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コラム

Life Hints

By Mitsuharu Kume

Textures of Life

2009
Issue 26

砂場。

それは、日本の公園には必ずといっていいほどあるもの。だから、海の近くで育たなくても、砂の城をつくったり、トンネルを掘った り、みんな近所の公園で、砂と遊んで育っている。

そんな身近な砂は、細かく見てみると、石の欠片や、貝の欠片、それに珊瑚の欠片などいろ んなものから出来ていることがわかる。どこでも大して変わらないように見える砂。だけれど、日本の犯罪者が穿いていたジーンズのポケットから、微量の砂が 発見され、それがアメリカのどこそこビーチの砂であることが調べから分かった。そのことから、犯罪者の行動が読めたという話もあるそうだ。オチオチ砂浜に ジーンズを穿いていけない、ということか。

さて、最近の僕は、産卵に上がって来るウミガメ探しを始めてから、その砂に残る“足跡”が面白 くて仕方ない。“砂”という形状記憶装置は、歩き回る動物の足型とその行動を、常に残し続けている。それがまた、可愛らしいのだ。コンクリートが乾かない うちに、猫が歩いてできた足跡を見て、可愛いなと思うのと同じ。足跡の美学とでもいうのだろうか。雨や波、それに風が吹けば、すぐにのっぺりとした平らな 表面に戻ってしまう。その儚さがまた、たまらない。風が長い時間強く吹けば、柔らかいラインで、美しい、波のうねりのような風の足跡“砂紋”を残してい く。海に入る前に、太陽に暖められた誰の足跡もない美しい砂紋に寝転び、眩しい太陽に、目を瞑り、体の力を抜く。とっても解放された至福の時間だ。

そ こで、チューブの神様といわれるサーファー、ジェリー・ロペス氏のトークショーを聞いたときの事を思い出した。

「朝起きて、どうしても仕 事に行きたくない時、どうしたらいいでしょうか?」

来場者からの自由質問である。しばらくの沈黙の後、「家のドアを開ける前に、目を閉じ て、楽しかったときの風景、いい波に乗ったときのことを思い出し、しばらく想像する……(沈黙)。そして、ドアを開ける」

なるほど、気持 ちの持っていきかたを、自分でコントロールするということか。

そこで、僕は目を閉じて、先ほどの温かい砂紋に寝転ぶ姿を想像してみる。

「上 げ潮じゃ、上げ潮じゃ(物事がいい方向に向かう、日本の古い言葉)」

パソコンの前でも、確かに心が落ち着いてくる。

「あぁ、 このまま目を閉じたままでいようかなぁ」

なんて思ってきた。では、おやすみなさい……。

いやいや、いけない、いけない、 この原稿の締め切りが近いのだった。

自分の気持ちをコントロールするのは、簡単ではない