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特徴

2007
Issue 15
Pedaling Through the Past
By Takeharu Wakatsuki

自転車の素晴らしさは今さら説明するまでもないだろう。こんなにも楽しく、そして自由な旅の移動手段というのは他に見当たらない。けれど、旅にはこのパートナーが大きな荷物になってしまうから。。。という現状もなきにしもあらず。そんなあなたは、レンタサイクルを活用してみるといいだろう。ペダルを踏むたびに新しい発見に出会うことになるはずだ。

京都にやってきた。
ここは言わずとしれた日本でもっとも人気のある観光都市である。神社仏閣など数々の文化財が世界文化遺産に指定され、近年の国内での 「京都ブーム」も影響してか、観光客の姿は後を絶たない。 でも、ちょっと考えてみて欲しい。
それだけ一気に人が押し寄せたらどうなるかを。実際のところ京都は観光目的のクルマやバスに対応しきれていない。春の桜、秋の紅葉といった季節には、信じられないような長さの渋滞が発生し、クルマで京都に来たら計画を消化できないまま帰路につかなくてはならないだろう。道路事情を革新的に変えられない古都ならではの事情があり、市では電車等の利用を促しているが、それでもまだまだといったところのようだ。

自転車での旅行に理想的な街

そこで、自転車という道具が威力を発揮する。断言してもいい、観光シーズンの京都で最も使える移動手段は自転車だ。街のサイズが適度にコンパクトなこと、地形に起伏がないこと、道のつくりがシンプル(基本的にはタテとヨコ)であれば、日常で自転車を漕いでいても気持ちよいものだ。
実際、かなりの割合の京都市民が自転車ととともに生活している。 

わたしが勝手に鴨川バイパスと呼んでいる遊歩道があるだけも相当なメリットがある。これは市内中心を流れる鴨川に沿っている道で、自転車と歩行者だけが通ることができる。ひとたびこの道に入れば、四条だろうが三条だろうが(どちらも繁華街の道)関係なし。
どんな道との交差点でもノンストップでパスできる。 もし、マウンテンバイクに乗ってオフロードを攻めたければ、周囲に見えている山に行けばいい。身体がいくらあっても足りないほどの数のトレイルがあり、そのフィールドまで1時間とかからないだろう。

定番からマニアックな情報まで

京都を満喫するなら。。。
では、どのようにして自転車で旅をするかである。持っている自転車をパッキングして電車で輪行したり、街のレンタサイクルを利用してもいいだろう。市内には各地で自転車を貸してくれる店があるし、実際に京都駅付近でも輪行バッグを下げた旅人をよく見かける。 

しかし、「なんとなく京都を散策」というように、旅の計画が漠然としているのなら、わたしはこんなスタイルをすすめる。 京都市内でマーク&ローリーというアメリカ人の2人に出会った。彼らはアメリカ・コロラド州から来た旅行者で、東京から京都に着いたばかりであった。初めての日本旅行で、しかも滞在が一週間と短い。

しかし、それでもいろいろ見て歩きたいと考えていた。 2人が京都の情報を検索しているときに出会ったのが「自転車によるガイドツアー」だった。ホームページでの説明によると「祇園~平安神宮~京都御苑、半日ツアー」とある。

彼らはすでに自転車ガイドツアーの予約を済ませていて、これから出発するという。せっかくの機会、わたしも同行させてもらうことにした。 「なにも知らない、ぼくたちでも京都の名所、しかも奥深いところまで見られるかもしれない。ローカル的な情報も得られるのでは? と思ったんだ」。

日本文化に強い関心をもつ2人はツアーの案内を見つけたとき、すぐさまパソコン画面の申し込みボタンをクリックしたという。 京都駅前の集合場所「京都サイクリングツアープロジェクト」に行ってみると、すでに2人の自転車は用意されていた。

