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特徴

2009
Issue 28
Answering the Call of the Trail
By Pauline Kitamura

10年前、トレイルランニングは日本ではまったくと言っていいほど知られていなかった。しかしここ数年で、もっとも人気のあるアウトドアスポーツと成長。いまや週末には何千人というランナーがハイドレーションバックパックを背負って山を走っている。また大会もたくさん開かれるようになった。
もっとも著名なトレイルランニング大会の一つに、長谷川恒夫カップ・マウンテン・エンデュランス・レースがある。「ハセツネ」と呼ばれるこの大会は今年で17回目を迎え、多くのトレイルランナーが目標とする大会となっている。2008年には2000人ものランナーが走った。参加者は24時間以内に71.5キロを走りぬかなければならない。そしてこの大会で新しいスターが生まれたのだ。なんと山本健一(は、昨年の大会で抜群の体力、スタミナ、スピードのコンビネーションをもって優勝本命者をおさえ優勝したのだ。   
日本は世界でももっとも早いマラソンランナーを送り出す国だけあり、「耐久」や「我慢」といった考えは広く浸透している。そして傾斜の険しい日本の山岳地形が、アスリートの体力、心、精神を試すうえで最適なアリーナとなった。

トレイルランニング自体がもつ楽しさも人々を惹きつけている理由だろう。「楽しむために走る」という言葉が示すように、トレイルランニングは競争することではなく、純粋に走ることを楽しむスポーツだ。今までアスファルトしか走ったことのない人が、森を走る喜びを発見し始めたのだ。熱狂的なトレイルランニングの支持者、鈴木ひろこ(ページxxx)は山をこよなく愛するがため世界中のトレイルを走っている。この「ウルトラ・ウーマン」はまさにとんでもない距離を走る。
国内におけるトレイルランニングは、成長期段階特有の痛みを経験していると言っていいだろう。ハイカー達は環境保護を理由に、トレイルランナー達はレクリエーションを引き合いに出して、お互いに意見を主張し続けている。しかしながら、トレイルランニングに興味を持つ人が増えたお陰で、初心者向けのセミナーやクリニックが多く開かれるようになったのも事実だ。
日本の多くのトレンドと同様に、新しいスポーツが注目され、そしてまたすぐに忘れ去られている。トレイルランニングも一時的なものなのか、それとも定着していくのか。この答えは、熱狂的なトレイルランニングファンも言うように、トレイルにあるのだ。    
 
Q4: 山本健一
アドレナリン・ハンター


山本健一は2008年の長谷川恒夫カップ・マウンテン・エンデュランス・レースを7時間39分という信じられないスピードで走り優勝した、今後の活躍を期待される若いトレイルランナーだ。彼は激しくレースを展開するものの、山を駆け抜けるのはレースに勝つことより、ランを楽しむことにあるという。彼と同じく、下り坂、スピード、興奮のとりこになった「アドレナリン・クラブ」の仲間もエクサイトを求めて山を駆け巡る。この若くやる気満々で恐ろしく速い男、日本の「アドレナリン・ハンター」を紹介する。

レイルランニングをはじめてどのぐらいになるの?
当時はトレイルランニングなどと言っていなかったけど、山は高校生のころから走っている。だからもう15年前だ。トレイルランニングという言葉をはじめて聞いたのは5年ぐらい前。

ティーンエイジャーなのに、なぜ山を走ったりしてたの?
高校で登山部に入部して、そのトレーニングの一環として僕らは15~20キロの荷物を背負って走っていたんだ。もともと山が大好きで、山にはよく行っていたんだ。

トレイルレースはいつごろ始めたの?
一緒にジョギングをしている友達から、「ハセツネ」という名の71.5キロのマウンテン・エンデュランス・レースのことを聞いんた。なぜか興味をもって、5年前に初めて申し込んだ。それからひざの怪我をして参加しなかった年以外は毎年参加している。

初めて参加した「ハセツネ」はどうだった?
とても苦しかった。それまで参加したレースでもっとも長いレースが21キロのハーフマラソンだったから、すごく距離が長く感じた。温かいお風呂やビールがちらついて、走ることに集中するのが難しかった(笑)。

最初のレースでは何を持って走ったの?
おにぎり15個。結局5個しか食べなかったけど。ポリタンに入れた水も持っていった。のどが渇くたびにパックからボトルを取り出していた。たびたび3~5分の休息をとって水分補給したり、栄養補給しなくちゃいけなかった。
   

