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コラム

Adventures of the Hokkaido Bush Pig

By The Hokkaido Bush Pig

ライト、カメラ、オンセン!

2010
35 号
しばらく前のことだが、小樽港に停泊している米国海軍のクルーから電話を受けた。彼らは数ヶ月も空母に滞在していて、外の空気を吸いたくて仕方がない様子だった。最初に連絡をもらった時、彼らままだ洋上にいたので、どんなことに興味があるのか聞いてみた。すると、彼らは北海道で二日間のキャンプ・トリップの手配を希望してきた。もしできれば天然温泉にもつかりたいという。あまり考えることもなく、ぴったりの場所が頭に浮かんだ。そうして届いた2回目のメールでは、クーラーにビールをいっぱいつめて空母まで迎えに来てほしいとあった。
 
 数日後、僕はドックで彼らと会った。まずは地元のビールを差し出して彼らの来訪を歓迎し、その足で大雪山国立公園を目指した。僕らはあるキャンプサイトまでハイクし、ようやく落ち着いて乾杯をした。日本酒を飲み交わしたのだ。
 
 翌朝は早くからの行動だった。彼らは眠たそうに、しかし北海道で一番高い尾根を目指すハードなハイクへと出発した。数人がトレイルの途中で気分を悪くしたようだったが、3時間後には頂上にたどりついた。頂上では冷たいビールを楽しんでいる高齢の日本人ハイカーがいた。嬉しいことに彼らはビールを僕らにすすめてくれた。あまりに飲み過ぎで、温泉までたどりつけるか不安がよぎったものの、どうにか二時間をかけて目的地の温泉へと到着することができた。
 
 日本で一番高い場所にある天然温泉は、貸し切ったかのように僕らしかいなかった。自然に切り出された岩のなかに温泉はある。クルーのみんなは裸になることに抵抗感を覚えたようで、15分ほど足だけを湯につけていた。そのうちカメラを手にしたプロカメラマンの様な人が、美人アシスタントを二人つれてあらわれた。
 
 男性は有名なドキュメンタリー監督で、女性の一人はテレビ・タレントだった。彼らはドキュメンタリーをこの国立公園で撮影していたのだ。
 
 監督は温泉に入っている人を撮りたかったので、僕らとの出会いを喜んでいた。彼は洋服を脱ぎ、温泉に入るように頼んできた。裸になるのが無理ならば、下着はつけたままでもいいと続けた。自分の身体が全国ネットワークで流れるのはどうかという思いが僕の頭をよぎったが、それはみんなも同様だった。しかし女性二人もタオルをまきながらも一緒に温泉へ入ると聞いたとたんに、彼らの態度は一変した。長い時間を海上で生活していたことがよくわかる。なぜなら、僕は男性がこんなにてきぱき動く姿をいままで見たことがないからだ。
 こうして監督はほしい映像を手に入れ、クルーの連中は仲間への土産話ができたのである。