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コラム

Japan Angler

By Abdel Ibrahim

さらば、マグロ?

2015
Issue 56 (Summer 2015)

もし明日、おいしい本マグロを食べたいと思ったときに、行きつけの鮨屋にも、近所の魚屋やスーパーにも本マグロが売ってなかったらどう感じるのだろうか?なぜ?それはつまり乱獲により、太平洋クロマグロ(本マグロ)の資源量が底をついてしまったからだ。信じられないことかもしれないが、マグロ消費量が世界でも飛びぬけて多い日本で、そんな日が間近に迫っている。鮨文化が各国に浸透し、世界中で鮨ネタとしてのマグロの需要が高まるなか、各国のマグロ漁場において規制のなさが乱獲につながっているという話がニュースの端々に流れているのをすこしは耳にしたことがある読者も多いと思う。マグロは広大な海を回遊する魚で、世界各国に漁場があることが、ことさら問題をややこしくしている。マグロの資源管理には、各国が足踏みを揃えた努力が必要なのだ。

 各国が協力しておこなうべきマグロの資源維持管理だが、恩恵をいちばん受けるのは日本だといってまちがいなく、日本にはマグロの資源維持管理を率先しておこなう責務がある。これは、クロマグロの世界総水揚げ量のおよそ8割が日本で消費されているからだけではなく、太平洋クロマグロの貴重な唯一の産卵場が日本の排他的経済水域内の日本海側にあるからだ。

 この貴重なマグロの産卵場では、過去10年間に渡り産卵親魚を一網打尽(だじん)にしてしまう巻き網漁の操業が認められている。これにより、過去10年間で太平洋クロマグロの資源量は一気に激減。大きな魚が獲れなくなった巻き網船団はターゲットを産卵親魚だけでなく、未成熟の幼魚(ヨコワ・メジ)に移してまで乱獲をつづけている。最新鋭のソナーを装備しているこれらの巻き網船団は、漁獲する魚のサイズ、群れの大きさなど、手に取るようにわかったうえでの意図的な未成魚の漁獲である。

 太平洋クロマグロを絶滅から守るためにいちばん効果的な手段と思われるのは、漁獲規制、とくにこれらの産卵親魚の群れを一網打尽にしてしまう巻き網を禁止にし、取り締まりをおこなうことだ。しかし、ことはお金になるクロマグロである。経済的側面に政治が絡み、有効な資源維持管理への道のりは完全に閉ざされていなかったとしても、きわめて困難であるといわざるを得ない。

 それゆえに、太平洋クロマグロの将来を握るカギは日本の消費者が握っているともいえる。販売店に流通ルートの透明性を求めることもできるし、持続可能な漁法以外で獲られたマグロは買わないという選択もできる。

 私たちの未来にもマグロがいて欲しいからこそ、太平洋クロマグの資源維持管理について、いまこそ皆がそこで起きている事態を知り、考え、自分でできることを話し合う時がきたのだ。皆の力を合わせれば、事態を変えることができる。

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