>  屋外日本雑誌  >  Issue 12 : 11月 2006  > 特徴 >  The Call of the Kousa

特徴

2006
Issue 12
The Call of the Kousa
By Nate Mathews

いったい、どこの国でムースとラクダを一片に見られるというのだ?
夏に雪、自家製ウオッカや馬乳チーズ。そして一生をテントで過ごす。


いつも知らない土地を旅し、その土地の文化を学ぶことが好きだが、正直いって、モンゴルに行くことは札幌に行くまで考えても見なかった。僕は2000年の9月に札幌に移り住んですぐ、毎日毎日降り続く雪には本当に驚いた。そして間もなくウィンター・スポーツにハマっていった。

翌年の2月か3月、仕事から帰って自転車が不思議な埃をかぶっているのを発見した。最初はたまたまかと思ったけど、周りにある車も同じような不思議な埃をかぶっていた。次の日、同僚から、それは黄砂だと知らされた。

この細かな砂つぶはコビ砂漠から、年1~2回強い風に乗って日本海を越え飛んでくる。札幌っ子にとっては当たり前だが、僕には驚きだった。その後、砂と流砂が北京と、その他の都市に及ぼす影響を調べてみた。そして、モンゴル、正確にはゴビ砂漠についての興味が湧いてきたのだ。

僕は大西洋岸のカナダ生まれ。海辺の暮らしに親しんでいた。しかし、海を愛すとともに、砂漠での孤独で厳しい環境にもあこがれの念を抱いていた。

最初に訪れた砂漠はアフリカのナミブ砂漠とカラハリ砂漠だった。これらの雄大な自然に触れ、もっと砂漠を探求してみたくなった。まるでモンゴルが自分を呼でいるかのように、ゴビに行かなくてはいけないと思った。

列車でロシアの町々を経由して、ようやくモンゴルの首都ウランバートルに辿り着く。その後2週間半ほど滞在し、ゴビ砂漠まで行くつもりだったが、実際どうなるか見当がつかなかった。しかし、すぐに車と運転を手配してくれるツアー会社がたくさんあることを知った。

安く行こうと、同じ目的のスイス人カップルと一緒に回ることにした。英語の話せない運転手、古いけどまあまあの乗り心地のロシア製ジープというサービスに、一日15ドルずつ払った。きっちりとした予定はなし。あるのはテントと、あまりおいしくない食料のみ。

首都を離れ、一日ほど車で移動すると、気がつくのは道がないということ。広大な草原を行く車は、運転手の直感頼みで進む。彼がいなきゃ、僕らは完璧に迷子だ。

道中、遊牧民の移動式住居であるゲルを訪問させてもらい、羊の脂肪、自家製ウオッカ、馬乳で作ったチーズなどをご馳走になる。大したコミュニケーションは取れなかったが、見知らぬ僕らに親切にしてくれ、違う文化を持つもの同士、お互い貴重な体験をした。

モンゴル、特にゲルの中ではいろいろ守られなければならないエチケットがある。都会の便利な生活などまったく別世界のところで暮らす、遊牧民だからこそ、迷信を信じるのも理解できる。だから僕らは彼らに何か失礼な事をしていないか気をつかった。彼らの多くは何も持っていないと言っていいほど貧しい、それなのに、僕らに何かしてくれようとするような人々だった。

数日後、目の前に現れたのは息を呑むような広大な景色。手つかずの自然の美しさに、表す言葉もない。ジープの窓から見える風景に飽きることなく、毎日、毎日、ただ感動し続けた。もし、ここに住んだら、テレビなんか要らないだろう。だけど、ここで暮らすという事は実際どうなんだろう。

野生のラクダや鷹以外は、車の窓から動物を見かけないが、毎日見かけるのは、家畜をつれて遊牧する小家族。夏、日中の気温は35度ほどまでに上がるが、夜は時々雪が降るほど寒くなる。氷点下40度にもなる冬の暮らしは、僕らが想像できないほどの過酷さに違いない。

僕らはお腹がすいた時に、食べ、疲れたら、キャンプするというように旅を続けた。僕らのドライバーは砂漠に向かって、先へと進んでいった。時々、途中の町でガソリンの補給をするものの、それ以外、目の前に現れる素晴らしい景色にただ感嘆する毎日だった。

ゴビ砂漠の90%はナミブ砂漠とカラハリ砂漠のような砂丘ではない。もっと平たく、表面は硬く、草が点在している。しかし途中で砂丘をみつけ、帰途の事も考えて進むのはここまでとした。

砂丘までの道のりを歩いているとき、ロイ・チャップマン・アンドリューが世界で最初の恐竜の卵を発見した場所に寄った。映画「インディ・ジョーンズの冒険」は、彼の冒険を元にしている。赤色の崖に大きな穴があるような場所を散策すると、過去の世界を垣間見ることができたような気がした。

翌日、ようやく目的地に到着した。砂丘を目にして、草原とのコントラストにまた驚く。僕の脳裏に刻まれて一生忘れることはないであろう景色だ。ラクダに乗って砂漠の丘をおりると、狼の足跡がある。

その夜、満月の下、焚き火を囲みで食事をしているとき、この旅を振り返って思いにふけた。もうすぐ僕らは近代社会に帰っていく、短い期間だけど、モンゴルでの体験は永遠に忘れないと。

モンゴルは、とても対照的で極端な国だ。南にはゴビ砂漠、北はムースが森や沼を歩き、マスがあふれる湖にビーバーがダムをつくる。この景色は、まるでカナダのようだ。西はカザフスタンの山々と隣接し、鷹狩りをしている人々がいる。

モンゴルはまさに、これから旅行者が詰めかける場所になるだろうと感じた。僕が接したモンゴル人は旅行者が急に増えだしたため、金のため遊牧をやめ、都会に移ったという。彼らはまた、旅行者が草原の奥地の遊牧民を訪れることによって、貧しい遊牧民の生活も多少良くなっていると教えてくれた。

Travel Info

ゴビ砂漠ツアーは、ウランバートル市内のツアー代理店で申し込める。ほかの旅行者から、どの代理店がいいか情報を集めることをすすめる。一人旅や少人数で旅行をしているなら、ホテルなどで友人をつくり、気の会う旅行者と一緒に申し込むと旅費が節約できるだろう。

 宿泊施設は多いが、この業界の浮き沈みは激しく、ガイドブックやインターネットで最新の情報を確認したほうがいい。ウランバートルは比較的安全だが、夜は気をつけ、グループで行動したほうがいい。スリが多いので気をつけること。ベスト・シーズンは夏だが、極寒を体験したいといって、冬に訪れる人もいる。

Getting There


成田からウランバートルまでモンゴル航空で直行便がある。韓国航空でソウルまたは北京を経由しても行ける。もっとも景観を楽しめるは北京から列車(約28時間)かけて、万里の長城をみながら行く方法。いずれにしても、出発前に必ずビザを取っていくのを忘れないように。