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特徴

2005
Issue 2
Blessings for Bali
By Charlotte Anderson & Gorazd Vilhar

2005年10月1日。爆弾事件の後、こよなく愛するこの島が、一刻も早く本来の美しい神の恩恵に満ち溢れる島に戻ることを望み、人々は古きヒンズーの儀式を通して祈りを捧げる。

 バリでは、人生とはつねに善と悪の衝突だとみなされている。個人のみならず、地域レベルでも、このふたつのバランスをとるために毎日、宗教上の風習を守っている。地元の人々は、すべては神の手によって作られていると信じ、神々にたくさんの感謝の気持ちを送る。神々は恵みを与えると同時に、邪悪な霊の力をなだめることもできる。だから、人々は良し悪しに関わらず、神々と精霊に対し目に見えるもの、見えないもの双方に供え物が捧げている。

運転手が耳に花をかけて、私たちを出迎えてくれた。今朝、自分の家族の祭壇に捧げた祈りの花だ。彼自身も、神の恵みを身に着けているかのように見える。ダッシュボードの上に・る小さなトレイには、毎日の安全を祈る彼の妻が捧げた供え物が・る。

女性は、家族の朝食を整える前に、まず最初に家のなかに先祖の魂が祭られる祭壇に供え物をする。彼女たちは、一日のほとんどを、良し悪しに関係なく全ての霊を喜ばせるために、供え物の準備に費やすのだ。自宅や、その周辺、地域、乗り物、会社、店。・らゆるところに、供え物は・る。バリ島では供え物をつくることがとても重要で・り、女性たちは“主婦”ではなく、“供え物をつくる”人となる。

この小さな島のなかには20,000 もの寺院が・り、寺院が・るところには必ず供え物が・る。すべての村に少なくとも3つの寺院、先祖の寺院、創造の神・ブラフマの寺院、死の寺院が・り、学校内には教師と生徒が知識の女神・サラスワティを奉る寺院が・る。ビジネスを営む場合も同じで、各々の寺院に毎日、祈りと供え物を捧げる。

産業の中心が農業で・るバリ島では、農場の経営者が、決まった時間に供え物をする風習が・り、雨をとめる、うるさい犬を静かにさせる、泣き止まない子供を静かにする、仕事がみつかる、などの願いとともに、今までにかなった祈りに感謝を払っているのだ。

また、つねに何かしらの儀式が行われているのもバリだ。突然、路上に上等なブラウスとサロンを着た女性の行列が現れ、頭の上に供え物をのせてバランスをとりながら、暑い炎天下の中をゆっくり歩く。まっすぐに背を伸ばし、腰をゆるやかに揺らしながら……。供え物は、いずれも豪華で、神々に供え物を捧げるという喜びからか、女性たちは疲れた顔を見せない。

バリ島が観光地として栄える以前、伝統的アートは神を喜ばせるもので・った。観光客向けのダンサーやミュージシャンは、今日でも村々で行われる宗教上の祭りや儀式で踊っている人で・り、ダンサーの美しさや優雅さ、若さ、動きの完璧さ、壮大なまでの装束や装飾品は全てが神を喜ばすためのものなのだ。

神々と良い霊が、人々の心の中に宿っているのと同様に、邪悪な霊も宿っていることを忘れてはならない。善と悪の衝突の中で、人間はバランスを保つように責任をとらされているのだ。神々への供え物は、高いところに置かれるが、邪悪な霊への供え物は、地面へと投げらる。毎日、路地・の道、家の玄関や門のそばなどのいたるところに、小さな供え物が落とされる。これらは、じきに通り過ぎる車にひかれて砕かれることになるだろうが、そこに込められた想いは、漂う精霊にすでに届いている。事故や災害が・った場所では、浄化の儀式が行われ、特別な供え物がささげらる。

10月1日の悲劇に際し、世界中の人々が扉に・る儀式や祈りの写真に感銘するだろう。ただ、このような宗教的な行事は特別なものなどではなく、つねに彼らの生活のなかに・るもので・り、この美しい島での全ての行いに関与するもので・るということを知ってもらいたい。

TUKANG BANTEN

イダ・アユ・マユンは偶然にも満月と重なった神々を讃える祭典の日、記念祭の準備に寺院内を走りまわる。彼女はブラーミンと呼ばれる最上カーストに位置するヒンズーの司祭の娘として生まれ、先祖から受け継がれた聖なるロンタルの文献を学んだ。供え物をつくる資格を得た彼女の持つ知識、技術、善意が70歳代になった彼女が現役で仕事を続けられる理由だ。

彼女は、7つの村で働きながら、家ーや地域のために、供え物の準備を手伝う。仕事の内容は、・らゆる大きさの供え物と儀式、重要な儀礼など幅広い。彼女を必要としている人は数多く、家でくつろげるのは1ヶ月に5〜6日だという。

彼女は、何百回、何千回も、儀式の供え物を準備してきた。そして驚くことに、全ての詳細を覚えているのだ。供え物の詳細が思い出せないときは、神なる力に祈りを捧げる。そうすると、すぐに記憶が戻ってくるという。間違いは許されない、だからこそ全てが正確で・ることが、彼女の責任なのだ。

最終的な儀式が始まる。彼女が、司祭に供え物の報告をし、続いて司祭が神に報告を告げる。明日になれば彼女は、また別の場所で忙しく働いている。「私はもう若くないけれど、神がそう望んでいるようなの。そして必要な力を私に送ってくれているのよ」と彼女は語る。

GETTING THERE

成田空港からシンガポールまで、シンガポールエアラインが毎日3便就航している。そのうちの1便はデンバサールまでの乗り継ぎ便と、同日の連絡をしている。残りの2便は、次の日の乗り継ぎとなる。ガルーダエアラインは成田からデンバサールまで直行便が出ており、帰途はジャカルタ経由となる。

WHERE TO STAY

花の岬を表すタンジュンサリ。その名前の通り 、壮大な庭に木がしげり、南国情緒溢れる花々が彩る。26のバンガローは、サイズも多様。竹などを使った伝統的なバリスタイルで建築されており、サヌールビーチの白い砂浜で、静かな温かいもてなしを提供する。www.tandjungsari.com