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特徴

2005
Issue 3
Climbing Mt. Fuji on New Year’s Eve
By Racer X (AKA Brad Bennett)

富士御来光登山

今年の大晦日、七度目の冬期富士登山に挑戦するジェフ・ジェンセンに聞く

 日本中が大晦日を祝うさなか、日本在住カナダ・アルバータ州出身のジェフ・ジェンセン(36歳)は20kmのバックパックを背負い、今年で6年目となる単独富士登頂を挑んでいる。

アルパイン登山経験歴18年のジェフは、初の富士登山で最短だが、急で岩だらけの「富士宮口」ルートを選んだ。彼にとって急な斜面は大して問題ではなかったが、荒れ狂う風は予想を上回り、ジャケットの中でないと呼吸もできないほどで・った。また、絶え間なく吹き飛んでくる溶岩石の危険にさらされ、身体も山から吹き飛ばされそうになる経験をした(残念ながら、この最初の登山は断念し、途中で下山した)。その後、4回の挑戦をして、2回登頂を成功させ、スバルラインができるまで一般的だった、昔をしのぶ「吉田口」ルートに切りかえた。それ以降は、毎年成功している。

いつも彼を暖かく迎えてくれるのは、この時期唯一営業している“里小屋”のご主人とその仲間たち。登頂の成功へと導いてくれる情報や、登山に必要のない荷物を預かってくれ、そして頂上へと続く登山口へと送り出してくれるのだ。彼の貴重な体験を聞いてみた。

レーサーX(以下RX) 登っている間って、いったいどんなことを考えている?

ジェフ・ジェンセン(以下JJ) 周りの状況に注意を払いながら、とにかく一歩一歩前に進むことだけさ。特に自分がスピリチュアルな人間だとは思わないけど、登っている・いだと頂上に着いた時、「自分は生きている」という気持ちで一杯になるんだ。

RX 冬の富士登山の難しさといえばなに?

JJ とにかく圧倒的な山で、到達するまでが長いよ。故郷のバンフの、どの山よりも2倍は・る。アプローチだけで疲れてしまう。テント、数日分の食料、雪を飲み水に変えるストーヴ、そのほか衣類も防寒対策のためにどうしても荷物が重くなるからね。

RX
 登頂を断念するときって、どんな感じなの?

JJ
「命さえ・れば、またいつでも来ることができる」っていう声が聞こえてくるんだ。もちろん待っててくれる家族の事も思い浮かぶよ。

RX この無謀とも思える挑戦について、家族の反応はどう?

JJ 妻はいつも笑顔で送り出してくれる。だけど、しっかり保険はかけているみたいだよ(笑)。毎年、頂上で小さな溶岩のかけらを家族のために持って帰ってくるんだ。

RX 一番、思い出深い富士登山っていつ?

JJ なんってたって2001年さ。寒い年で、持って行った温度計はー25度をさしていた。すれ違ったハイカーは数人で、それもみんな下りだった。だから21世紀の最初の御来光の瞬間、富士頂上にいたのは僕一人きり! お金で買えないものって、まさにこれだよね(笑)。