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コラム

Cycling Japan

By Takashi Niwa

A Journey to Experience the Local Life

2009
Issue 28

サイクリングで楽しむ日本の魅力は「変化」であると思う。日本国内を走っている外国人も、そう口をそろえる。続いて安全さ、清潔さ、人々の親切さなど・・・。ボクは海外、とりわけヒマラヤやアンデスなど山がちなところでもサイクリングを楽しんでいるが、日本に戻ってくると痛感するのが町~畑~海~山とめくるめく変化である。見えていないカーブのその先に、どんな風景が広がっているのかと思うと、ペダルを踏む足に力が入る。

日本でサイクリングを楽しむ上で気をつけなければならないことがある。それはどんな道を選ぶかだ。大きな国道沿いは全国展開するレストランや電気店などが並び、旅情に欠ける。道はクルマ中心に造られ、交通量も多く、危険箇所も多い。そんな道では人と人が立ち話をする、という姿をあまり見かけない。しかしわずかにそれるだけで、印象はずいぶん違う。

大切なことは、どのエリアを走るかではなく、どの点を結ぶかでもない。どの線を通るかだと思う。有名なお寺や博物館には、その魅力があると思う。それはそれで素晴らしいことだけれど、サイクリングでは普通の生活を垣間見る、そんな旅をボクはしたい。

ボクが『丹羽隆志の日本ベストサイクリングコース10 vol.1』を始め、多くのサイクリングのガイドブックを出版してきたのは、そこに理由がある。

「自転車は道の上を行くもの」
「道は生活があってできるもの」

クルマという閉鎖空間が行き来するだけの道ではなく、生身の人が歩き、互いに挨拶し、おしゃべりするところ。そんな道でペダルを踏みながら、素顔の日本を感じるのが楽しい。

【タイトル】
輪行/自転車を運ぶ


日本では自転車をそのまま列車などに持ち込むことはできない。輪行といって、自転車の車輪を外して、専用バックに入れることで持ち込むことができる。これを知っていれば公共交通機関が発達した日本では、国内各所にアクセスできる。

走行途中で、天候悪化や疲労などでサイクリングを中断、短縮することも簡単だ。また日本では宅配サービスが充実している。スタート地点からゴール地点に、サイクリングに不要なものを送るなど、利用価値は高い。

北海道大陸で日本最北端を目指す

【リード】
いつかは自転車でそこに行きたい。宗谷岬は日本最北端というだけで、そう思う人は多いのではないだろうか。そう、宗谷岬はサイクリストという巡礼者の聖地なのだ。

ゴミゴミした狭い国。日本人自身も日本のことをそう思う節もある。しかし北海道の広さは別格だ。北海道の中でも、中央部に位置し、道内第2の都市・旭川から、北は、大きな都市もない。大きな幹線道路である国道40号を避ければ、トラックも少なく、まさにサイクリング天国といってよい。途中には約100km も、コンビニすらないという区間も含んでいる。日本にそんなところがあることを想像できるだろうか? ここを「何もない」というか「大空と大地がいっぱい」というかは、ペダルを踏む人の感性だ。

10月ともなれば雪が降り出すこともある。夏の北海道は、牧場、畑、そして森と、つかの間の夏を謳歌するが如く、緑の中をどこまでも行く。途中にはキタキツネやエゾシカの家族に出会うこともあるだろう。

北海道の大地が狭まってくると、サロベツ原野に出る。さらに大地と空の広さを実感するだろう。海の向こうには利尻富士が小さく見えるが、ペダルを踏むごとに大きくなるのが痛快だ。稚内の小さな市街地を通り過ぎると、左手は宗谷湾となる。晴れていれば海の向こうに、樺太の海岸線にあるガスタンクなども見える。
北海道の大きな風景の中で、あえぐ小さな自分。しかし宗谷岬に辿りついたとき、ちょっとだけ自分が大きくなれたような気がする。宗谷岬とはそんなところだ。

【情報】
距離 330.6km(旭川-宗谷岬)
適季 6~9月