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特徴

2010
Issue 37
グアムにある太平洋の宝
By Tim Rock & Elaine Kwok

 ISLAND BEAT


最近グアムに設置された海洋自然保護区域のおかげで、ようやくこのエリアの魚たちにとって安全な繁殖場所が確保された。島々の周囲を飾るように広がるリーフは、ダイバーたちにとって夢のような魅力あふれる場所。近年続いてきた生息数の減少にも歯止めがかかると期待されている。

ミクロネシアの西、紺碧の海に囲まれたグアム島は、世界でも有数のコーラルリーフ群が生み出す豊かな海洋環境に恵まれた場所だ。太平洋の西部からせり上がり、地球上でもっとも深いマリアナ海溝へ抜けていく位置にあるこの島の海岸線には、青い海に運ばれ遠洋の生物がやって来る。また、島を縁取るリーフは数世紀もの時間を経て現在の大きさにまで成長したもので、そこには900種類以上の魚類と400種あまりのコーラルが生息している。そしてもちろん、この生物の多様性を目指して、アジアのみならず世界各地からダイバーたちも集まってくる。

島には過去に難破事故の頻発や、ふたつの世界大戦による多数の残物という歴史もある。またスペインのガリオン船がマニラ貿易で金を運んでいた時代には、グアムが船の中継地として文字通り宝を預かる役目も果たしていた。

グアムはミクロネシア最大の島だが、リーフの大きさは近隣の島々と比較すると決して大きくはない。パラオ諸島は群島全体が長さ100マイルもの距離で連なり、ヤップ島の周囲では、内側にマングローブの連なる広大な礁湖が島を囲むように広がっている。

一方のグアム島にはバリアリーフがあって、南にはココス島もある。南側は火山性の土地で、北側は石灰岩の森林という地形は全体的に険しく、海中まで急激な勾配が続き、ところどころ湾や入り江に守られた場所に沿岸のエリアが存在する。

そしてミクロネシアでもっとも発達し人口も多いこの島には、日本やアジア各国から年に120万人以上のツーリストが訪れる。結果、観光事業や地元のスポーツダイビング、島の漁師たちによる絶え間ないストレスを受けて、リーフには計り知れない悪影響がもたらされているのである。

過去には魚の乱獲や杜撰な開発による沈泥化、台風による影響によって、サンゴ礁はじめ、グアムの海洋生物の生態系が危機に瀕する事態が起きていた。またこの20年間、島の魚の繁殖率も急激に悪化し続けている。こうした事態を受けて、グアムの海洋資源保護のために、島の水産・野生生物管理局(Division of Aquatic and Wildlife Management)の生物学者などが規制に乗り出した。そして近年、島全体に設置された一連の自然保護区域の効果があらわれ始め、グアムの海に生息する多様な海洋生物の生息環境に改善が見られるようになってきた。この保護地域内では繁殖によって魚の生息数を増加させることが最優先に考えられている。基本的には禁漁であり、漁は最低限しか認められていない。

アチャン&ササ保護区
この保護区にはグアムの南、ココス島の南東にあるアチャン・リーフ・フラットがある。生まれたばかりの幼い魚たちが成長するための中心地であり、そうした子供たちを守るように多数のマングローブや自然の保護環境が揃った地域だ。

西岸を上るとササ湾があるが、アプラ・ハーバーの東側にも、やはりマングローブが群生する地帯がある。ここはシュモクザメの繁殖場所としても知られている。

この2つの地域はレクリエーションのために使われることは少ない。が、魚が卵を産み、その子供たちが安全に育つことのできる貴重なエリアだ。ここから海へ出ていく魚たちはグアムへ向かうだけでない。ヤップ州の環礁などアウターアイランドまで移動することもある。

ピティ・ベイ保護区
グアムでもっとも有名な2つのスポットといえば、キャメル・ロック、フィッシュアイ・マリンパーク、ピティ・チャンネルなどピティ湾のほとんどを含んでしまうピティ・ボムホール、それにタモン湾だろう。

