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コラム

Japan Angler

By Abdel Ibrahim

寒さも吹っ飛ぶ大漁

2010
Issue 32

普段なら僕はこういう事はやらない。天気予報によると、一日中雨が降り、北風の突風が吹き、気温も10度以上にならないという日。こんなに天気が荒れる時は大変だから、ボートをキャンセルしたくなったりしてよく眠れないものだ。でも今回は違う。

なぜなら僕は間もなく、東京湾の北の浅瀬で、毎年秋深まるごろになると産卵のため南へ移動する直前、たっぷり身を太らせた活きのいいシーバスをせっせと釣り上げているはずだから。

釣りをしない友達は、魚が強く糸を引く時だけに出るエンドルフィンのためなら、僕はどんなことも厭わないことをだんだんわかってきたようだ。そんな釣り熱心な僕にも、ひとつだけ例外があるのだ。

それは、寒さだ。特に雨をともない寒冷な天気が多い年末から春初旬まで、僕は「釣り」冬眠に入ってしまう。それは多分子供の頃に過ごしたニューオリンズで、Tシャツとゴムサンダルだけしか着用せずに、家の近くの池でバス釣りをした思い出があるからかもしれない。しかも12月の午後というとても寒い季節に。

東京の寒さは、マレーシア人の友達チャック・ティオングにとって、僕以上に厳しいものだろう。でも彼も僕と同じで、いい食いつきに恵まれると辛いことをすべて忘れてしまう。手の冷たささえもだ。

魚が大漁に釣れたので、4時間半のチャーターはあっという間に過ぎた。途切れ無く魚を釣り上げるのは大変という人もいるが、それを克服する方法がちゃんとあるのだ。キャプテンは魚のいる場所をさがすのが役目、あとはどのルアーを使うか、どこにキャストするか、どの深さをねらうのか、どのスピードで巻き上げるのかなどを決めるのはアングラーの仕事だ。

潮の満ち干きや天候は、水の透明度、水の色、水温を変え、そしてそれは魚がどこに集まるかだけでなく、食いつきの仕方にまで影響を与えるのだ。

魚と闘い制圧するのも楽しいが、これらの状況を頭に入れ、いかに魚をおびき寄せるかを考え自分で判断することが面白いのだ。これが多くのアングラーにとって「おいしい」ところなのである。みんなが忘れてしまった、人間本来の狩本能を思い出したかのように「これだ!」と感じる瞬間なのだ。

チャックと僕はめんどくさくて何匹釣れたか数えなかったけど、ガイドさんによると100匹以上あるといっていた。大物はつれなかったけど、たくさん釣れたので大満足だった。後はあたたかいラーメンをすすりながら、次は東京湾のどこを攻めるのか二人で考えるだけだ。

雨が降ろうと、晴れようと、僕らはいつでも行くよ。