>  屋外日本雑誌  >  35 号 : 7月/8月 2010  > コラム  >  High Tide  >  「母なる砂浜」

コラム

High Tide

By Mitsuharu Kume

「母なる砂浜」

2010
35 号

  「母なる砂浜」

 
 母の日に、何を買おうか? と町を歩いていると、「マザー・テレサ、生誕100年記念映画祭」そんなポスターを見かけました。僕は熱心なキリスト教ではないけれど、彼女の功績や言葉に宗教を越えた尊敬の念を感じます。そして、それを機会に「母」という言葉について、考えてみました。
 

例えば、陸上で暮らす生物は、土から生まれるものを食べ、土の上で育ち、土に帰っていきます。人間もそう。そんな大地のことを、「母なる大地」と呼びます。まったくもって、その通りです。

また、「母なる海」ともいいます。全ての生命の源は海から始まったことから、そう言われているのでしょう。僕はサーフィンで波を待っている時のあの心地よい揺れや気分の爽快さは、母親の胎内で揚水に揺られている時に似ているからではないか、と思えて仕方がなく、海も間違いなく母です。

さて、砂浜はどうでしょう? 僕は、海と陸の間にそれらを繋ぐ砂浜があり、そこはどちらでもない、特別な場所だと考えています。そこには土ほど栄養価が高くはないけれど好んで育つ植物があり、カニは穴を掘って住処とし、ウミガメは春になると卵を産み落とします。砂浜のことを、「母なる砂浜」と呼んでも、それは間違いないようです。

さて、そんな砂浜に産み落とされるウミガメの卵について、面白い話しがあります。鳥が体温で卵を温めるように、ウミガメの卵は母なる砂が温めているのです。50センチメートルほど掘った穴に産み落とされる卵は、産む場所、産む時期によって異なるけれど、29度前後の砂の温度で温められていて、その平均砂温度が29度よりも高いとメスが、低いとオスが産まれる、というのです。

 
これは何を意味するか? それは、温暖化が進めば、メスばかり産まれる、ということ。ウミガメにとって、オスとメスのバランスが崩れるというのはよくないので、暑い時期をずらしたり、今までより寒いところに産むようになるのでは、といわれています。こんなところに、温暖化を図るものさしがあるのです。
 
考えてみると地球上は母ばかり、うちの家庭内と同じで、お父さんというのは、肩身が狭いようです。でも、そんなお父さんにも、お母さんを守る、という意識があります。とりわけ僕は砂浜が好きなので(もちろん妻も)、日本全国の砂浜がなくなっていく現状をなんとかしたい、そう思って写真を使った活動をしています。
最後に、マザー・テレサの上げ潮な(いい方向に進む、という意味の日本の古い言葉)言葉をひとつ。
 
 「私たちの働きは、大海の一滴の水に過ぎないかもしれません。でも、大きな海も一滴の水なしには大海にならないと思うのです。」―――マザー・テレサ