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特徴

2006
Issue 13
Lost to the Avalanche
By Dave Enright

2005年の大晦日の早朝、突然電話が鳴った。

その電話の向こうから伝えられた親友の事件に、言葉を失った。彼は雪崩に巻き込まれたという。雪崩の表面に体が埋まったところで見つかった、という。両足の感覚は? 身体は動かせるのか? 松本の病院までヘリコプターで搬送されている途中らしい。
自問自答を繰り返す。「大丈夫か?」、「自分に何ができるのか?」、「彼の両親に連絡しなくては」、「何故、こんな事故が起きたのか」、 「何故、自分の親友が巻き込まれてしまったのか?」。    

雪崩の件数と、その犠牲者(バックカントリーにおいて17名)は2005年から2006年にかけてのシーズンが近年で最も多かった。スキーリゾートでも同様だ。12月の降雪は、過去80年間で最も多く、天候の変化も激しかった。そのため弱層が多くつくられる状態になっていた。

我々のように、バックカントリーを愛するものにとって、スキーリゾート以外のツアーについてもっと的確な決断をしなくてはならないという事でもある。死亡者数が多かったのは天候だけではなく、バックカントリースキーヤーが、より急な斜面、より危険な地域に入ったことにも原因があったと思われる。

日本では過去10年のあいだで、これまでよりも冬山 やスキー場の滑走区域外に入る人が急増している。なぜ増えたのか? 景色が信じられなく美しいからだろうあ? そこに立ち入ることは、挑戦といいようのない悦びを我々にもたらす。メディアやバックカントリーに関連する企業も、自然の雄大さを経験したいという人々の興味と情熱に拍車をかけている。しかし、この時期は非常に危険な時期と重なっていた。

バックカントリーに入ろうとする全ての人々が、的確な判断、リスクの大きさを計り、喜びを感じ、また生み出す事を望む。しかし、冬の自然を楽しむひとりとして私たち自身が 知り得る限りの情報、知識、最悪の事態に備える術を身につける必要がある。

わたしの友人は、二度と歩けないかと思われるほどの治療を2ヶ月間、耐えなくてはならなかった。彼はいま、なんとか杖をついて歩けるところまで回復したところだ。しかし、車を運転できるように足が回復するには、さらなるリハビリとトレーニングが必要という。雪崩で彼自身を失わずに済んだことは全ての友人、家族にとって最大の幸運である。

(Profile)

デイブ・エンライト 「カナダ雪崩協会公認」インストラクターであり、雪崩安全講習を教える「日本雪崩ネットワーク」のシニアインストラクターも務める。 ACT(Avalanche Control Team)の創設に関わるとともに、「白馬エヴァーグリーンアウトドアセンター」チーフガイド兼ディレクター。