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特徴

2010
36 号
Japan Coast to Coast
By Lowell Sheppard

川を渡り、アルプスを巡る Japan Coast to Coastのアイデアは、10年ほど前、偶然にイギリス出身のWalter Westonのことを知って以来あたためてきたものだ。Walter Weston自身は、60年以上も前にすでに亡くなっているのだが。

私がWalter Westonに会ったのは、海沿いの静かな道だった。日本アルプスが日本海へと落ち込むその地点に、彼の銅像を見つけたのだ。その時、九州から北海道まで自転車旅をしていた私は、内陸の険しい道を避けて、日本海沿いを桜前線とともに北上していた。 

温かい春の日。天気に恵まれ、空の青と海の青を眺めながら、私は自転車をこいでいた。トンネルは危険なので、主要な道路を避けて古い道路を選んで走る。距離が長くなってしまうがこの方がずっと快適なのだ。それに静かな道の方ならのんびりと日本海の眺めを堪能できる。北日本と西日本が交わる親不知の断崖を渡る古い道で、Walter Westonに遭遇したのである。

Westonが日本に来たのは1800年代。名前を聞いたことはあったが、彼のことは何も知らなかった。こんな静かな道に彼の生涯を記した大きな銅像があるとは。目立たない場所にあるというだけでなく、彼のたたずまいは、私を静かに叱っているようにも感じられた。 

Westonは、背を海に向け、視線は前にそびえる山の先を見つめている。銅像の下の説明によると、Westonは、“日本の近代登山の父”と呼ばれ、彼の多くの登山探検は、文字通り日本アルプスが日本海からせりあがっているこの場所から出発したのだそうだ。

その時私は、いつかWestonが見ている方向に山を越えて旅をしてみようと心に決めたのである。それから10年、やっと今年6月にWestonの道をたどる旅が実現することになった。きっかけは父が急死したことと私自身が病んだこと。友人Tony TorresとMark McBennettが一緒に行くことになり、ルートの検討やバイクの準備に取り掛かった。 

Tonyは、ここ数年よくバイクに乗っているし、ツールドフランスのコースを完走したこともある。ヨガや名古屋-京都間のライドなどで準備を整えてもいた。反面Markは全くイチからの準備である。最初はためらいがちに古いマウンテンバイクを出してきていたが、結局決心して新しいバイクを購入した。 

病気のために体重が8キロ減少していた私は、脚力と心肺機能を強化するのが大切な準備となった。短いが上りのあるコースをライドして鍛えた。

夏山の開山祭でもある上高地のウェストン祭に合わせて、6月の初めに出発することにした。浜松でのロケハンでは、上りが多くきついことを気にしながらも、天竜川に沿って南アルプスの静かな道を上るルートに決めた。 

初日、バイクを組み立て、先ずは浜松から天竜川河口へ。川が太平洋に注ぐ地点で記念写真を撮った。 

最初の20Kは快適だった。そして道は次第に勾配がきつく、カーブが多くなる。この地形が日本のサイクリングの特徴であり、面白さだ。最後のコンビニを過ぎて150km。回り道でも静かな道を選びならこぎ続けた。 

初日の最後は14%勾配を含む9kmの上りだった。ペンションのオーナーが心配して途中まで迎えに来てくれていた。蛍が群れる場所や滝を紹介してもらいながら、オーナーと一緒にペンションへ向かう。途中、林に住んでいるらしい鹿を見かけた。そして夕食には、鹿肉料理が出てきたことも付け加えておこう。

ペンションのオーナーから、山の裏側を通って佐久間ダムに出る近道を教えてもらう。 “数百メートルほどは自転車に乗れない箇所がある”と聞いたのだが、確かに、Markのホイールのスポークが壊れ、彼はそのまま伊那まで150kmを走ることになってしまった。

3日目は、伊那谷を抜けて権兵衛峠へ。雨と雷で怒る中央アルプスを登り、権兵衛トンネルに着いた時には土砂降りになっていた。

4日目は、2つの峠越えの上にNHKの取材を受けるという盛り沢山な1日となった。取材班は、逆コースでアルプスを縦断する有名なライダーを取材中だったのだ。土砂崩れで通行止めになった道を通り抜けようとするカップルにも出会った。宿泊はノーススターアドベンチャーロッジだ。

