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特徴

2006
Issue 6
Ine-Cho
By Lee Dobson

静かなたたずまいを残す小さな漁業の町、京都府与謝郡・伊根町はそのゆったりとした時間の流れから、日頃の忙しさを忘れさせてくれる。だが、たとえ助けた亀から招待を受けても、長居にはご注意のほどを。

いじめられていた亀を助けるおとぎ話『浦島太郎』。助けた亀に連れられ竜宮城に訪れた浦島太郎は、決して開けてはいけないという重箱をもらうわけだが、その箱を開けた彼は一瞬にして白髪の腰の曲がった老人に変身してしまう、という物語であることはご存知だろう。竜宮城での数日が、実は何十年という月日であり、重箱は彼を実年齢にしてくれたというわけだ。

実はこのおとぎ話の舞台が、京都の天橋立から北に16kmの位置にある町だということが何年もの調査と、議論を重ねた上、結論出された。

その町こそが、今回の舞台・伊根町であり、丹後半島の東部の宮津湾にひっそり静まる漁村である。この町では、伝説のとおり時間はゆったりと進むが、浦島太郎の様になることなくのんびりとできる。

伊根町は海岸沿いにおよそ230件の舟屋が並ぶの旅情あふれる町。山と海岸に挟まれ、土地が限られていたことから、水面ぎりぎりに舟屋が建てられている。また、入り江という立地条件のおかげで、時化のときでも湾内は比較的穏やかなのだ。

初期の舟屋は海中に柱をたて、舟を引き込み、魚を干したりする簡単なものであったという。しかし、屋根をつけるようになり、その後現在見られるような2階建てになった。村自体は200年の歴史があるが、調査によると一世紀前からこの地で漁をしながら生活していた痕跡があるという。

かつてこの町は捕鯨港でもあった。(ほんの数頭の)鯨を湾の沖で捕まえ、入り江まで持ち帰り加工していた。漁業はつい最近まで町の中心産業であったが、若者たちが都会へと出ていってしまうにつれ下火にならざるをえなかった。

しかし、今年は伊根町振興計画の政策により、いっそう観光客が訪れるだろうと町の人々は期待する。観光客を待ち望む村人のなかには、舟屋を民宿に改造するものもいるほどだ。

しかし、この伊根町の人々はまったくもって気さくである。町の唯一のメインストリートを歩いていると、いろいろな人が声をかけてくれる。干してある魚の写真を撮ろうとしたら、舟屋の住人がなかから出てきて室内に招き入れてくれた。

1時間半もすると、舟屋の主は僕の知り合いとなり、もらった地域の歴史の本を脇にかかえ、さっき写真にとったアジまでお土産にもたされ、もと来た道に立っていた。

町は釣り人やカヤックを楽しむ人にも好意的で、町役場を開放して宿泊施設として使わせてくれるほどだ。

もし、この町に訪れる機会があるならぜひ立ち寄って欲しい店がある。蔵元・向井酒造だ。昔から男性社会と決まっている酒造りの世界で、女性杜氏が頑張っている。彼女のつくりだす酒はキリッとしてフルーティー。もちろん、ワインのごとく地元の魚料理にとてもあう。

伊根町の全景が見渡せる「舟屋の里公園」は必見だ。公園には観光案内センターもあり、町の情報のほか名産物も販売しているし、レストランでは地元の味が試すことができる。

一泊旅行もできるが、あまり遅くに到着するのは避けた方がいいだろう。トイレなどの施設は完備され、24時間使える。フェリーにのって30分の周遊で、沖合いから将棋のコマを並べたような舟屋をじっくり鑑賞できる。僕が行った日はあいにくの天候で、運行は取りやめられていたのが残念だった。

GETTING THERE

伊根町は大阪、京都から車で約2時間30分。大阪、京都からともに天橋立駅まで列車がでており、乗車時間は約2時間。また天橋立駅より伊根町までバスもでている。(50分)時刻表、イベントなどの詳細は、

Web: http://www8.ocn.ne.jp/~inetour/index.htm