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特徴

2006
Issue 10
The Shores of Normandy
By Charlotte Anderson & Gorazd Vilhar

フレンチ・ノルマンディーは白い断崖、誘うような小石の海岸と、長い砂浜の海岸に縁取られている町。首都から、わずか時間しか離れていないこの英仏海峡沿いの町で、休暇を過ごそうと、昔から、多くのパリジャンが訪れる。

毎週土曜日は、ひなびた漁師町のオンフルールに市がたつ日。ボートやヨットがたくさん係留された「オールド・ハーバー」のすぐそばにはノルマンディーで最も素晴らしい景観といわれる、細く、縦に長い18世紀独特のタウンハウスが立ち並ぶ。
漁師の妻達がオンフラー名産の小さくて甘みのある、クレベッテ・グリセと呼ばれるエビを売っている。そのほか、市場では何種類もの手作りチーズ、ソーセージ、頭の毛だけを残して処理してある鶉、農家の焼きたてパン、新鮮なマッシュルーム、野イチゴ、そして忘れてはならないノルマンディー名物、りんごなどが並ぶ。   

急に雨がぱらつくと、旅行者やリッチなお客を目当てに並ぶショップやギャラリーにどっと人が押し寄せる。地元の名産の食べ物や、飲み物を扱う「グリボイエ」に集まった客が、ノルマンディー地方で作られるりんごのお酒、カルバドスやカルバドスとアップル・ジュースをミックスしたポムオウを味わう。

ラ・コテ・ド・フルーリ、花の海岸はオンフルールから西へと広がっている。1860年にナポレオンⅢ世と皇后ウージェニーが海峡のトゥルーヴィルに移ると、他の貴族もたちまちそれにならった。

皇帝の従兄、モルニ公爵と、その仲間は隣町のドーヴィルに落ちつき、競馬場を作り、瀟洒なディナー・ダンスに興じるほか、潮風にあたり当時流行っていた海水浴も満喫した。1900年初頭にカジノも作られ、町は社交界の中心としてにぎわい、ホテル・ノルマンディはドーヴィルを訪れるエレガントな旅人をもてなした。

ドーヴィルは現在でもパリジャンのお気に入りで、「パリの21区」などと呼ばれる。この町の夏の朝はゆっくり、静かに500メートルの長さのプランシェ遊歩道から始まる。人々は「バー・ドゥ・ソレイユ」で朝食をとりながら、通り過ぎる人を眺める。恰幅のいい紳士がひと目で血統書つきとわかる犬を散歩させる。気持ちのいい空気のなか、通り掛かりの男がランニングをしたかと思うと、その後に不健康にもアメリカン・フィルム・フェスティバルのスターの名前が書かれたガードレールによりかかり、一服。少し先の海岸には乗馬を楽しむ人の姿も見える。若く美しい素足の女性が子供の手を引き歩いてゆく。もしかして、素顔のハリウッド・スターかもしれない。

見渡す限り、きれいに均された砂浜に何百という色とりどりの閉じられたパラソルが点在する。日が昇り、海水浴のお客が来るにつれ、パラソルが一つ一つ開かれていく。海峡の水は冷たいものの、読書、砂遊び、昼寝をするため人々がビーチに集まる。朝、白くもりあがった雲が青空に浮いていても、対岸を眺めてル・アーブルの街が見えなかったら、次の瞬間こちらも、もう雨が降り出しているというほど雨の多い地方なのだ。

ル・アーブルの海岸線を北上すると、何世紀にもわったって画家や作家を魅了した石灰岩の景観が広がるエトルタにつく。風と波によって浸食された、小石の海岸を前にした小さな村がある。急な道を登った岬の西側にはゴルフ場があり、東側にはこの港から漁に出る漁師の安全を祈願するノートル・ダム教会が立つ。

ここのエトルタの牡蠣は、魚介類に目のないマリー・アントアネットの大好物であった。生きた牡蠣を帆船で運びこみ、海水と川から流れてくる淡水が交わるところに再び沈め養殖する。すると数ヵ月後、牡蠣はいっそう旨みを増す。そして漁獲されるとすぐに、パリのマリー・アントアネットの元へと馬で運ばれていったという。

いまでも豊富で新鮮な魚介類は観光名物であることは変わりない。伝統的なノルマンディー料理はこの地方の三大特産物である魚介類、乳製品とりんごをとりわけうまくひきたてる。ノルマンディーは町だけでなく、海の情景も魅力的で、訪れる人を楽しませる。海辺の町独特の料理を一度味わえば、きっと忘れられない旅になるだろう。

GETTING THERE
成田からパリへエール・フランスが毎日就航。パリのサン・ラザール駅からSNCF(フランス国鉄)でノルマンディーへ。

WHERE TO STAY
一世紀ほど昔から、ホテル・ノーマンディー(現在はルシアン・バリエール・ホテル・カシノのノルマンディー・バリエール)は、フランスや海外の資産家や著名人、また昔を偲びつつ、贅沢な快適さを味わいたい一般客をもてなしてきた。クロード・ルルーシュ監督の「男と女」を含む20を超える映画のロケにも使われている。優雅なロビー、豪華なフレンチ・カントリースタイルの客室、ドーヴィル究極のホテルと言っていい.。www.lucienbarriere.com