上高地への最後のトンネルは手ごわいライドだったが、今行程の要所、上高地に無事到着することができた。名古屋から来た友人や日本の尾根をサイクリングしている友人にも再会した。コテージに宿泊したこの日は、Tonyのパスタ料理と赤ワインでリラックスした。 

上高地はWalter Westonがツェルマットにたとえたことから、人々に知られるようになった場所だ。翌朝は第64回ウェストン祭。子供達が唄うWalter Weston の歌とともに、山開きが行われた。 

残りはあと2日。松本に下り、サラダ街道を白馬へ。野菜畑や果樹園の中を緩やかにのびる道を宿泊地Santana B&Bまで走った。オーナーのAlbert Kikstraと彼の家族と共にホッとする夜を過ごした。

最終地点は、私が10年前にこの旅を思いついたあの場所、Walter Weston碑だ。8日間で500km余りを自転車で移動した。なるべく交通量の少ない道を選び、時には通行止めの道を走った。トンネルが一番の天敵だったが、それでもいくつも通らざるをえなかった。長さ5kmの権兵衛トンネルは、中央アルプスを越える私達を助けてくれた。白馬から糸魚川への雪除トンネルは17kmも続き、一気に走り抜けるしかなかった。

毎日が冒険と発見の連続だった。

日本ほど長距離のサイクリングが楽しめる国はないと改めて感じる毎日。ライディングだけはなく、各地で出会う人の温かさも素晴らしい。支援いただいた¥600,000は、HOPEインターナショナル開発機構に寄付することにした。家庭30戸分の水をくみ上げる井戸を掘ることができるそうだ。

次のJapan Coast to Coastは、20人ほどの参加者を募って、10/10-11の2日間を予定している。またチームでのイベントも企画中だ。どちらのイベントもHOPEインターナショナル開発機構へのチャリティをかねて行われる。詳しくは www.japanc2c.com.で。

Japan Coast to Coast 

Japan C2Cとは

Japan Coast 2 Coastの気持ちはシンプルだ。 日本の2つの川と3つの山脈を自転車で巡ることによって、きれいな水を必要とする人々を助けるための資金を集めることにある。日本登山の父であるWalter Westonのトレイルに従って、日本の屋根を自転車で駆けるのだ。

太平洋の天竜川から、南アルプスに沿って北上し、中央アルプスを越え、乗鞍岳から上高地へ。そして、姫川に沿って、白馬から日本海側の糸魚川へ下るルートをとる。 

自転車で日本の田舎を訪ねることがこの旅の楽しみであると同時に、カンボジアの田舎に暮らす人々の自立を助ける取り組みにも協力する。

Japan Coast to Coast
総距離: 508 kilometers

Day 1: 浜松駅 –> 天竜川河口 –> 龍山 [70K]

天竜川河口で集合し、川を遡る。山はないが、勾配15%の上りがある。 

Day 2: 龍山 –> 泰阜村[77K]

林道を一旦下って、大入渓谷から佐久間ダムへ上る。その後は曲がりくねった道を泰阜村まで。

Day 3:泰阜村 –>藪原[103K]

天竜川に沿って伊那へ。伊那でランチを食べ、壊れたスポークを修理。右側に南アルプス、左側に中央アルプスを見ながら北上。その後は、中央アルプスを突き抜ける権兵衛トンネルを目指して登る。峠を下ると国道19号線に出る。民宿までの4kmは雨に降られた。 

Day 4: 泰阜村–> 乗鞍高原 [45K]

町まで少し下った後は、奈川温泉を囲む2つの峠に向かって登る。

Day 5:乗鞍 –> 上高地 [28K]

短いがトンネルの多い行程。上りのトンネルも多く、上高地入り口のトンネルは、長さ1.3-km、勾配14%。上高地から乗鞍スカイラインを通る予定だったが、雪のため閉鎖されていた。

Day 6: 上高地 -> 白馬 [97K]

午前中はウェストン祭に参加して、その後に白馬へ。40kmを下り、サラダ街道で白馬まで。

Day 7: 白馬 –> 糸魚川 – 親不知 [88K]

姫川に沿って日本海へ下りきる。そして、Walter Westonの碑へ到着。