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特徴

2006
Issue 9
The Yogic Path
By Patrick Oancia

今、偉大なる古代哲学に共鳴して、ありとあらゆるタイプの人がヨガに注目している。セレブリティー、サーファー、かつてOLと呼ばれた人たちが、自己を失いかけそうな過酷なる現代社会に対して、ヨガで鍛えた心身を羅針盤とし、より豊かな生活へと導いてくれることを実感しつつある。

この2年間に、東京だけでも10数カ所のヨガ・スタジオが新設。ヨガは日本全国で今、もっとも急成長をしているヘルス・ビジネスであり、ストレスの多い現代人に健康的なライフスタイルを提供している。

しかし、1995年のオウム真理教の地下鉄サリン事件の後、ヨガの信憑性が問われたことがあった。というのも、オウムがヨガを利用して新弟子を勧誘していたのだ。無理もないだろう、この数年間はヨガの人気は低迷してた。

運動不足解消、ストレス・コントロール、また、そのスピリチュアル性から自己の成長を願う人など、ヨガを始める人の動機は様々だ。ヨガを極めるということは、自我・身体・精神の完璧なる調和である。ヨガが身体面、および精神面に効果をもたらす事はすでに証明されている。しかし今、人々が求めているのはヨガ的ライフスタイルなのだ。ヨガを日常にもたらすという事は、自己実現、自己鍛錬、自己を取り巻く環境と強調して生活するという事である。

すべてが同じではないのか?

ご存知のように、ヨガは新しいものではない。何千年という歴史がある。だが、常に変化し続け、新たなスタイルが生まれている。ポーズを中心としたヨガは、ハタ・ヨガから来ている。ハタとはサンスクリット語で、「ハ」は太陽の呼吸。「タ」とは、月の呼吸という意。この有名な流派のヨガは、肉体的修行が主となり、身体は精神があやつる乗り物のようなものであり、「厳しさを伴う修行道」と考えられている。

一般にはよく知られていないヨガには、ジュニヤーナ・ヨガ(智恵の道)、カルマ・ヨガ(無我の道)、バクティ・ヨガ(愛と献身の道)、マントラ・ヨガ(神聖な音の道)、ラジャ・ヨガ(王の道)、タントラ・ヨガ(密なる道)などがある。

ハタ・ヨガのなかにも、現代になってできた様々な種類、なかでもシバナンダ・ヨガが代表的だ。これは、肉体的トレーニング、瞑想、呼吸を包括したものである。また、アナンダ・ヨガは、黙想的で穏やかであり、アイアンガー・ヨガは解剖学的に分析されたアサナ(ヨガのポーズ)を行うこと主とする。

その他、伝統的なヨガとはまったく関係のない“ヨガ”を教えるインストラクターも多数存在する。これらのヨガは、フリー・スタイル・ハサ・ヨガと呼ばれる。よりヨガの理解を深め、ヨガの運動の可能性を追求するうちに、違うスタイルが融合されたり、また格闘技や舞踏の動きも取り入れらたりと進化した。

まずは始めることから

東京などの都市部には、有名なヨガ・スタジオが多数ある。多くのフィットネス・クラブも、ヨガ・クラスを主催している。違うインストラクターのクラスをいくつか体験して、どんなスタイルがあるかを知るといいだろう。何を目的とするか、自分のスケジュールに会うか、そうしたことを考慮して選ぶことが重要だ。習い始めてから、自分の思いが変わることもあるだろう。だから先入観を持たず、他のスタイルも試す。自分にあうスタイルを、きっと見つけることができるだろうから。

伝統的なヨガは一般的に、肉体的な鍛錬を要求される。たとえばアシタンガ・ヴィニアサはレベルと経験にあわせるが、決まったいくつかのアサナのセットを何回も繰り返し行う。フィットネス・クラブで教えられているヨガ・クラスはハタ・ヨガをベースにした、初心者向けで簡単なポーズを、精神面よりフィットネス、ウェイト・ロスなどを目的にしたパワー・ヨガが多い。また、リラックスを目的としたジェントル・ヨガ、室温を高くした部屋で行うホット・ヨガも、多くのヨガ・スタジオ、フィットネス・クラブで主催されている。

ヨガに夢中になっているのは誰か?