それで何時間かかったの?
終えるのに11時間以上かかった。 

去年はハセツネを7時間39分で優勝をしたけど、どんなトレーニングをしたの?
トレーニングはだいたい仕事中にやる。僕は高校の体育の教師で、登山部の顧問をやっている。部活のトレーニングで生徒達は15キロの重りをバックパックにいれて山を走る。もちろん僕も生徒と一緒にやる。これを僕らは週6回ほど行うんだ。月に2~3回は、テント、寝袋などをバックパックに詰め込んで山にハイキングにいく。休みの時は一人で山へ走りにいくこともある。 

すごい量のランニングですね。他にはどんなトレーニングをするの?
生徒をボルダリングとクライミングに連れて行く。ロードランも取り入れるようにしている。遊びで陸上部の生徒とサッカーの試合もするよ。こんな感じで、僕のトレーニングは学校にいる間にやっているんだ。

トレーニングをしている時はどんなことを考える?
いつも日本でトップになりたいと思っている。トレーニングをする時は全力でやり、自分のベストの力を出したいと思いながら行っている。できるだけ早く走るように努力するけど、それが楽しくもあるんだ。タイムの記録を取ったりはしない。ただ山に出かけ、全力で走りながら、そして周りの景色も楽しむんだ(笑)。 
モーグルスキーもやると聞きましたが、これはトレイルランニングに役に立ちますか?
うん。冬はスキーをし、春から秋はトレイルランニングをしている。モーグルでは身体がモーグルのこぶの衝撃を吸収しなくてはいけない。そのためには身体をリラックスさせる必要がある。これはトレイルランニングについても同じ事が言える。身体を楽にすればするほど、石や木の根があっても簡単に走りぬけられる。スキーと同じでトレイルランニングも下りをハイスピードで走る時には瞬間的判断力が要求されるんだ。

それで山本さんはアドレナリン中毒なの?
ダウンヒルを走るのは大好き。いいダウンヒルが待っているならつらいクライムも気にならないぐらいだよ。

レース時には攻略があるの?
そういったものは全くない。大会の日は自分を完璧にリラックスさせる。できるだけのトレーニングや準備はやってきたのでレース当日にすることはもうない。大会の日はリラックスして、一切力を入れない。流れのままでいくだけさ。

競争相手などあまり僕は気にしない。ハセツネの時は自分のタイムも見ていなかったぐらいなんだ。だいたい僕はスロースターターで、後半になって追い上げるタイプ。かぶらぎつねよし(2007年の勝者)と横山みねひろ(優勝経験者)を追い越した時は、自分でも驚いたほどだった。でもあまり気にしないようにした。調子が良かったし、自分のペースを保って走り続けたんだ。

昨年のハセツネでは、どうして早く走ることができたと思う?
レース前の2週間、とてもよく身体を休めることができたんだ。1日8~10時間の睡眠を取り、バランスのある食事をし、トレーニング量を少し減らしたので僕の身体はよく休まり、レースに向かって準備することができた。

今回は何を持っていったの?
おにぎりは? おにぎりは持って行かなかった。今回はパワージェルを15個、ヴェスパサプリメント、ハイドレーションバックパックに入れた真水を持っていった

今年の目標また出場予定のレースは?
僕の今年最大のゴールはフランスで開かれるウルトラ・トレイル・ド・モンブラン。初めて海外で参加するレースだから、未知の世界なんだ。フィニッシュラインにたつことが僕の目標だね。国内では7月にOSJ志賀高原・野反湖トレイルフェスティバルと10月のハセツネ。とにかくできるだけ早く走り、そして勝つことを目指したい。

Trail Moments

最高のトレイルモーメントは?
前年に怪我をしてぜんぜん走ることができなかったから、ハセツネを完走してカムバックできたことがすごくうれしかった。また走ることができただけでなく、上位ランクに入れて驚きだったね。

最悪のトレイルモーメントは?
最悪だったのはなんといっても御岳100Kレースだ。準備もせず、ぎりぎりにエントリーして出場したレースだったんだ。70キロを越したあたりから、足、膝、節々が痛くなって走ることもやっとという状況だった。そのうえひどい股ずれをおこすし、こんな状況だからレースに集中できなかった。6位になったものの、その代償はしっかり払わなければならなかった。 

