>  屋外日本雑誌  >  Issue 7 : 5月 2006  > 特徴 >  Moroccan Memories

特徴

2006
Issue 7
Moroccan Memories
By Charlotte Anderson & Gorazd Vilhar

砂漠、山々、そして海が背景の物語、それがモロッコ。ナチュラル・キャンバスに色彩豊かな歴史と文化が時をこえ、描き続けられ、この地を訪れるものに強烈な印象を焼きつけてやまない。

ヨーロッパに手が届くほどの距離に位置し、20世紀初頭のフランスとスペイン植民地時代の影響を濃く残す。しかしモロッコはアフリカの一部であり、定住人のベルベル族、アラブ、サハラ人戦士、貿易商人、移民と奴隷などからなる古都だ。14世紀前のイスラム教の預言者モハメッドの子孫・モハメド6世を国王とするイスラム教国家である。

モロッコはアフリカの北西端に横たわり、地中海と北大西洋に面している。フェズからムクネス、タンジールからカサブランカ、タルーダントからティズニットまでと魅力的な町並みが点在する国である。しかし、もっとも旅人をひきつけるのはマラケシュ地区であろう。
マラケシュ中心地のメディナ(旧市外)には、町どこからでも望める、70mの高さを誇るクトゥービヤ・モスクのミナレットがある。1日5回、ムアッジンが信者に礼拝を呼びかける。最初の礼拝は夜明け前という。   
マラケシュのあらゆる人々、つまり地元の人、観光客、地方の人がジャマ・エル・フナ広場に集まる。この巨大で目まぐるしい広場には、騒々しい屋台、占い師、薬草売り、魔法薬のほか、ヘナ・アーティスト、歯を抜く者、ジュース屋、へび使い、ミュージシャン、ジャグラー、曲芸氏、ストーリーテラーまで、様々な人々が集まる。そこから数歩と離れていないところに、広場と同じぐらい活気にあふれ、色とりどりな品物が並ぶ市場・スークのアーチ門がある。

赤茶色はマラケシュの色。建物や床には、ポリクロームのうわ薬をかけたタイルが使われる。この町の家々の扉は、これまた目が覚めるような鮮やかな色に塗られている。幸運のシンボル、モハメッドの娘のファティマの手が彫られていたり、メタル製の扉にかけられたりもする。古い宮殿は、手入れされ、豪華な住居としてまた利用されたり、雰囲気あるホテル、レストランや美術館へと変身されたりている場合も多くある。廃墟と化したバディ宮殿の近くに、目を見張るようなサアード朝墳墓群があるのもユニークだ。

カオスの町、モロッコの後は、静かな海辺の町へのドライブが心地よい。エッサウィラは、マラケシュをはるか遠くに感じさせる。海は魔法のように、疲れ果て、余裕の無いわたしたちに、人間らしさを目覚めさせてくれる。そして心まで落ち着かせてくれるような気がする。ここは紀元前1世紀に始まった、ローマ時代のローブに貝から抽出された色鮮やかな美しい紫色の染料・古代紫の生産地でも知られる。長きにわたってエッサウィラは海賊達の要塞であった。現在の町は18 世紀にサルタン・モハメッド・ベン・アブドラに監禁されていたフランス人の設計によって作られた。

街はかつて敵から守ったサーモン・ピンクの壁にかこまれているが、現在はただやさしく、大西洋風を受け止めている。様式こそアラビア風だが、明らかにこの街を設計した自分はエッサウィラの道を自分の思いどおりにつくり、他の街と異なり、道幅を広くしてより明るく、絶えず貿易風が吹きける町にした。

朝の港は活気にあふれる。カラフルに塗られた舟や、守り神であるファティマの手が描かれたボートが魚を乗せ、港へ帰ってくる。水揚げされた魚は、選別され、競りにかけられる。次の漁に備えて網のほつれは直され、針にえさが取り付けられる。漁師を始め、町の人、旅行客が、港に並ぶ屋台でこんがりと焼かれた新鮮な魚を楽しむ姿もみられる。

エッサウィラの女性は例外なく、ヴェールをしている。白、または黒に近い茶色のウールのハイクに、頭からつま先まで身をおおう。顔にはシルクのスカーフをする。朝の市場では多くの女性が集まるが、日中、日没後までは外出しない。昼間は男性だけの街なのでは? と錯覚してしまう。

しかし、夕方になるとヴェールを纏った女性たちが再び海岸に姿を現し、一人、二人、または三人でやわらかに消え行く夕日にたたずむ。そんな、時がとまったような瞬間を目にする時、対照的なマラケシュの色と模様の強烈な刺激、混沌とした群集とともに、忘れがたい旅の思い出ができる。

GETTING THERE

パリへは成田からエール・フランスが毎日4便、大阪からは毎日2便就航。カサブランカへはパリから毎日3便、ラバトへは毎日一便が就航されている。なお、モロッコの航空会社「Royal Air Maroc」も、パリからマラケシュまで就航されている。Air France: Tel. (03) 3570-8577, www.airfrance.co.jp. Royal Air Maroc: www.royalairmaroc.com