ヨガをやっている人は多種多様である。ストレス解消を目的とするOL、グラフィック・デザイナー、ミュージシャン、ITエンジニア、肉体労働者、高校生などなど。妊婦の方や、アスリートも例外でない。習慣的にヨガをすると、すべてのスポーツに役立つ。なぜなら、ヨガがパフォーマンス、バランス感覚、柔軟性、集中力また体力を向上させるからだ。
   
次回からは、ヨギ(ヨガを習得する人)への道、そして国内のヨガ・コミュニティの様々な人々の興味深い話、インストラクターからのアドバイス、読者のヨガの疑問を紹介していく予定だ。

オアンシア・パトリック 香港生出身のルーマニア・スペイン系カナダ人。日本滞在年数18年。過去10年間ラジャ・ヨガを学ぶとともに、東京・代官山と表参道にあるヨガスタジオ「ヨガジャヤ」のディレクターであり、チーフ・インストラクター。ミュージック・プロダクション、ライブ・パフォーマンス、DJを始め、アートやグラフィック・デザインの分野でも活躍するマルチタレント。パトリックへの意見・質問は、patrick@outdoorjapan.comまで。

ラジャ・ヨガの8支側

次号にて、さらに詳しくラジャ・ヨガの8支側について説明するが、一般に最も知られるのがヨガのポーズであるアサナ。パタンジャリの「ヨガ・スートラ」によると、このアサナは古代の教義の一つのアプローチでしかない。ヨガの聖人であるパタンジャリは、紀元前から受け継がれた精神的自由に至るヨガのすべてを記述し、経典を完成させた人物である。彼の経典によると、ヨガにおいて、究極の目的に達するには、8つの段階を踏むことが不可欠だという。これらの段階を、ひとつひとつ修行することで自我・身体・精神を調和。自己成長を目指し、悟りを開くところまでに達する。後に、ハタ・ヨガのマスター達は、瞑想も取り入れていく。

ヤーマ:5つのヤーマは他人や自分の置かれた社会に対する、行動や態度に関する。
ニヤマ:5つのニヤマは自尊心などの自分に対する態度および、肉体的および心的浄化を教える。
アサナ:ヨガのポーズ。身体を鍛えることによって心を研ぎ澄ます。
プラティヤハーラ:感覚から自分を切り離す。瞑想、呼吸法、ヨガ・ポーズに打ち込み、外界の世界を断ち切り、内面へと集中していく。
ダーラナー:心に一点をとどめて動かないなど、集中力を高めるトレーニング。
ディヤナ:瞑想。平静な心、乱されることの無い集中力で自我の認識力を高める。
サマーディ:8支則の最終段階である、自我の認識を超えた、歓喜の領域にいたること。

ヨガの歴史

ヨガの教えは、口頭によって長年語り告がれてきたものであり、また秘密裏に教えられてきた性質上、ヨガの歴史の真相を語ることは困難である。初期の記録は、ともすると壊れやすい椰子の葉に記述されており、保存状態が好ましくなかったり、なかには紛失したものもある。それでも、インドのブラマン・ヴェデックによって5000年以上前に書かれたということだけは分かっている。

ヨガの効果

ヨガは自律神経の正常化、また、身体の隅々まで酸素がいきわたることで、呼吸器や心肺機能を高め、血圧を下げる。身体が柔軟になるなど、多くの効果がある。心理的効果では身体的、運動感覚、睡眠、記憶力の向上などがみられる。心身症や、うつ病にも医学的効果があると証明されている。

現代のハタ・ヨガ

アナンダ・ヨガ、アヌサラ・ヨガ、アシタンガ・ヴィニアサ・ヨガ、ビクラム・ヨガ、インテグラル・ヨガ、アイエンガー・ヨガ、クリパル・ヨガ、クンダリニ・ヨガ、シバナンダ・ヨガ、スヴァローパ・ヨガ、ヴィニ・ヨガそしてバーラタ・ヨガなどがある。