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特徴

2010
36 号
フロム サミット トゥ シー:山頂から海へ
By ジョン・スパークス

この冒険が、入念な下調べと大義ある計画に基づいたものであると言えれば良いのだが、そうじゃあなかった。大計画の多くがそうであるように、この話も仲間たちと一杯やりながら持ち上がったものだった。利根川のほとりでのBBQ中のたわいもない話は、何週間かのうちに本物の冒険へと変わっていった。4人のガイジン達は、群馬県北部にある天神平の山頂近くから東京湾を目指して、4メートルのラフティングボートで旅に出た。

僕達は、雪解け水の様子と天候のバランスを見ながら1週間の日程を選んで、グーグル地図を使ってルートを決める事から始めた。小さなダムがいくつか在ったが、以前の小旅行の経験からそこは下れる事を知っていた。また別の場所では、ボートの陸路輸送を余儀なくさせる「ルール」がある個所もある。山あり谷ありさ。こういう知識やなんかを武器にして、僕達は水上にあるキャニオンズアウトドアアドベンチャーズからボートを借り、いざ出発した。

初日はずっと急流で、壮大な渓谷の間を下り、時たま川に流れ込む滝の横を通って進んだ。この辺は、利根川上流で行うラフティングツアー経験者にとっては馴染みのあるエリアだ。川幅が狭いので、パドルを手に攻め進んだ。昼食の頃には40kmを下ってきて川幅も広くなったので、ボートのフレームに取り付けたオールで進む事が出来るようになった。この日は60km地点で、前橋に近い川辺にボートを寄せて眠る事にした。

急流だらけの初日を終えて、残る170kmは午後の向かい風が吹きつつも大抵穏やかな流れが続いた。ボートが何センチも進まない内に、かすかな風が前進を妨げるのが分かった。3日目には、風のせいで残りの15kmを進む為にかなりの努力を強いられた。3漕ぎ進んで2漕ぎ分戻される、の繰り返しだ。向かい風を受けながら、オールを持ってきた事がこの旅最善の選択だったと確信した。

最終日の夜明けは風もなく晴れ渡り、江戸川と東京湾との河口までラスト40kmを進むべく僕らは再び舵を取った。この辺りにくると、両側の緑は臨海工業地域へと姿を変え、僕らの心配事は風との闘いから、商船をどううまく避けるかになった。そんなこんなで残りの道はいつの間にか過ぎ去り、7時間後ついに東京湾に出て、僕らの旅は“形式上”終わりを迎えた。

そもそもこの冒険はビールとBBQの産物なのだし、まだ日が沈むまではしばらく時間がある事だし、お台場での祝杯を挙げる為僕らはもう少しだけボートを進めることにした。それに小さな黄色いラフティングボートがレインボーブリッジの下を通っていくなんて、そうそうお目にかかれる光景じゃない。


僕達がお台場に近付くと、モンティパイソンの映画さながら、いろんなアナウンスやスーツを着た男達の「この場所には上陸はできません、戻りなさい!」と怒鳴る声が聞こえてきた。ラッキーな事に、僕らの日本語が期待を裏切ったおかげで、無事ビーチに辿り着き10m先の駐車場までボートを運ぶ事が出来た。こうなると湾岸警備の人達は、どう対処すべきか分からなくなった様だった。それともただ興味が無くなっただけかもしれない。4日間に渡る230kmのパドリングを終えると、後はただ一つの質問が残されているだけだ。「来年は何をしでかそう?」




サミット トゥ シー: 山頂から海へ

 

1日目:利根川源流近くから前橋まで

距離:約60km

 

午前中はずっと近くの温泉から強い硫黄の匂いがした。僕らは急流を下り、1つのダムでは苦労して陸路でボートを運んだ。小さな町や農場の横を通り過ぎて、前橋から少し上流の川岸にボートを着けて最初の夜を過ごした。

 

2日目:前橋から羽生市まで

距離:約60km

 

いくつもの支流が川に流れ込んできた事で水量がかなり増えたが、川幅は広く流れもゆっくりになった。急流は緩流に変わり、両側には緑の氾濫原が広がっていた。

 

3日目:羽生市近くからミサトまで

距離:約60km

 

魚達はそのサイズも豊富さも立派で、水も意外なほど澄んでいた。正午、僕らは右に曲がって江戸川に入った。巨大な葦の束が両側に浮いていて、不気味な辺ぴの荒野の様な雰囲気を醸し出す中、僕らは東京に近づいて行った。

 

4日目:ミサトからお台場まで

距離:約50km

東京湾に近づくと、高層ビルのてっぺんが見えてきたが、川の両岸にはまだ緑の氾濫原が広がり、魚も泳いでいた。東京湾まで15kmの水門まで来た辺りで急に緑が消えて、倉庫や工業用建物が取って代わった。東京ディズニーランド横から湾に入ると、それまでの川での限られていた視界と比べると、お台場まで続く水の広がりがそれは広大に見えた。


サミット トゥ シー参加者

ジョン、ダグ、マークは、この旅のアイデアが生まれた場所でもある群馬の水上在住だ。

ジョン・スパークス

土地開発会社社長。何年も前、ジョンは単独でグランドキャニオンを21日間かけてラフティングとカヤックで旅した。だから彼には、今回の旅で自分が何に首をつっこむのか分かっていた。

 

ダグ・スミス

商業不動産{しょうぎょう ふどうさん}のプロ。ダグは最近フィットネス方法を向上させ、1日10時間のパドリングが上半身を鍛えるのに役立つだろうと考えて参加を決めた。

 

マーク・バクスター

金融業の専門家。マークとジョンは最近、東京から水上まで200kmを1日で自転車で走り切った。

マークにとって初の日帰り以上のラフティングの旅だった。

 

ゲリー・ウォング

金融業の専門家。最近ダグと一緒に、東京から京都まで自転車で走ったばかり。今回が初めての(でも本人曰く最後ではないそうだ)ラフティング。