Profile: Kenichi Yamamoto
Name: Kenichi Yamamoto (山本健一)
Age: 29
Marital status: 既婚、4ヶ月の娘一人
Sponsors: Haglofs, Vasque, Oakley, X-Socks
Accomplishments: 全日本インターハイ登山競技優勝、2008年山岳耐久レース優勝
Favorite trail: 甲斐駒ヶ岳、黒戸尾根
Other interests: スキー、サーフィング、登山、トレイルランニング
Secret weapon: アドレナリン 
      
Trail Running Course Guides

もう走れる準備はできている? 今回は都心からもアクセスのいい人気の二つのコースを紹介します。どちらもよく整備されたコースガイドがあり、初心者から上級者まで楽しめること間違いなし。

Trail Name: Takao-Jimba Trail
Location: Tokyo 


Overview: 2008年版ミシュランガイドに載って以来、高尾山はとても有名になってしまった。都心からたった50分という便利さから、週末は家族連れ、学生、旅行客、ハイカー、トレイルランナーたちでとても混み合っている。

でもこれにめげないで、桜が咲く頃の景色などは最高にきれいだし、まさに走るためにあるようなトレイルなのだから。日本の地形を考えるとこんな場所はめったにない。できるなら混雑を避けるために平日に行きたいもの。
   
Details: ランは京王線の終点駅、高尾山口駅からスタート。往復26キロ(駅から始めて駅に戻る)を走るなら、荷物を駅の改札の外にあるコインロッカーに預けるといい。ケーブルカー乗り場までは町の小道を歩いていく。ここからリフトかケーブルカーで途中の地点間で行くこともできるが、もしあなたが真のトレイル・ウォリアーなら全部走りで通そう。
いくつかのルートがあるがみな頂上で交わっている。ルートによるが、だいたい頂上まで1時間から1時間30分ほどかかる。私のお気に入りは小川に沿って歩くピースフルな3.3キロの6番ルート。海抜599メートルの高尾山からは都心までが見渡せる。またビジターセンターがあり、地図やこのあたりの情報だけでなく、おにぎり、スナック、冷たいビールを買えるお店まで教えてくれる。    

高尾山から陣場へのトレイルは、ワイルドな泥道からスピードが出せる一本道まで変化に富んでいる。最低でも5箇所のお手洗い、ピクニックテーブル、見晴台、御茶屋があり、荷物を軽くするため途中で飲み物や食べ物を買いたい人たちにはとても便利。

トレイルにはたくさんの小さな丘があり、ちょっときついトレーニングのしたいランナーには最適。そんな道はごめんという人は、巻き道と呼ばれる平坦で楽な迂回路がある。この近道のシングルトラックは快適に走れる楽しいトレイルだ。

山を降りるルートは数々あるので、必ず「陣馬山」とかかれた標識にしたがうこと。途中、一丁平、城山、景信山、明王峠などを通り、陣場の白い馬の彫刻にたどりつく。

天を仰ぐこの馬は50年もここで何千人ものハイカーを迎えてきた、きっとあなたも温かく迎えてくれるに違いない。頂上では公園のようなオープンなスペースでピクニックやお昼寝を楽しむことができる。

食べ物、飲料水などが買え、お手洗いもあるお茶屋やお店が3軒ほどある。晴れた日には関東平野を見渡せるすばらしいパノラマが目の前に広がる。富士山、丹沢、南アルプス、日光、江ノ島、都心の超高層ビルも見えるという。

休息のあとは帰路を選択する。もっとも楽だが、長くかかるのは今まで来た道をまた戻るというコース。足の速いトレイルランナーの多くはそうするだろう。もう一つは、陣馬高原下バス停を目指して北へ進むという選択。しかしバス(JR高尾駅行き)は1時間に1本しかない。または西へ向かい、和田バス停からJR藤野駅に行くこともできる。

だけど、私のおすすめはとちやおねに沿って南を目指すルート。階段、一本道、ジグザク道があり、またある所では急勾配のところをワクワクしながら降りていく。トレイルはそこで終り、舗装道路へと出る。そこで左へ曲がりこの道を数百メートルのぼると、3つの小さな温泉があるしなびた村にたどりつく。疲れた体を休めるのに最高の場所なのだ。

