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コラム

Japan Angler

By Abdel Ibrahim

玄界灘トップウォーターゲーム

2009
Issue 31

釣りをしているときが一番幸せ。だから出世なんかに興味ない」

 多くの人がうらやむ成功について僕はこう思う。ときどき同年代の外国人駐在員の人に会うことがある。彼らの多くは港区広尾あたりにアメリカンサイズの広いマンションで暮らし、子供たちをインターナショナル・スクールに通わせ、レンジローバーのような高級車にのり、外資系会社に勤めるエリートと人目でわかるような生活をしている。彼らにとってそれは名誉なことだろうけど、僕にとってはどうでもいいことだ。

 僕が心からうらやましいと思う人は、福岡に住んでいるカナダ人の友達だ。なぜ? 日本の釣り人なら誰でも、九州の北に位置する玄界灘を夢見る。玄界灘の魚はサイズが大きく、また一年中を通してよく釣れるのだ。

僕はクラブのみんなと年に数回、対馬と沖ノ島の間にある海峡へ行く。そして東京近郊なら毎週末でかけて、一年を必要とする量のはまちやマグロををたった2〜3日で釣り上げるのだ。これは本当の話で大げさにいってるわけじゃない。

最近僕らはちょっと値がはり、なかなか手に入らないハンドメードのトップウォータープラグを試みることにした。この方法だと、水面でエキサイティングなアクションが期待できるのだ。

故郷で沖釣りをすこしやったことがあるけど、小さいマグロやサワラでさえ餌釣りでなくてもルアーにすぐ食いついて楽なものだった。しかし日本に来て、ここでは沖ではルアーが主流と教えられ、トライしてみたがいっこうに釣れず、すぐに自信を失ってしまった。やがて僕はフィッシングをフィットネス・ゲームとして学びなおす必要性があることに気がついた。

何回かやっているうちに、スピードと風向きに対して潮の流れる方向を瞬時に読み取ることができるようになり、プラグを投げたいところにキャストすることができるようになった。そしてただ巻きが効かないことも学んだ。

もっている情報と、狙っている魚が何を食べているかなどを考慮して、シルエットの似たルアーを選ぶ。そしてトゥイッチやジャークさせて、ルアーをまるで逃げまわっていたり、もがいていている餌にみせかけるのだ。いいプラグは動きが本物の餌さ用の魚のように不規則な動きをし、ゲームフィッシュの捕食スィッチをいとも簡単にオンにしてくれる。でもいくらプラグがよくても、釣る人のリーリングテクニックがなければだめなんだけどね。

むかし佐賀県出身の船長が、4人のお客さんが浅瀬でルアー釣りをしていて、突然十数匹のヒラマサが群がったという話を思い出した。最初魚はすべての人のルアーにかかったものの、すぐに逃げてしまい、ベストのルアーを使い、あわてることなく行動し続けた人のルアーだけに集まり釣り上げられたというものだ。

普通、食いついたときルアーの近くにできる水脈で、魚が下を泳いでいるのを知る。流れが速ければ速いほど、しっかりとギアを握り締め、ファイトに耐えないといけない。勢いのいい獲物だと、プラグを口にくわえたまま、逃げてしまうこともある。

僕にとってのプラギングとは、チャレンジングで、サスペンスもあり、そして目の前で繰り広げられる光景もエキサイティングとバランスがとれていてパーフェクトなゲームだ。

僕のフィッシング版「生きている間にやりたいこと」のリストに、対馬海峡で100キロを越える黒マグロを釣り上げるというのがある。こんな大物は釣るのも大変、そしてボートに引き上げるのも一苦労というものだろう。でも玄界灘では年に数回そんな大物がつれるというから、ずっと挑戦しつづけるつもりだ。