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特徴

2010
36 号
Diving into the CNMI
By Tim Rock & Elaine Kwok

サイパンとロタは日本からの旅行者にとって手軽な南の島というだけではない。ダイバーが何度となく訪れる聖地でもあるのだ。

グアムからすぐ近くの島

北マリアナ諸島連邦(CNMI)は、なだらかにせり上がったコーラルと火山によって形成されている島々で、その周囲には岩だらけの絶壁から白砂のビーチまで、多様な種類の海岸線が広がっている。現在で 

も北端近くには活火山の島がいくつか確認されており、南端に位置するロタ島は、起伏のある美しい島。住民の数はごくわずかで、海の水は文字通り透き通るような美しさだ。


グアムから20分程程度のフライトで、スキューバ好きにはたまらない別世界が現れる。ロタ島を訪れるダイバーがまず心を奪われるのは、良くない時でさえ30メートルは確保できる海の透明度だ。さらに、もともとハチの巣状になっている島のベース部分が海底まで延びているため、自然に作られた洞穴やトンネルや裂け目が数多く存在。驚くほど多彩な生物の住処となっている。

そんな個性的な海底を見て回るだけでも十分楽しめるし、時間を上手く使えば魅力あふれる無数の海の生き物に出会えることもできる。

ロタ島はマリアナ諸島の中で、どこよりもフレンドリーな場所として知られる。通りですれ違う現地の人々はこちらに手を振り、うなずくように頭を動かすが、いずれも島の伝統的な歓迎の仕草である。この振る舞いがより一層フレンドリーな印象をもたらすのかもしれない。また10月には年に1度行われるフィエスタがあり、ありとあらゆる食べ物がふんだんに振る舞われる。

人々の佇まいも含め、陸上でも海の中でも、独特の景観は本当に目を奪われるほどに美しい。

ロタ島にはゴツゴツした石灰岩が多いのだが、島の東側では絶壁が海から空へ向け、薄い板のようにそびえ立っている。一方の西側では荒地のように広がるビーチが波打ち際まで続く。それぞれがまったく異なる表情を見せているのである。

現地の人々の温かさや景観が大きな魅力である一方、住民の少なさも島の魅力になっている。

絵はがきのような村落が集まるのは、島全体から見れば比較的狭いエリアだけでしかない。そのためブラブラと歩き回るにはうってつけの規模なのである。早朝に散歩をすれば、あの恐ろしいコモドオオトカゲをわずか小さめにしたオオトカゲに会える可能性だってある。遠出をしてハイキングに出かければ、どこかの洞穴で第二次世界大戦時の遺物や、古代のチャモロの人々が描いた図柄を見つけるかもしれない。

加えて鳥類、とくに海鳥は島の名物のひとつで、一番眺望のいい場所に彼らのサンクチュアリがいくつもある。とくに南岸のサガガガ・バード・サンクチュアリのような大自然のパノラマビューは、太平洋でも数が少ない。

ロタのバード・サンクチュアリのすぐ下は、絶壁に打ちつける海だ。この東の沿岸は、全域が驚異的な自然を満喫できるエリアになっている。といっても貿易風が吹く時期を中心に天候が崩れやすいため、現状では水中ですらほとんど開拓されていないという。

しかし、ここではどんな時でも新鮮な発見に出会うことができる。すでに知られている場所であっても、訪れる人が増えるにつれて新しい一面が付け加えられ、顔をのぞかせるのだ。

今回は『Dive Rota』のオーナーであるマーク・マイケルと、ダイブマスターのフミコ・フルカワの案内で、ベストスポットめぐりをさせてもらった。その中のパールマン・トンネルというスポットは、ホワイトティップ・シャークの生息地。入口が80フィートほどの洞穴が、そのまま20フィートあまりスロープ状に続け、ふたたび口を開けるという場所だ。

洞穴に進入したダイバーは、イライラしながら泳ぎ回るシャークのシルエットを目視することができる。通常はそれほど攻撃的ではないという彼らは、しばらくすると立ち去っていくのだが、それほど遠くへ行くことはない。時にはアウターリーフの近くまで泳いでは様子を伺い、最終的に安全だと確認してから自分の家へ戻る。

このアウターリーフは海の恵みが豊富な場所でもある。

ホークスビルタートルなどが海藻を食べるために集まってくるし、水中に光が入ると美しく輝くゴールデンゴーゴニアンも密集している。ポナポイントも同じくゴールデンゴーゴニアンが生息する場所で、光を浴びて輝く姿はまるで水中のアネモネのようである。

一方、もっともフォトジェニックな場所のひとつは、西の海岸線にあるウェディングケーキポイントだろう。プンタン センハノン、チャモロ語で”ウォーターポイント”を意味する通りに、二つの穴を抜け、陽光がキラキラと反射する水中の洞窟だ。

ダイブの際はリーフの上を進むのではなく、ドロップダウンしてからまっすぐクリフラインを目指すといい。クリフは神々しいほど垂直に海の底へ落下していて、しばらくすると真っ暗な洞穴が見えてくる。そして入口から40フィート程度は中に入っていくことが可能だ。

洞窟自体の大きさは巨大で、壁面は一面海綿で覆われている。トンネル内には裂け目も多く、そこにホワイトチップシャークが潜んで眠っている可能性もあるが、戻る時は逆にその裂け目を背中でなぞりながら泳いでいくと安心だ。間違いなく海面へ上昇できて、新鮮な空気と空の下へ再び戻ることができる。

この洞穴は普通と違い、深く進むにつれて軽さが増してくる独特なものだ。ベストタイムはシーズンによって異なるが、現地の人ならよく理解している。大まかに言えば、太陽光がクリフの開口部を通って下降を始め、洞穴の壁伝いに光の軸が少しずつ下っていくという時間帯こそがベストだ。光の源を頼りに泳いで上昇するのも可能となる。太陽の光が洞窟内の海水をダンスするように移動していく光景は、禅に似た神聖な体験になるに違いない。