ピティ湾も、リーフ内側の比較的コンパクトな地域に200種以上の魚が生息している。

グアムでもっともアクセスしやすいエリアの1つで、スキューバダイビングやシュノーケリングの初心者がよく訪れる。ここには砂場がフカフカと沈むシンクホールがいくつもある一方、数十年の年月を経た堅いコーラルが生息。魚の種類も豊富に確認され、7種類ものチョウチョウウオやエイ、ときにはウミガメの姿も見られる。

またアウターリーフフィンガーの上にはナースシャークやホワイトチップシャークもいる。

ここにいる魚たちは近づいても逃げず、ダイバーや水中カメラマンが驚くほどだ。シュノーケリングとシーウォーカーのツアーは毎日行われていて、中でもフィッシュアイ水中観察は海中を見ることができる人気のアトラクションになっている。ダイバーなら海中展望塔の南にある美しいリーフを満喫できるし、魚に餌をやることも、塔の周囲のシュノーケリングも可能だ。

フィッシュアイにはシュノーケリングのツアーがある。途中7か所で止まり、様々な魚やコーラル、イソギンチャクの群れとクラウンフィッシュなどを存分に観察できる。またフィッシュアイの出入り口のすぐ下ではフグが暮らしている。ツアーの後は展望塔の中へ入ってみるか、通りの向かい側にあるフィッシュアイの建物内にあるギフトショップへ行くのもいい。

タモン・ベイ保護区
そしておそらく一番有名なタモン湾は、ガン・ビーチと恋人岬、その周辺の地域を含む。

この保護区はグアム一のビーチにあり、周囲にはホテルやレストラン、クラブが立ち並ぶ。真っ青に透き通る美しい海ではパドル競争やスイミング、地元の地引網の漁(タラヤ・ネット)、シュノーケリングとあらゆるリクリエーションが可能だ。タモンのインナーリーフはまるでミニチュア版の水族館のようで、色とりどりの熱帯のリーフを多数見ることができる。海のカレントによって栄養分が運ばれてくるため、幼い魚が成長しやすい環境にあるのだ。

タモンから北へ向かったガン・ビーチも同じ保護区内にあり、こちらはボートダイブやビーチダイブが人気の場所だ。

ビーチの崖近くに第二次世界大戦時の銃床が置かれていることが名前の由来になっている。スロープ状のリーフには数多くの魚が暮らし、写真を撮るには最適な場所。ウミガメ、エイ、マンタ、まれにタイガーシャークが沖あいに姿を見せることもある。様々な魚がいるので、ダイバーは海に入ったらすぐに撮りたいものに的を絞らないと、あれもこれも、ということになりかねない。

ここのブイの近くには、キャッスルコーラルの見事な群れがある。リーフはスロープ状に下っていて、110フィートほどの深さのボトムは砂地である。ウナギが泳いでいることもあれば、深い場所ならヘルメットシェルもいる。

ここでは深くも浅くも自在なダイブが可能だ。美しいコーラルの群れは左側。潮が引く時間帯にはリーフフィンガーに食事に来るマンタの姿もしばしば見られる。また逆に、ハーミットクラブやクリスマスツリー・ウォームなどのごく小さな生物も探してみてほしい。クリスマスツリー・ウォームは触れるとすぐ隠れてしまうが、体を広げるとまるでツリーのように見える。

パティ・ポイント保護区
そして最後の地域はグアム北部のパティ・ポイント。ここは少し前に軍の管理下に置かれた場所だが、海中には美しい光景が広がる。

魚の群れやウミガメが泳ぐこのエリアは、保護区になってからコンディションが格段に良くなっている。コーラルは非常に美しく、位置的にグアムの海岸線を見渡せるので、その眺めを楽しむだけでも訪れる価値がある。波やカレントが強いため、いつでも入れるという場所ではないが、その方が魚にとってはストレスも少ないはずだ。

こうした保護区域は漁や釣りによる魚への悪影響を軽減するために設置されている。過去10年あまり、グアムのリーフを観察し続けた生物学者たちは、島の人口が増えるに連れてプレッシャーが増加していると言う。

