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特徴

2007
Issue 14
Soul Searching on the Northern Island
By Chuck Olbury

[Skiing Japan], enter, click.....[Backcountry ski Japan], enter, click.....[Hokkaido powder], enter, click.....

部屋に閉じこもって、コンピューターに向かい、どこに住もうか、いろいろなコンビネーションのキーワードをサーチエンジンで検索。来日して3年、ウィンターシーズンも3回経験した。

その前は、といえば、パウダーを追いかける快楽にはまってしまい、一文なしになりかけた。それではいけないとスーツにネクタイ締めて、東京の典型的サラリーマンになるべく挑戦するが、やはり現代社会に適応でずに3年後にドロップアウトした。

澄んだ山の空気と雪のあるところで生活をしたい。そう考え、次の場所をさがした。雪に埋もれたスキーヤーのイメージが頭から離れず、結局、北海道しかないと思った。何時間もコンピューターで調べた結果、選んだ場所は北海道の真中にある富良野。

毎年、何千人というオーストラリア人が北海道を訪れるが、行き先はニセコ。探究心のある人だけが、富良野など他の混み合っていないスキーリゾートに行く。富良野は地理的に北海道の中心に位置するため、「北海道のへそ」と呼ばれ、それにちなんだ「へそ祭り」(町民が、お腹に顔の絵を書き、陣笠をかぶりパレードをする祭り)にはちょっと驚く。

沿岸地方の山々にくらべ、内陸の富良野は快晴の日が多い。その上、例年の積雪量は9m以上という。
   
富良野へ引っ越しする前の2ヶ月間は、退職届を出したり、背広をホームレスのお父さんにあげたりと準備に忙しかった。そして、とうとう車で富良野入りを果たした。「北の峰スキー場」は、市の中心から5分。ホテルやペンションなどが立ち並び、リフト乗り場へはたったの5分という場所が、僕の新しい家となる。

富良野のスキー場は、他の道内のスキー場でもっとも傾斜があり、ダウンヒルやスノーボードの国際大会が行われている。好条件となれば、北海道で一番いいゲレンデといっても過言でない。

頂上から望む、火山灰たなびく十勝山脈のからの眺めは素晴らしい。日が暮れると、街並みは美しい夜景となる。

スキー場オープンの初日、きれいな女性が「山へ、ご案内しましょうか?」と声をかけてきてくれた。こんな状況を、パートナーが理解してくれるはずがないだろうから丁寧にお断りした。彼女が立ち去るときジャケットの背中を見ると、「スキーホスト」とプリントしてあった。

富良野は外国人スキーヤーを迎えるため、富良野観光協会と地元のボランティアがスキーホスト役をつとめている。ライブ・ミュージックとともに行われるウェルカムナイト、お茶会などの文化的イベントが一年を通して計画されている。

 富良野の魅力は、ここがただのリゾートではなく、本当の日本の美しさを体験できるところにある。町は自然美が保たれ、静かでチャーミングなところを残している。それに、地元の人は観光客にとても親切だ。

初めて酒場のあるエリアに行ったとき、中から笑い声が聞こえてくる居酒屋を偶然見つけた。暖簾を掻き分け中に入ると、なにか貸し切りのパーティーをやっているようので、引き返そうとすると、すぐに誰かが熱燗の入ったグラスを僕に差し出してくれた。

「うえあ、あー・ゆー・ふろむ?」
「オーストラリア」と僕は答える。
「あー、オーストリア!」

宴会は深夜までつづき、僕のことをオーストリア人と思っている友達ができた。

本格的な冬が訪れると、雪かきをする日が増えてきた。だが雪が軽いので苦にはならない。富良野は北海道の中央にあるので、湿気が少ない。だから雪がシャンペーン・パウダー。世界でも最高の雪質なのだ。

あるスキーヤーが僕に昔、こう言った。「富良野にスキーをしに行くということは、雪の保険に入るようなもの。なぜなら、最低でも数日は素晴らしいパウダースノーの日があるから」と。

言葉で説明するのは難しいが、北海道中央部の雪は、深く、苦労なく動ける。腰まで雪にはまって、平らな所にいるときでさえ、雪が軽いので抵抗がなく、自由に体を動かせるのだ。

深い雪のなかで滑ると、雪が大きく舞い上がり、ジャケットの中に入ってくる。地元の人はその雪を“煙”と誇らしげに言う。スキーヤー、スノーボーダーが夢見る、このパウダースノーを滑るとき、“浮いている”という表現が一番しっくりとくる。

富良野の雪質が優れないときは、近くのゲレンデに簡単に行くことができる。車で一時間も走れば「カムイ・スキーリンクス」につき、そこではツリースキーが楽しめる。谷間にあるので、西風が運んでくる上質の雪がたくさんあるのだ。
もうひとつの選択は、北海道で最も高く、活火山である朝日岳。ケーブルカーで上がると、快晴の日には火山から煙が立ち上がるのを見ることができる。

春がくると、すこし時間ができる。すると、動物が冬眠から目覚めるように僕もスキー三昧の季節から目覚め、これまでの出来事を振り返る。新しい土地に移り住むのは、簡単ではない。だけど、富良野の人々の暖かさで、僕の東京脱出は本当にスムーズにいった。地元の人々のもてなしは、富良野を訪れる人々を、その雪質と同様に感動させてやまないだろう。

Furano Summer

富良野を一躍有名にしたのは、何といっても30年程前に放映された倉本総監督のドラマ「北の国から」だろう。東京を離れ、家族を連れ富良野で新たな生活を始めた男性の物語だ。ドラマで富良野の自然の素晴らしさを知った人々が、一目見ようと、気候のいい時期に訪れる。最近では富良野のラベンダー畑が注目を浴び、写真家が国内各地からレンズに収めようと集まる。大雪山国立公園の野草や山々は北海道で、もっとも美しいハイキングコースだ。