なかでも眺めのいい大きなヒノキ風呂のある陣谷温泉は特別だ。私はこの眺めを「エデンの園」と呼んでいる。温泉に身体をうずめ目を閉じる。鳥のさえずり、小川の音に聞き入る。濃い緑の谷を見つめる。こんな時、日本のトレイルランニングはすばらしいと心から思う。

アクセス:新宿から京王線で高尾山口駅まで電車で行く。または中央線で高尾駅まで行き、そこから京王線に乗り換えて高尾山口駅までいく。乗車時間はおよそ50分。

USEFUL INFO
Maps
ハイキング地図:
 山と高原地図27「高尾・陣馬」
地形図: 八王子よせ

WEB CONNECTION
Keio Bus (Jimba Kogen Shita bus stop): http://www1.bus-navi.com Kanachu Bus (Wada bus stop): www.kanachu.co.jp
Mt. Takao:
Web: www.takaotozan.co.jp
Keio: www.tokotoko-takao.info
   
温泉
Jinya Onsen
Tel:
(0426) 87-2363
Web: www.mossu-san.com/hotespa/jinya/index.html
Jinkeien 
Tel: (0426) 87-2537
Web: http://www16.plala.or.jp/jinkeien/
Himeya
Tel: (0426) 87-2736
Web: www.navida.ne.jp/snavi/2796_1.html 

 
Trail Name: 箱根外輪山
Location: 神奈川県 

Overview:  箱根は温泉(ホットスプリング)で知られるが、最近ではトレイルランニングのホットスポットにもなっている。3,000年以上前にこの大きな火山が噴火し、赤い溶岩を山全体に噴出したのを想像してみよう。冷えた溶岩は巨大なカルデラとなり、ランナーにとっては最高のランニングコースなのだ。

ルートは「外輪山」と呼ばれ、山の上の尾根を走る。トレイルは古代のカルデラに沿っていて、目の前に開ける360度の景色は圧巻そのもの。ポストカードにあるような富士山、箱根の山々、芦ノ湖を見ることができる。
Details: 走りたい距離によってバスや電車に乗り、違う登山口へと向かう。もっとも長いルートは箱根湯本駅の傾斜のきびしいトレイルの塔ノ峰からスタートする。少し距離を縮めたいなら箱根登山バスに乗り、宮城野橋か宮城野で降りて明星ヶ岳を目指して走る。もう一つの短くていいコースは金時登山口から金時山へ直接むかうルート。    

どのルートを選ぶにしても、1時間から1時間半は尾根を目指して登らなければならない。尾根に着いたら金時山を目指して起伏するルートを西方に進む。あるエリアは広く、両側に背の高い植物が生えていて、そしてある場所は、叫びながら走りたくなる一本道になっている。

金時山の頂上に立つ。山は山梨と神奈川の2県をまたぎ、両方にそれぞれ御茶屋がある。早速お茶屋に入り、味噌汁を注文し、記念にゲストブックに名前を書く。もちろん富士山を背景に金太郎の斧と写真撮影するのを忘れずに。 
   

すばらしい眺めを楽しんだあとは、箱の湯本駅まで行くバスに乗るため金時山登山口へ向かう。あらかじめ時間を組んで、箱根の有名な温泉につかるのを忘れないようにしよう。

Getting There: 新宿から小田急線ロマンスカーで箱根湯本駅まで行く。または小田急線で小田原駅まで行き、箱根鉄道線で箱根湯本駅へ。ロマンスカーで約85分、小田原からだと約2時間の旅程だ。

TRAIL STATS
Route Distances and Times
Route 1: 箱根湯元駅からきんとき登山道バス停
Distance: 16K
Time: ハイク:9~10時間、ラン:7~9時間
Route 2:みやぎのばしバス停からきんときとざんどうバス停
Distance: 12K
Time: ハイク:6~7時間、ラン:4~6時間
Route 3:きんとき登山道バス停の往復
Distance: 5K
Time:ハイク:2~3時間、ラン:1~2時間
Best time to go 一番いい時期 All year around 1年中

Maps
ハイキング地図:山と高原地図29 「箱根」
地形図:箱根、関本、御殿場 

WEB CONNECTION
Hakone Navi: www.hakonenavi.jp
Hakone Tourism Information:
www.hakone.or.jp
English Map:
www.hakone.or.jp/english/youkoso/img-map/mapfull.gif
温泉情報
Yu-zo
Tel: (0460) 85-5791
Web: www.u-zo.co.jp