの左側には、あまり使われていないが、比較的楽な道が一時間ほど続く。右には湖。そして周囲には日本アルプスの山々に囲まれる。湖の表面に突き出ている死木が、ここにかつて谷があったことを知らせているようだ。

到着地までに3つのトンネルを通り抜ける。そのひとつは1キロもの長さで真っ直なトンネルだ。遠くに見える小さな出口の光に向かい、手をたたき、エコーで遊びながら歩いていく。ダムを離れ湖に沿って歩くと、石や大きな岩が多くある川床がだんだん広がる。流されてきた巨大な岩を目の前に、春の雪解け水の威力にあらためて感心させられる。

トンネルをすべて通り抜けたら、離れたところからこちらを見つめているかもしれない、カモシカや野生の猿の存在に意識を向けてみよう。そのまま1時間ほど歩くと道路はなくなり、道は川沿いに曲がりくねっていく。木陰で休憩し、お茶を飲みながら北アルプスの景色を楽しむ。

ダムを出発して2時間半ぐらい歩くと、川は左に折れる。そしてつり橋を渡ったところに晴嵐荘が見えてくる。ロッジの人は暖かく僕らを迎えてくれるこの宿では、1日500円でどこでも好きなところにテントをはれる。

ロッジで食事をすることはできるが、前もって電話で食事が必要と伝えておいたほうが安全だ。運がよければ、コツ酒なるもの(イワナをつけた酒)のお相伴にあずかれるかもしれない。

ガイドブックの写真には、湯俣山荘の前で温泉を楽しんでいる人の写真がある。あいにくこの温泉はもうない。最近発生した洪水以来、この温泉からは湯が出なくなったのだ。しかし内風呂が晴嵐荘にあるから安心だ。さらには自分で露天風呂を掘るのも楽しくやめられない。

ハイクは大してきつくないので、まだ穴を掘る余力は残っている。なんといったって自分の温泉を掘りに湯俣に来たのだ。ロッジの人は心よく、ピックやシャベルを貸してくれ、露天風呂を掘る手伝いをしてくれる。

ロッジを出て高瀬川にある小さな神社を通り越し、さらに15分ほど歩くと、川の水が驚くほど透明な、周囲の岩が硫黄で黄色くなっているエリアにでる。このあたりから川の端までが温泉の湧くエリアなので、露天風呂を掘るには最適な場所となる。

川の反対側にある、2メートルの高の天然記念物の噴湯丘も見学にいきたい。よく見回せばすでに掘った形跡を見つけるはずだ。そこに陣取って自分の温泉を作るのも手。砂を堀りだし、石をちょうどよく組み、湯と川の水を混ぜて自分好みの湯船を作ろう。

温泉旅館のようなパーフェクトな風呂は保証できないけれど、でも本当の日本らしい体験がでる。少しだけ努力をすれば、北アルプスを背景に自然と一体となった自作の露天風呂を味わえるなんて、なんとも最高の気分だ。

ESSENTIAL INFO

Seiransou Lodge (晴嵐荘)
晴嵐荘は7月から10月の中旬まで営業している。最終営業日はまだ決定されていないので、調べてからでかけるほうがいい。高瀬ダムからは歩いて2時間半から3時間。ダムを出るとロッジまでトイレはないので注意しよう。1泊2食で8500円。TEL: (0261) 22-0165。キャンプは1泊500円。ロッジのお風呂の入浴料は500円。日中は入れないこともあるので注意が必要だ。

アクセス

電車:
新宿駅から「スーパーあずさ」で松本駅へ。大糸線に乗り換え信濃大町で下車。タクシーで高瀬ダムまで行く(約45分)

車:中央自動車道の岡谷ジャンクションで長野自動車道、長野方面へ。豊科インターで降り、国道147号線から326号線に入り、七倉ダム方面へ向けて走る。七倉ダムの駐車場から高瀬ダムまではタクシーでアクセス。

Useful Info
槍ヶ岳を北側から登る、または野口五郎岳へ向かうベースキャンプとしても晴嵐荘を使うことができる。

たとえ、ロッジに泊まっても、タオルを携行することをすすめる。

川床の湯はやけどをするほどの高温なので注意が必要。噴湯丘近の川は流れが急なので細心の注意を払って渡ろう。

ハイクは大変ではないが、川の近くにはごつごつした岩が多いので丈夫なシューズを着用しよう。

このあたりの秋は朝夕の気温差が激しい。キャンプ時には身支度を十分に。