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特徴

2006
Issue 4
Beneath the Frozen Sea
By Rob Volansky

寒中水泳ならぬ新スポーツ誕生! 流氷ダイビング

実のところ、なにも流氷ダイングは目新しいものではない。ベテランの「旭川ダイブハウス」の日向野修や、「ロビンソン」の今井正志のような勇士は、厳寒期の北海道の海に25年も前から挑み続けている。オホーツク海を雄大に流れる流氷群を、冒険家でダイビング・ビジネスマンである彼らが見逃すはずはなかった。

チェーンソウで穴を

水温はわずか0度から-2度。30cmから2mの厚みの流氷下、閉鎖された特殊な環境のダイビングゆえ安全対策は徹底して行われる。
チェーンソーで三角形の出入り口が150mにわたっていくつかつくられる。安全対策スタッフのチームが組まれ、暖をとったり、着替えをするためのベーステントも張られる。ダイビング地点より長いガイドロープが、万が一のために用意され、常時入り口からおろされている。

通常、1人の参加者に対して1~2人のインストラクターがつく。視界と水温を考慮して潜水は水深10m以下、または潜水時間15分以内のどちらか。山本康弘経営の知床「ドルフィンホテル」では、ダイビング経験豊富な参加者には少し長めに行なうこともある。
なお、18歳以上であれば未経験者でも参加できる。その年の状況にもよるが、一月末から3月中旬の毎週末にツアーは行われている。

コストと必要装備

1日2回のダイビィングコースが約2万~3万円。通常料金にはランチ、寒冷地用レギュレーターのレンタル料を含む。また、多くののショプでウィークエンド PADI認定コースを用意している。必須アイテムのネオプレーン製ドライスーツ、BCD、マスク、フィンなどは別途料金がかかる。ダイビィングのとき、待ちの時間にはフリースジャケットや化学繊維製の暖かな下着も必要だ。

参加者

知床など、北海道で流氷ダイビングに訪れる参加者の90%は東京をはじめ、本州からの人々だ。その多くが、毎年のように挑戦に訪れるリピーターだ。だから、ツアーオペレーターたちは熱心に初体験者への参加を呼びかける。外国人客の多くがバイリンガル・ウェブサイトの「ドルフィンホテル」に集中するが、他のオペレーターでも英語を話すインストラクターがいる。

挑戦の理由
水は冷たく、危険でないわけがない。しかも低体温症や、感覚の麻痺、判断力も鈍ることもあるという。なのに、圧倒的にリピーターが多いとは? どういうことなのだろう。
サンゴ礁でのダイビングのように色彩豊かではないが、静かに、ゆったりと漂う氷河は今まで経験したことのない、まったくの別世界へと導いてくれる。ベテラン流氷ダイバーたちは海底を探求するが、初心者ダイバーたちは、ただ下から見上げる流氷の幻想的な世界や氷の下で出会うさまざまな生物に感動してばかりだ。
流氷ダイバーにとってのスーパースターは“シーエンジェル”、日本では“クリオネ”という名前でおなじみの巻き貝の仲間だ。この、ふわふわとダンスする、小さくかわいい生き物を氷山の下でみつけると、ダイバーたちは冷たさも忘れ狂喜してしまうのだ。
しかし、流氷ダイビングはときに過酷だ。経験を積んだスキューバダイバーでさえも、水温に適応するのに四苦八苦する。だが、過酷な環境下だからこそ味わえる達成感がある。なぜ挑戦するのかと、問われてみなそれを理由に挙げるのだ。
   
そうだ、ここは日本だ。冬の知床で流氷ダイビングをなぜやるのか自分でも考えていた時、感覚が麻痺してしまうような冬の海に、20年ものあいだ潜り続けてきた今井正志がいった。
「流氷ダイビングした後の温泉はそりゃもう格別よ」。
(Info)

流氷ダイブまでは、ちょっと……。という人は、凍える心配なく感動と驚き連続となること間違いなし、の“流氷クルーズ”はいかがだろう?
1月月末から3月の中旬まで、網走と紋別から1日8回行われる1時間ツアーがある。料金は大人3,000円、子供1,500円、就学前の子供は無料だ。
サンライズとサンセットクルーズがとくにいい。一番早いクルーズは朝5時45分出発。最終便は午後3時30分だ(運行予定はその日の状況によって変更されることもある)。
便数は多く、収容員は数百人だが、あっというまに満席になってしまうので早めの予約を心がけよう。防寒着をたくさんもって暖かくしていくこと。それから、カメラも忘れずに。
晴れた日、暖流の流れる太平洋へと向かいながら、巨大な氷塊が雄大に流れていく様は圧巻。オホーツク海一面、見渡す限りの白い氷原のなか、小さな船なら粉々にしてしまう流氷を砕きながら進んでいると、自然の大きさを感じさせてくれる体験だ。