わたしとモデルのエレイン•クワックは、ここで素晴らしい撮影に成功した。洞穴内の自然光を利用して、まさに自然のスタジオで“水中バレエ”のような写真を撮ることができたのである。

ロタ島のササナヤベイには2隻の難破船もある。

そのひとつ、第二次世界大戦時の日本の貨物船『松運丸』は直立していて、船首も上を向いたままだ。ダイバーたちは常時400フィートの残骸を見ることができるのである。まさに驚がくの光景といえよう。

もうひとつはセブンスクリューだ。こちらは中国のいくつもの川を往復していた船だが、密輸によって検閲を受け、その後スポーツダイビング用に沈められた。そしてどちらの船も様々な生物の住処として現在も役目を果たしている。

ササナヤベイはマリン・サンクチュアリと呼ばれるにふさわしい場所である。運が良ければ、湾内でボトルノーズ・ドルフィンがボートの船首で遊ぶ姿も見られるかもしれない。メロンヘッドクジラやザトウクジラの姿も目撃されているという。

夜空は、海に負けないほど澄みきっている。決して明かりが多いわけではないロタ島で眺める星は、最高のご褒美だ。真っ暗な空に輝く南十字星やオリオン座、そして天の川…宇宙の広大さに思わず思いを馳せてしまう美しさである。

数日間の滞在でも、1週間程度の滞在でも、ごく手軽に出かけられるロタ島での時間は、想像以上にアドベンチャー感を実感できるに違いない。ロタ島はナチュラルハイになれる場所なのである。


イーグルレイ・シティ

サイパンは北マリアナ諸島の首都であり、日本からは空路で3時間。グアムやロタ島からなら、ごく短時間のフライトでアクセスできる。

サイパンはゴルフやシュノーケル、ダイビング、デューティーフリーでのショッピングなど、さらに幅広いニーズに応えられる場所だ。西海岸は白砂のビーチで、内陸部は濃いグリーンのジャングルと荒々しい絶壁。ぜひ見ておきたい植物園もある。この島もまた透明度の高い海がダイバーを惹きつけ、めったに見られない生物も多く、マニャガハ島沖にはイーグルレイの生息地もある。

西岸のパシフィック・アイランド・クラブ・ホテルには大規模なウォーターパークがあり、古代のマニラガレオンのレプリカが出迎えてくれる。ホテルの横に置かれたこの船は、近くの沿岸で沈んだとされる貿易船へのトリビュートとして飾られている。1990年代に行われたこの船についての研究は、『ナショナルジオグラフィック』誌に掲載されているが、かつてこの船が運んでいたはずの宝や宝石は、いまでもはるか沖合いの海底に沈んでいると言われている。

その後、サム・マーコス船長とサイパンのダイブ指導者であるリック・ノーゼンと一緒に、25フィートのブルーの海へ出かけた。場所はイーグルレイ・シティと呼ばれるハーバーで、イーグルレイが実際に水面から顔を出したり潜ったりしている様子を見るのは感動的だった。なんといっても、湾内にいくつかあるフィードスポットに40近いエイが集まっているのである。

じっとして待っていれば、彼らがこちらへかなり近づいてくることもある。美しい模様やバレエのような動きに、思わずカメラを向けてみた。カレントに逆らってまで待っていた甲斐もあるというものだ。こうした接近は年中行われるわけではないが、ディンプルやアイスクリームというリーフの外にあるダイブスポットでも、彼らに遭遇できるチャンスはある。

第二次世界大戦の際に墜落した飛行機の残骸もあり、ホワイトチップ・シャークやウナギなどのホームとなっている。浅瀬で難破している軍艦も魚たちの住処だ。アウターリーフは硬いコーラルで、魚の群れが集まるスポットも多数ある。3つのブルーの窓が目印のグロットやラウラウ湾も欠かしてはいけないダイビングスポットだ。

自然が作り上げた有名な観光地といえば、まずはあの絶景のクリフと緑のジャングルだろう。

島巡りにはツアーや車で出かけるといい。

バンザイクリフは、絶壁とその下の丸石にビッグウェイブが打ちつける場所。海のすごさと美しさ、そしてパワーを存分に体感できる。

島の北部のロードエンドまで行けば、目の前にまるで絵のようなバードアイランドが現れる。こちら側とは小さな湾で隔てられてはいるが、全体を十分に見渡すことができる。夕暮れにはサイパンの代名詞である美しいサンセットが水平線を照らし、誰もがみな、また絶対にこのCNMIを訪れようと心に決めることになるのだ。

Essentials

General Info: ロタ島、サイパン島、北マリアナ諸島について詳しいことは www.visit-marianas.comへ
Getting There: デルタ航空( www.delta.com)なら成田—サイパン便が1日3便、名古屋—サイパン便は1日1便。アシアナ航空( www.flyasiana.com)では12月中旬から大阪ーサイパン便が1日1便就航予定。コンチネンタル(www.continental.com)はグアムーロタ間が週2便、グアムーサイパン便が1日3便。フリーダムエア( www.freedomairguam.com)はグアムーロターサイパン間で1日2便。フライトスケジュールはウェブサイトで確認のこと。変更の可能性もあり。

Getting Around: 島々を回るにはレンタカーが一番ラクだ。到着前の事前予約をおすすめする。もしくはホテルやロッジに頼んでもアレンジ可能。

Immigration Currency Electricity: CNMIへの入国には有効期限内のパスポートが必要。また通貨、郵便、電気などサイパンとロタのすべてのサービスはアメリカと同様。