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コラム

High Tide

By Mitsuharu Kume

「大きな海の小さな亀」

2010
Issue 37


“海は広いな、大きいな、月は昇るし、日は沈む”

日本人なら誰もが知っている、“海”という童謡の歌い出し。短い言葉の表現で、海の大きさが伝わってきます。

さて、そんな大きな海に、小さな生まれたばかりの小亀を探しにヨットを走らせました。

ウミガメの赤ちゃんは、大きさ10センチほど。それを、この大海原から見つけ出そうというのですから、簡単ではありません。

僕の予想はこうです。夜中に砂浜から生まれるアカウミガメは、海を泳ぎ出すと、遥かメキシコ沖を目指す長旅に出ます。きっと、流れ藻やゴミの陰に隠れ、付いている貝などをエサにして、小さいうちは過ごしているのでは?

そこで、手当たり次第に流れ藻やゴミを見つけたら海に飛び込み探す、という作戦に出ました。流れ藻やゴミというのは、たくさんあるようで、探すとなかなかないもの。見つけるだけでも一苦労です。そこで、どんな小さなゴミでも、見つけたら全て飛び込んで潜ってみました。20回、30回、いくら飛び込んでも、ウミガメの赤ちゃんは見当たりませんでした。

けれども新しい発見をしました。大きな流れ藻やゴミの陰には、立体の魚の世界があったのです。それは、流れ藻に貝がつき、それを食べに稚魚が群がり、それを狙ってか、もう少し大きな魚がいて、またその下には、さらに大きな魚がグルグル泳ぎまわっているのです。

そして、魚を獲りにまたは撮りにいくと、たいてい魚は逃げていきますが、僕を見て「新しい大きな陰が来た」とばかりに寄ってくるのです。ちょっと不気味な感じさえするほどですが、そこには確かにひとつの世界がありました。

やがて、長い潮目を見つけました。それは小さなゴミが浮いている道のようになっています。20分ほどその道を泳ぎ続けていると、なんと、前方から黒い小さなものが体の割には大きな手をバタバタと動かし、不器用に泳いでいます。見つけました。アカウミガメの赤ちゃんです。これはもう大興奮です。僕は、何度もシャッターを押しました。

大海原を泳いでいく、小さな亀。早く大きくならないと、今にも鳥や魚に食べられてしまいそうな感じです。ガンバレ、ガンバレ。こんなに素直に応援したくなる気持ちは、なかなかありません。

“海にお船を浮かばせて、行ってみたいなよその国”

冒頭の“海”という歌の歌詞の続きです。

「上げ潮じゃ、上げ潮じゃ」いい方向に向かうという意味の日本の古い言葉。

この小さなウミガメを追いかけて、いつかメキシコまで行こう。

久米満晴