また地元の漁の対象が成魚からより若い魚へと変化してきたことも事態を悪化させていて、生息数の維持がより困難になった。

この保護区は別名エッグバンクと呼ばれ、そこで魚が安全に繁殖活動を行い、その後で若い魚が人間に邪魔されることなく成長を遂げられるようにと設置されたが、効果は着々とあらわれ始めている。

グアムでの保護区域指定は今回が初の試みとなる。

早くから意識の高かった近くのパラオでは、すでに1950年代終わりごろに70の島々で自然保護区域化が行われていた。グアムではまだ10年程度の経験しかなく、きちんと管理規制が行われ、常駐のスタッフが置かれるという形になったのはわずか3〜4年前のことだ。

それでも現在、この限られたリーフエリアだけを見ても魚の生息数はかなり増加しており、実験が成功していることが見て取れる。

全体的に見れば、北から南を網羅したこの新たな自然保護区が設置されて以来、増えた魚たちは当然保護区以外の地域へも移動していく。つまり漁師たちは短期間で現実に捕獲数が増えるのを実感し、ダイバーたちはリーフでより多く、より大きな魚たちに出会えるということになる。結果的には、この保護区域によってグアム全域のリーフが豊かさを増し、グアムの海で活動するあらゆる人々が等しく恩恵を受けることになるのである。

ダイバーは、この保護区域があるおかげで、今後はグアムの美しいリーフでもっと多くの成魚に出会えるはずだ。グアムの海はもともと地球上でもっとも豊かなエリアの1つだったが、これから先はさらに美しく素晴らしい海になることを楽しみにしていてほしい。

ダイビング情報のあれこれ
グアムのローカル・ダイブショップでは、実質的にアイスダイビング以外すべての免許の交付が可能だ。1年中暖かく、澄んだ海があり、週末のボートトリップも簡単なウォークインのビーチダイブもいつでも楽しめる。

グアムでのダイビングは世界トップクラスの安全性を誇っている。というのも、ここはUSコーストガードと海軍がパトロールを繰り返す水域。すべてのダイブボートはコーストガードの認可を受けなければならず、酸素ボンベや安全なエクイップメントをつねに規定通りに積んでいる。またグアムにはダイビング事故に備えたリコンプレッション室も準備されている。

ダイビング・プロテクション:グアムの水温は1年を通じて82−86F(28℃)で、ほとんどのロケーションで視界はきわめて良好。ライクラ・スキンがあればほぼすべてのコンディションに対応できる。地元のダイバーは1.5から2ミリのウェットが中心だが、慣れないうちは3ミリでもOK。水温は最低でも74F(夜間)を下回ることはなく、90Fを上回ることもない。アプラ・ハーバーでのダイブは視界が30’から60’(10−20メートル)程度だが、アウターリーフでは100’から150’(33−45メートル)もしくはそれ以上になる。

インストラクション:ビギナー向けのオープンウォーター、ワンデイのリゾート・エクスペリエンスからアドバンス・トインストラクター・トレーニングまで、あらゆるレベルのインストラクションが揃う。スキューバやリブレッサーを使用して、深海で行うテクニカルダイビングも可能だ。

時期:5月から10月はコンディションが穏やかな期間。貿易風が吹くのは通常11月か12月の初めから4月ごろまで。ただしグアムにはダイブサイトが多数あるため、通年どこかにプロテクトエリアを見つけることができる。

フォトグラフィー:水中撮影はぜひお勧めする。フィルムの現像やデジタルプリントも現地で可能。豊富なラインアップを揃えるカメラセンターもあるので現地購入もできる。

プロテクション:水中にいるとき以外は、たとえ屋根付きのボートにいても日差しは強烈。保護のための長そでTシャツやつばのある帽子を持っていくこと。もちろん日焼け止めも必須。

ヒント:ウォークインダイブの場合はハードソールのブーツ、ボートダイブには足ヒレが必要。グループならダイブショップでボートを借りることもできるので、ダイブ以外にもサンセットバーベキューや午後のカヤック、シュノーケリングも楽しめる。