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特徴

2008
Issue 20
Tokyo Bay Fishing Frenzy
By Abdel Ibrahim

巨大な貨物船が、東京を出発して、川崎や横浜に行き来する。そんな東京湾でも、驚くことに健全なマリン・エコシステムが機能し、スポーツフィッシングができるんだ。

悲しいことに、東京湾北側の海水は引き潮どき、大都会宿命の香りがする。しかし、高層マンション、工場、オフィスビルの立ち並ぶ用水路や川をボートがすり抜けると、すぐそこに外海があることに、初めて訪れる人は驚く。
荒川の河口を過ぎて30秒もしないうちに、ビルの群は遠く彼方へと消えていく。東京湾という、想像もしていなかった場所で釣りをするのだという実感が湧いてくる。
この日、僕たちは最大速度42ノットを誇る225馬力ヤマハエンジンを積んだ、32フィートのセンターコンンソールボートに乗り込んでいた。東京湾で最も人気の高いシーバスを求めて、4時間のフィッシング・トリップに出かけるところだった。
消波ブロック、橋、埠頭などの人工物、藻や貝の棲む砂床など、いろいろな場所で釣りをする。シーバスが、様々なところにいるからだ。

日本のシーバスは国内海域に生息する魚のなかで最も多産な種だ。日本語では「すずき」と呼ばれ、北米のストライプバス、アカメ、ヨーロッパのシーバス、とよく似ている。
日本のスズキの水揚げ量は世界一といってもいい。漁業関係者への捕獲規制などはまったくない。

東京湾でのシーバス・フィッシングは、人工ルアーを使用する。釣り人はみな熱心で、いろいろな種類の釣りを経験しているが、シーバス・フィッシングははず れることなく、一定のリズムで釣れるので、好む人が多い。シーバスは湾のどこかで、いつも餌を求めているのだ。経験者に教えてもらい、やり方と場所捜しの コツさえつかめば、だれでも釣れる魚なのだ。

船長の川和修三(※漢字要確認)は、臨海公園の南側の浅く、平らな場所を最初のキャスティングに選んだ。向こうで海鳥が飛び回り、時々海面へと潜り、小魚をついばんでいる。
頻繁に鳥が水しぶきを上げるが、シーバスが浮かび上がってきている音ではない。船長によると、魚群探知機には、ニシンがたくさん写るものの、潮流がないのでシーバスはいないという。

僕は、浅瀬に7センチの深く沈む小魚のルアーをたらし、竿をすばやく引いた。魚が、活発に食いつかないときにこれをやると、食いつきはじめることがある。

突然、不思議にジャンプする物体を目の前にすると食いつくのがシーバス特徴だ。シーバスはルアーに食いつく前に数メートル追い、一回興奮してしまうと活発に食いつき始めるという。

10回ほどキャストしてて、あまり注意せずに餌を引き上げようとしたその時、ボートのはじのほうで最初の一匹が掛かった。期待していな かったために、竿を上に引いてしまった。60cmのシーバスが海面にうきあがるのを見て、冷静さを欠いてしまった。そのエラーを帳消しにするように、竿の 先を水につけて、魚がジャンプをしてルアーが取らないようにした。
船長が、「アブデルさん、何をしてるの? 飛び上がらせちゃだめだよ!」と大声で言う。彼はこの魚が逃げて、他の魚を刺激してしまうのを恐れているのだ。僕のところに飛んできて、網で魚を捕らえようとする。
一匹か二匹が興奮しはじめると、捕食の習性から、群れ全体が餌をもとめ始めて大騒ぎになる。この状態を“入れ食”と呼ぶのだ。一投ごとに、魚が釣れる状態だ。

僕が魚をリリースする準備ができると、皆もスタンバイできていた。そこからは、もう、ルアーをキャストして、獲物を獲り、またキャストする、という作業の繰り返し。投げ続けないと、魚の食いつく勢いが沈静化してしまうのだ。
次はお台場の東側に向かった、もう何回も来ているが、いつも建築工事が続いていて毎回少しづつ景色が変わっている。半年前にはなかった大きなコンクリート製の橋ができていた。

アウトドア好きの一人として、仮の埠頭や船着場は、醜く、目に余る。だが、こういう建造物がある場所にシーバスが多くいるのから、とっても複雑な気分だ。 この日は、橋の近くにパトロール船が出ていて、ブイが備えられ、立ち入り禁止になっていた。そのため、さらに沖に行くことにした。
工事現場の北側で、深いところに生息する魚のところまで泳ぐ、重たいバイブレーション・ルアーをキャストした。魚群探知機には、たくさんのシーバスがみえるものの、魚は実際のところ時々しか食いついてくれなかった。
日が暮れ始めて、気温も下がってきた。潮の流れも、餌もないので、魚たちは反応してくれない。30分ほどキャストして、水の流れがある荒川と江戸川の河口に移動した。

この日、最後のシーバスとの格闘。安全で、餌もある杭に彼らは多くいる。いくつかの橋の下で、杭の間にキャストした。シーバスがいる場所は、とても狭いのでキャストは正確に行わなければならない。
日が暮れたあとは、橋の影で暗いところ、道路灯で照らされた水面付近で、ゆっくりと竿を振る。シーバスたちは皆、並んで陰にひそみ、餌がくるのをまっている。

僕が橋のあたりで釣りだしたのはつい最近のことだが、50cm以上のシーバスを2匹釣った。
「アブデルさん、うまくなったじゃないの?」
そう、川和船長がからかう。日本では、褒められたら謙遜しなくちゃいけないのに、「まかしてよ!」と答える。すると彼は、「さすが外人さんだ」と、笑みを浮かべる。僕らは6時半ごろに引き上げ、港へ戻った。
年末までに、87cmの記録をぬりかえたい。でも、そんなに大物じゃなくても、釣れれば満足だ。毎回、70cm以上のシーバスを数匹釣り上げているが、釣り人なら、だれしも90cm級の大物を夢見る。時間をかけて、釣りを楽しんでいれば,
いつか、僕の夢はかなうと思うのだ。

(Fishing Tips)
東京湾では数十人いるガイドとともに一年中シーバス釣りができる。川和船長の「海動(www.kaido1091.com)」は、江戸川区の中川から出発する遊漁船だ。道具がない人は、釣り竿のレンタルもある。初心者から経験者まで、的確なアドバイスをくれる。