ガイドのケンゾーは一見頼りなさそうだが、慣れた英語できちんと説明してくれる。日本には「通訳ガイド検定」という資格があって、これにパスしないと外国人をガイドすることはできない。「道は左側通行が基本です。この合図が右折、これが左折というふうに先を走るぼくに従ってください」 多かれ少なかれ国によって交通ルールに違いはある。お客さんの安全を確保するのもガイドの仕事なのだ。


(マーク&ローリー・ヴァン・グラックさん
アメリカ・コロラド州ボルダーにて寿司と日本酒の店 (www.hapasushi.com) を経営しているだけあって、日本文化に強い関心を持つ夫婦。日本への旅行は今回が初めて。東京では都会的な観光しかできなかったので、文化財めぐりに期待して京都にやってきたという。)


驚きのルート設定、あえて小径を往く

ツアーはまるで近所を散歩するようなテンポでスタートした。
京都駅を出て、まず、交通量が多い七条通りを行くが、突然ケンゾーから左折のサイン。クルマだったらまず入ろうとは思わない狭い路地へ自転車を滑り込ませた。なるほど、あえて細い、あえて静かなルートを選んでいるようだ。

これは面白い。マークもローリーも過ぎゆく町並みをしきりに眺めているが、脇見運転に注意! これはこれで危険ではある。 五条大橋を超え祇園の街が近づくと、次第に京都らしさが増してきた。

「祇園を歩いていると、舞妓(ゲイシャ)を見ることも多いのでは?」
そんなふうに想像している人もいるかもしれない。だが、それは謝った見解だ。おっ、発見か! 
途中で見かけた舞妓に向けてしきりにデジカメのレンズを向けるローリー。
   
残念ですがそれは舞妓さんでなく舞妓さんの格好に変身したお姉さん(観光客)なんですよ、とケンゾーが笑いながら説明していた。

「なーんだ、残念(笑)」 けど、ローリーはそれさえも楽しんでいるようだ。本物に出会えたら確かに嬉しいだろうが、肩肘張らずに「これも京都らしさ」と思えば十分納得できる。しかも本物と偽物の見分け方なんてガイドブックのどこにも書いていないのだから。

コースはこの後、平安神宮、そして京都御苑へと向かっていった。多くの人が知る定番の名所でもあるが、これを自転車という線でつないでいくと、旅はもっと深くなると感じる。名所はきっと期待を裏切らない。けどそれに加えて、たとえば町屋の一角で創作にはげむ職人の姿、路地でみられる子供たちの遊ぶ姿など、意外な京都の一面も見られるかもしれない。 京都駅まで戻る鴨川バイパスは微妙に下り坂になっているため、ペダルが一層軽い。 

2人とも、もともと身体を動かすことが好きというだけあって、疲れた様子はまったくみられない。 「最高に楽しいツアーだったよ。半日という短い時間だったが、その限られた時間の中でも、とても効率よく観光することができたし。どうせなら明日もガイドをお願いしようかな?」 というのが彼らの感想だ。 

紅葉の時期の京都は観光シーズンのピークといわれるが、同時に自転車で走るのに最も気持ちいい時期。秋の京都、その醍醐味を自転車で触れてみてはいかがだろう。

京都サイクリングツアープロジェクト (www.kctp.net)


京都の街を軽快に走ることにこだわった自転車を厳選し、レンタル。今回のツアーのような各種ガイドも行う。豊富な機種を揃えているため、好みの応じて選択が可能。京都駅前以外にも市内の各地に店舗があるため、返却場所を変えられるのも嬉しい。

MTBによるオフロードツアーも開催

京都は周囲が山に囲まれている地形であるため、MTBのフィールドが無数にある。このツアーは、あくまでも初心者を対象に誰でも気軽にオフロード走行を楽しめる内容。登り坂もあるが、そこ乗り切った後は、思う存分林道走行を楽しむことができるだろう。希望によりサスペンション付きの本格的なMTBもレンタルすることができる(2,000円)。