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コラム

Spirit of Silence

By Troll

音がないからこそ、感じる旅

2005
Issue 1

音がないからこそ、感じる旅

ウチはみなと同じように旅好きで・る。ただ、ひとつ異なるのは生まれつき、DEAF(ろう者)なので聴覚からの情報がない。その分、視覚や嗅覚といった他 の感覚がそれをカバーしているのだが、特に「見る」という感覚は大きく、これまで音がない世界に生きてきたので、それが当たり前だと思っていた。

けれど、旅をしているうちに人々との出会いや体験をとおして、そうした自分のとらえ方は、他とは違う、何か特別な感じ方をするのだなって思うようになっ た。

そとえばそれは、自転車で三重県の志摩を走っていたときのこと……。

気持ちのよい砂浜を見つけたので、そこでテントをはることにした。近くに銭湯が・ったので、そこで汗を流し、さっぱりして、テントに戻っていった。そのと き、さっきまで高かった太陽が、これから海に沈もうとしていた。「息を飲む風景って、こういうことをいうんだな」などと、思いにふけていた。

しかし、・とで気付いたことだが、背後には大きなエンジン音を鳴らしながら何十台というトラックがその間走っていたのだ。

でもウチには、そんな雑音は関係がなかった。音が聞こえないからこそ、その風景の・る世界に没頭できてしまうという特・が・るのだ。そうして場所選びの条 件が1つ減るので、好きな場所が増えていくのだった。おかげで、色々な場所でビールを呑んでばかりなので・る。

トロール: 本名・永易トロール。静岡県清水市出身。生まれながら聴覚障害をもちながら極上のパウダー、誰もいない無人島、どこまでも続く 地平線を追い求め、テレマークスキー、カヤック、MTBに跨がり旅を続けるアクティブウーマンだ。