コラム

High Tide

By Mitsuharu Kume

Promises

2009
Issue 29

「おめでとう」そんな言葉を多く聞ける一日があった。別に自分が言われている訳ではないのに、なんだか気分のいい一日だった。「人は褒められて伸びる」と 言われるけれど、「褒められているのを聞いていても伸びる」のかもしれない、なんて思ったりもした。  

ところで、この「おめでとう」という言葉が飛び交っていた日、それは友人の結婚式だった。ただし、普通と違うのは、日本の南の島に移り 住んだサーファー同士の、島での結婚式というところ。いつからか、仲間で準備をして、海の見える芝生で友人を神父に見立て、皆の前で結婚を約束する“人前 式”というスタイルが出来上がっている。  

その日は、島での暮らしが慣れてくると、視覚的に特別な一日となる。  

男どもは見慣れない小奇麗な襟付きを着て、女はきっと世界共通のお洒落というものを楽しんでいる。普段は海で会うか作業着姿で会う友達 が、なんだかちょっとだけ洒落ているのである。そんな仲間が、太陽の照らす鮮やかな緑色の芝生に2列に並び、その間を白いウエディングドレスがゆっくり進 んでいく。そこに「おめでとう」の言葉が降り注ぎ、なお、その風景が鮮明に映るのである。  

やがて式は、誓約書にサインし、誓いの言葉に「はい」と答え、ベールを上げて口付けと進んでいく。  

ここには人間の約束事の取り決め方が、全て入っていると気付いた。  

書くこと、口にすること、行動すること。これは日常にも常に現れ、どれかひとつでもバランスが崩れると、嘘つきとなり、信用を失うそれ はそれは怖いものとなる。  

それはともあれ、今日は「上げ潮じゃ、上げ潮じゃ」(物事がいい方向に進む、という意味の日本の古い言葉)。結婚という約束に、ふたり はまず結果をだしたのだから「おめでとう」である。でも、これからの結婚生活の結果は、死ぬまでわからない。人間はゴールを目指して、それが例えやっとの 思いでたどり着いたとしても、また、次のゴールを目指す繰り返しだと思う。そして、途中で投げ出したり諦めたりすると、負け癖がつき負のサイクルにはまっ てしまう恐ろしいものでもあるのです。  

式の最後には、みんな一列に並び順番でふたりに花一輪を手渡し、祝福の言葉をかけていく。  

ふたりだけでなく、この長い列に並ぶひとりひとりに、自分で決めた約束、そしてゴールがあるのか。そう思うと人間って悩ましくも楽しい 生き物なのだ、と思った。そして、僕もそのひとりだということを自覚した。