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特徴

2007
Issue 18
Ultra Nippon - A Week in Japan With The Ultramarathon Man
By Pauline Kitamura

人並みはずれた忍耐力。何日も眠ることなく、止まらず走る。まるでスーパーマン。彼はウルトラマンなのだろうか? いや、彼はウルトラ・マラソンマンとして知られるディーン・カナーシスだ。

彼は数々の偉業を成し遂げた。世界中で人々を勇気づけ、“ウルトラマラソン”という言葉を一般に広めた。筆者は今回、5月に行われた「ザ・ノース・フェイス “エンデュランスランOSJハコネ50K 2007”」のゲストとして招かれたディーンと一週間過ごす機会を得た。 彼は、いくつもの100マイルの大会参加をはじめ、50日連続で、50州で、 50回のマラソンを走っている。摂氏50度のカリフォルニア州デスバレーで130マイル走ったあとに、零下40度の南極で走った。

自身の可能性に挑戦するとともに、自己啓発の講演やチャリティーランにも参加している。ディーンは何か人々のために行動をしたいとも願っているからだ。癌を患う少女の肝臓移植手術費用を集めるために、200マイルを少女の写真と一緒にノンストップで走ったこともある。


東京での栄養補給

彼の著作『ウルトラマラソンマン:オールナイト・ランナーの告白』では、「199マイル・ノンストップ・リレーレース」(他のチームは5マイルごとにランナーを交代したが、ディーンは一人で全距離を走った)参加中の真夜中、彼はおもむろに携帯電話をとりだすと、Lサイズピザ、チーズケーキ、コーヒーを注文し、マネージャにそれを途中の交差点まで届けさせ、走りながら全て平らげたという有名なエピソードがある。

このように、ディーンはレースに限ってジャンクフードを食べることをよしとする。走るために必要なカロリーをとるためには、質や量は気にしない。ただし、普段の食事は、とても健康的だ。口にするのは野菜、フルーツ、穀物、魚だけ。肉や乳製品、白砂糖、米。パン、パスタなどの加工食品も一切食べない。サンドイッチも、寿司もダメ。サラダはドレッシングなし。カレーライスはライスなし。だから日本での食事は大変だ。

「カレーライスを、御飯なしでお願いします」
 「ライスなし、ですか?」
 「ええ、ライスなしで。カレーだけください」
 「え? でも……(長い沈黙)。わかりました。他にはよろしいですか?」

ディーンは人間は加工食品を消化するようにできていないと考えている。そういったものを食べても害にはならないが、栄養効果もない。だから、あえて食べない。パスタやパンで炭水化物をとらないかわりに、大量のフルーツを食べる。果物屋に連れて行ってもらえないだろうかと、私に話す。

渋谷のデパ地下に行くやいなや、店員の甲高い声があちらこちらから聞こえてきた。フルーツ売り場をみつけたが、1万円のメロン、5千円のさくらんぼ、4万円のブドウにびっくりする。
 
「あの大きいリンゴをみて!」
ディーンは興奮する。
 「ニンジンもだ!」


鉛筆ほどの太さしかない米国のニンジンに比べると、日本のニンジンは巨大だ。ディーンは5千円で、数品ばかりの果物を買い、小さいバッグを手にして帰った。渋谷のデパートで果物を買うのは、いいアイディアではなかったかもしれない。.

気さくなウルトラマラソンマン

ディーン自身も認めるが、彼は決して足の早いランナーではない。しかし、タフであることは間違いない。

一週間彼と過ごして、彼が成功する理由がわかってきた。彼はとてもコミュニケーションがうまい、忍耐力もある。ユーモアも最高だ。ディーンは日本語が話せなくても、笑顔や気取りない人柄で、日本人とのコミュニケーションもこなした。参加したイベントやレセプションでは、日本語は分からなくとも一生懸命聞き理解しようと努力していた。

女性、たまに男性が彼の鍛えられた脹脛を触らせて欲しいなどといわれても、いやな顔せず笑って応じた。鎌倉の銭洗い弁天では100ドル紙幣を洗い、清め(宇賀福神社では聖水で洗うとお金が倍に増えると伝えられている)、100ドル紙幣を2つ取り出し、「ほら、本当にふえたでしょ?」と茶目っ気たっぷりだ。

彼を知る人が皆そうなように、私もディーンのファンになった。彼は滞在中、様々な人との出会いを楽しんでいた。
“ウルトラ・マラソンマン”などといった肩書きの人物は、意志が強く、生真面目な男だろうと思う。だが、ディーンは人好きで、人と触れ合うことでエネルギーを得ているようだ。

なによりも、“人間らしさ”が彼の魅力であり、人間離れした偉業と不屈精神が、多くの人々を感動させているのだろう。(撮影 福村順平)