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コラム

Japan Angler

By Abdel Ibrahim

「外道」といわれても

2010
34 号

釣りをしたくてたまらない外国人が日本に来ると、見たこともない魚がたくさんいるし、釣り方もまったく違うことに戸惑う。僕も日本のスポーツ・フィッシングに慣れるのに何年もかかった。そして中でも一番苦労したのが、日本人のアングラーが釣りの事を話す特別な言葉を理解することだ。

日本中、その地方独特の釣り用語が存在し、「セイゴ」や「つを抜けた(たくさん釣りあげること)」など、日本人でも釣りをしない人ならわからない。僕のお気に入りの表現は「邪道」。異端とか、間違った道と言う意味で、不正を行うアングラーの事を言っている。そして釣りたい魚じゃないものまで吊り上げることを意味するのだ。


ある魚のみを追うアングラーが、思いがけなく雑魚を釣り上げるのが外道と呼ばれる。しかし時々、その雑魚を追うほうが面白くなってしまうアングラーがいる。バスアングラーが養殖ナマズや雷魚釣りに転向したりするのが、その例だ。

僕も奇妙な魚をいろいろ釣り上げたけど、僕にとってはバラムツが日本の究極の外道じゃないかと思う。この古代魚は、全長2メートル以上になることもあるという。数も多く、一年中いつでもかかることがある。

バラムツ(英語:オイル・フィッシュ)は、食するために釣りをするアングラーがその体内の油性分の多さからつけた名前で、同じ理由で外道とされている。どのぐらいオイリーかって? 刺身のような小さな身を一切れ食した人が、味は最高だが、強力な下剤作用に苦しむことになるという。

昨秋、僕は“エクストリーム・フィッシング”という番組のため、イギリス人俳優ロブソン・グリーンに同行して、チャーター・ボートで静岡の沼津港に行った。僕が相模湾で釣り上げた、ギザギザ鱗でギョロっとした不気味な目をした20キロの獲物を、プロデューサーが一目見てバラムツを捕る企画をやろうと決めたのだ。僕は日本なんかに来なくても、バラムツならイギリス海峡でたんまり釣れると教えてあげたかったけど、彼の未知の獲物を追うという気持ちに水を差したくなかった。

大物を釣り上げてリリースするならバラムツがぴったり。一般的にバラムツは100メートル以下の所でないと釣れない。しかし他の深海魚と違い、釣り上げても塞栓を起こし死んでしまうことはない。すべての状況がいい時なら、糸をおろす度に釣れ上がるので、腕が疲れるまで釣れる。重いジグを操るのは面倒くさいという人は、餌の切り身をフックにつけて、かかるまで待つという邪道の道へそれてもいい。

バラムツは文句の多いアングラー達には悪評だが、いつも釣っている人達にとっては出費の割に見返りの大きい最高の魚と言うだろう。邪道であろうと、外道であろうと、僕にとっては釣るのが楽しい魚だ。